臨床哲学・勉強する理由

勉強することの意義(2018年10月18日)

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さて、今日は「私たちは何のために勉強するのか」というテーマで10分間お話をしたいと思います。

今朝のことなんですが、キノシタ先生が私のところに来られて、
「ナカタニくん、面白そうな話をするんだね」
とおっしゃって、
ANCORA IMPAROってキーワードで検索したら面白いよ」
とおっしゃって立ち去りました。
検索してみると、脳外科医の学術団体である、日本脳神経外科コングレス、というところのシンボルマークがでてきました。

みなさんこれ、見たことありますか?
この真ん中、「ANCORA IMPARO」って書いてあります。
これはラテン語だそうです。
誰の言葉かというと、

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偉大なる芸術家、ミケランジェロ言葉だそうです。
意味は「私はまだ学んでいる」。

ミケランジェロは88歳で亡くなったとされていますが、その死の直前描いた、砂時計をもった老人(おそらくは自画像)のデッサンの片隅に「私はまだ学んでいる」という文字が書き添えられていたそうです。

格好よくないですか?


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さて、今日のテーマに戻ります。
私たちは何のために勉強するのか?

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私は最近、あっちこっちで、たくさんのPTさんの前で、「脳卒中片麻痺患者に対する歩行トレーニング」というようなタイトルでお話する機会を頂きます。

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例えばこれはつい先日、富山でお話させていただいた際の内容なんですが、私は最初に、30分ほどかけて、脳卒中の理学療法とは直接関係のない話をします。
なぜなら、その部分を理解しなければ、実際にどのような治療をするべきか、という部分の理解が進まないからです。
テクニカルスキルというのは本当に氷山のてっぺんの部分なのであって、それを支えている部分をまずは理解してもらわなければ、講習会の意味がない、と思っています。
そしてその30分の話の冒頭で、

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みなさん、人間が勉強する目的って何だと思いますか
というお話をします。
これって、答えはないですよね。
それぞれの価値観というのは当然違ってきます。
こないだ、ある若手スタッフと話をしていたら、
「僕が得できるなら勉強します」という意見を聞かせてもらいました。
それはそれで、べつにいいんです。
(ただ、それだといずれ行き詰ってしまうんじゃないかと思いますがそれは今日は置いておきます)

各々、自分なりに、勉強する目的を持ってもらうことが大事だと思うのですが、この難問の答えを、ワタクシ、43歳にしてようやく発見しました。
それがこちらです。

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勉強すれば「思いこみ」から自由になれる」
これは生物学者の福岡伸一さんという人物が書いた文章です。
子どもはなぜ勉強しなくちゃいけないの?って本の一部です。

勉強すれば思いこみから自由になれる
私のなかではこの言葉が非常にしっくりきました
セラピストが、論文を読んだり、学会に参加したり、あるいはデータをとって発表したり、いろいろすると思うのですが、それらはすべて、思いこみから自由になるためである。
例えばゲイトジャッジを使って、患者さんの歩行動作を測定するのも、最終的には自分の理学療法が上手くいっている、という思いこみから自由になるためなんだ、ということがわかりました。

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当然今日の私のお話も、あるいは私の日々の臨床判断も、私の思い込みから構成されているわけです。
でも、勉強すればするほど、自分の考えは思い込みから構成されていることに気づけます。
そしてそこに気づくことで、少しでも間違ったアプローチを減らすことができるのではないかと私は考えています。
だからこそ、セラピストは勉強し続ける必要があると思います
私が勉強するのは、そういった理由からです。

というところで、今日のお話の一番大切な部分は終わります。

あと、少しだけおまけの話があります。

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勉強すれば思い込みから自由になれる。
はずなのに、みなさんの周りに居ませんか?
めっちゃ勉強熱心なのに、あるいは勉強熱心であるが故に、すごい視野の狭い人。
私はよく学会発表するのですが、発表後の質疑応答とかでよく出会います。
私よりはるかに知識量もあって、頭の回転も速くて、あるいは大学の先生であったりするのに、視野の狭いひと。
この、勉強すればするほど視野が狭くなる人は、心理的バイアスがかかっている、という状態であると言われています。
この心理的バイアスというのは、人間なら誰でも持っている「思考が偏る現象」のことです。
人間は、事実と違うことでさえ、思い込みをします。

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この心理的バイアスには、たくさんの種類があります。
なかでも、勉強すればするほど視野が狭いひとが陥っているバイアスのことを、確証バイアスといいます。

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確証バイアスという言葉の意味を調べると、大辞泉には、
自分の願望や信念を裏付ける情報を重視・選択し、これに反証する情報を軽視・排除する心的傾向。と書いてあります
簡単に言い換えると、先入観、という事になると思います。
人は無意識のうちに、自分に都合の良い情報ばかり集めるクセがあるわけです。
これは皆さん多かれ少なかれあります。

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例えば血液型性格診断。
血液型によって人の性格が違うというのは、完全なオカルトなわけです。
そんなことはみんなわかっているけれど、例えばすごいマイペースな人が居て、その人の血液型がB型だと聞くと、ああ、ほら、やっぱりみたいに自分の中で強化していきます
似たような話で例えば
「大阪のおばはんはヒョウ柄の服を好んで着る」というバイアスにかかっていると、まれに大阪でヒョウ柄のおばはんをみると、あ、ほら、やっぱり大阪の人は、みたいになるわけです
これは他者に対してだけ抱くものではありません。
たとえばこの確証バイアスが、自分はやっぱりだめだ、という方向に向くと、自己肯定感を下げる方向に考え始めるわけです
「どうせ自分なんてだめなんだ」
これは気を付けなければなりません。

我々が理学療法について勉強するときも、常に、この確証バイアス、先入観を強化しないように気を付けないといかんわけです
ではどうすれば、先入観を持たないような方向で勉強できるのか?

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確証バイアスを回避するにはクリティカルシンキングが重要と言われています。
クリティカルシンキングとは、要は批判的に考えるという姿勢のことです。
で、私は、セラピストって、この批判的に考える、ということがすごい苦手な人が多いんじゃないかな、と思うんです。
例えば何かのセミナーにいって、どこぞのエライ先生がこうだ、みたいに言うと、それを無批判に受け入れてしまう人が結構います。
ここが、理学療法の科学性を阻害しているんじゃないか、と思うわけです

次回の勉強会では、考えるとはどういうことか、ということを掘り下げて、みんなで勉強してみたいと思います。
今日のお話は以上です。

 

プロフィール

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ニックネーム
中谷知生

Tomoki Nakatani
所在地
兵庫県宝塚市にある、宝塚リハビリテーション病院に勤めています。
職業
理学療法士です。

Certificated physical therapist in Neurology

自己紹介
I am interested in physiotherapy for improvement of gait ability of a patient with stroke hemiplegia.
And I'm a member of Japan Physical Therapy Association stroke guideline crew.

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