17.歩行コンテストという試み

17.歩行コンテストという試みについて

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近年、脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニングでは、課題志向型トレーニング、つまり歩行能力を向上させるために歩行量を増やすことが効率的であるという考えが主流派になりつつあり、より早期から下肢装具を用いた歩行トレーニングを実施する傾向にあります。
そのため、臨床場面ではセラピストの介助下で歩行トレーニングを実施する機会が増えています。
当院は回復期リハビリテーション病院ですが、こうした背景もあり、症例によってはトレーニングのほとんどが歩行トレーニング、ということも珍しくありません。
当然ですが、

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ただ歩行量を増やせばよいというものではありません。
本当に治療効果の期待できる歩行動作ができているか、客観的な評価が必要です。
そのようなことはあたりまえじゃないか。
このような学会にお集まりの皆様はきっとそうお考えだとおもいますが、現実の臨床場面を見てみると、客観的評価を行わずに、漫然と歩行トレーニングが行われているという現実を高い頻度で目にすることがあります。

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例えばこの3つの動画は、同じ日に介助者や介助方法を変えて、腓腹筋の筋活動を測定している様子です。
私は普段、担当患者を持たず、1日中、脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニングの補助や指導、あるいは機器を用いた評価を行っています。
そのような中で、私が強く感じるようになったことがあります。
それは、介助歩行が上手なセラピストと、下手なセラピストでは、歩行トレーニングを通した治療効果に大きな差が生じる、という、当たり前といえばあたりまえの現実です。

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そこで当院では、2年ほど前から、歩行コンテストという試みを実施しています。
これは同意の得られた症例において複数のセラピストが順番に介助歩行を行い、その介助歩行を客観的に評価して、どれくらい治療効果の高そうな介助歩行ができているか、その優劣を比較するものです。

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なかなかイメージしにくいと思いますが、このように、患者さんにご協力いただきまして、介助者を変更した場合の歩行因子を比較する、というのが歩行コンテストです。
これまで何度か、このコンテストを開催してきて、私は、これは非常に有意義な試みであると思うにいたりました。

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そこで、これまで何度かの歩行コンテストの内容と、そこから得られたデータを紹介して、歩行コンテストにどのような意味があるのかについて考えてみたいと思います。

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コンテスト①です。
対象者はÀ病棟所属の理学療法士7名です。
ご協力いただいたのは80歳代の女性患者で、右片麻痺を呈していました。
コンテストでの歩行条件は、短下肢装具と歩行補助具T‐Supportを装着し、セラピストが後方から介助をする、後方介助歩行トレーニングとしました。
このコンテストでは、比較的多くのデータをとりましたが、最も注目していたことは、介助者によって麻痺側下肢の筋活動がどのような影響を受けるだろうか、ということでした。

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結果です。
これらの写真は、コンテスト中の麻痺側立脚終期のアライメントです。
セラピストによって介助する手の位置などが微妙に異なることがわかります。
検証の結果、セラピスト間で立脚後期の内側腓腹筋活動量に比較的大きなばらつきがあることがわかりました。

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2つ目のコンテストです。
対象者はÀ病棟所属の理学療法士12名です。
ご協力いただいた患者さんは70歳代の左片麻痺患者さんでした。
このコンテストでは、長下肢装具の膝関節の固定を介助し、セラピストが後方から介助する歩行動作を評価しました。
本症例では、セラピストの微妙な匙加減によって麻痺側立脚期の膝折れが生じたり生じなかったりする印象を受けていました。
そこでこのコンテストにおいて注目していたことは、介助者によって麻痺側下肢立脚期のアライメントがどのような影響を受けるのだろうか、ということです。

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検証の結果、膝関節の屈曲角度は、初期接地時は大きなばらつきがありませんでしたが、立脚中期、立脚終期ではセラピスト間で差が広がりました。
つまり、後方からの介助歩行時に、膝伸展位を保持させることが可能なセラピストと、不可能なセラピストが居る、ということがわかりました。

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3つ目のコンテストです。
対象者はB病棟所属の理学療法士10名でした。
ご協力いただいたのは80歳代の左片麻痺患者さんでした。
このコンテストでは、長下肢装具で膝関節を固定した状態で、セラピスト2名が患者さんの横から介助歩行をする、という条件でのコンテストでした。
非麻痺側からの介助者を固定して、麻痺側下肢を操作するセラピストを入れ替えながら、歩行因子を比較しました。
ここで注目していたのは、2名で介助した場合にも麻痺側下肢の筋活動は大きな差があるのか、ということでした。

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検証の結果、介助者を増やした場合には、腓腹筋活動に大きな差が見られないということがわかりました。

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ではこのようなコンテストを行うことに対して、セラピストはどのような感情を抱くのでしょうか?
A病棟のセラピストを対象に、無記名によるアンケート調査を実施しました。
介助歩行が得意か、という質問に対しては、まぁまあ得意、が1名、普通が6名、あまり得意でないが4名、大変得意でない、が3名でした。
歩行コンテストが楽しみか、という問いに対しては、大変楽しみだ、が7名、まぁまぁ楽しみだ、が5名、普通、が2名でした。この結果を私なりに解釈すると、介助歩行に対する苦手意識はあるが、セラピストがコンテストにより自身の技量を相対的に比較することを好意的に受け止めている、と言えると思います。

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プロフィール

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ニックネーム
中谷知生

Tomoki Nakatani
所在地
兵庫県宝塚市にある、宝塚リハビリテーション病院に勤めています。
職業
理学療法士です。

Certificated physical therapist in Neurology

自己紹介
I am interested in physiotherapy for improvement of gait ability of a patient with stroke hemiplegia.
And I'm a member of Japan Physical Therapy Association stroke guideline crew.

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