16.T-Supportの弾性バンドを3本使ったら何が起こるか?に関する研究

弾性バンドの使い方はセラピストのセンス次第。3本使ってもいいんです、ってお話。

これは2016年の第56回近畿理学療法学術大会でなつみが発表した内容です。

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近年、脳卒中患者の歩行能力を向上させる目的で、股関節機能を補助する歩行補助具が普及しつつあります。
これらは脳卒中患者の特徴である逸脱した歩行動作を修正し、適切な運動学習を図る上で重要な役割を果たすと考えられます。
しかしながら、これらの歩行補助具は矢状面機能の補助を目的としたものが多く、前額面機能を補助する歩行補助具はあまり見受けられません。





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一方で、脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニング場面では、麻痺側立脚期に骨盤の側方動揺が出現する症例が多数みられます。
しかし、我々の臨床における印象では、骨盤の側方動揺に対して、セラピストによる徒手的なアライメント修正は患者が介助に依存的になる場面を多く見受けます。
そのため、徒手的な介助に依存してしまい、歩行トレーニングによる効果が得られにくい場面があり、何らかの歩行補助具を用いて骨盤側方動揺の修正を図る必要があると感じました。



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そこで今回、麻痺側立脚期に骨盤側方動揺を認める回復期脳卒中片麻痺患者に対し、当院が使用している歩行補助具T-Supportに股関節外側部にバンドを追加することで麻痺側立脚期の骨盤側方動揺が軽減するのではないかと考えました。
本研究では、T-Supportの側方バンドの使用による骨盤側方動揺およびその際の歩行因子の即時的な変化を検証することとしました。



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当院が従来使用していたT-Supportとは体幹前面と下腿前面を弾性バンドで繋いだものです。
弾性バンドを使用することで下肢スイングを補助し、立脚中期の膝関節の安定、立脚後期の股関節伸展角度の拡大が認められています



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従来のT-Supportに体幹ベストの側方部分を起始部とし、短下肢装具の下腿カフ外側部を停止部として弾性バンドを追加したものをT-Support側方バンドとしました。



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対象は80歳代女性1名で、左内包領域の脳梗塞により右片麻痺を呈していました。今回の検証時には発症から約4カ月が経過していました。
右下肢のBrunnstrom Recovery StageはⅢで、歩行はゲイトソリューション付き短下肢装具を用い、T-Supportを装着してフリーハンド歩行は軽介助から中等度の介助が必要な状態でした。
歩容は右ローディングレスポンスからミッドスタンスにかけて骨盤の右側方動揺が出現することで右股関節は相対的に内転位での支持となるため歩隔が狭くなり、麻痺側下肢のスイング時に反対側下肢に接触する傾向がありました。



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方法は、T-Supportの弾性バンドを股関節前面に2本装着したフリーハンド歩行、以下前面バンド歩行と、側方バンドを追加したフリーハンド歩行、以下側方追加歩行の2条件における歩行因子を比較しました。
測定項目は歩行介助量、10m歩行所要時間、歩数、パシフィックサプライ社製ゲイトジャッジシステムを用いてローディングレスポンスでの底屈角度、ファーストピーク・セカンドピークの平均値を算出しました。

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結果です。
前面バンド歩行の10m歩行所要時間は16.1秒で歩数は28歩、側方追加歩行の10m歩行所要時間は16.0秒、歩数は27歩でした。10m歩行所要時間、歩数に大きな差は認められませんでした。


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前面バンド歩行のローディングレスポンスでの足関節底屈角度は2.46度、ファーストピーク値は4.5Nm、セカンドピーク値は1.0Nmでした。
側方追加歩行のローディングレスポンスでの足関節底屈角度は3.23度、ファーストピーク値は5.1Nm、セカンドピーク値は1.8Nmでした。

介助量は前面バンド歩行は中等度介助を要していましたが、側方追加歩行では軽介助で可能となり介助量の軽減を認めました。



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前面バンド歩行と側方追加歩行を比較すると側方バンドを追加することで骨盤の右側方動揺は軽減し、下肢の内転接地も軽減していることがわかります。

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考察です。
本症例は麻痺側外転筋力の低下により立脚期の骨盤の安定性を保持することが困難となっていました。
従来のトレーニングではセラピストが側方から体幹・骨盤を支持し、アライメントの崩れを修正していましたが、介助に依存的な面があり、いかにして能動的な歩行動作を行うかが重要であると考えました。
具体的な方法として、T-Supportの弾性バンドに着目しました。健常歩行ではイニシャルコンタクトからローディングレスポンスにかけて支持脚に急激に体重が移動し、発生した股関節内転モーメントに対して大腿筋膜張筋、中殿筋・小殿筋などの外転筋が遠心性の収縮を行うとされています。
そこで弾性バンドを股関節外側に配置し、外転筋群の遠心性収縮を弾性バンドの伸長で補助することが生体力学的にもより自然な形での動作の誘導になると考えました。


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今回の結果から、側方バンド歩行時にはファーストピーク値、セカンドピーク値ともに増大しており、側方バンドを装着することでヒールロッカーおよびフォアフットロッカーの機能をより賦活することが可能であることが示唆されました。
これは側方バンドを使用することで立脚期の安定性が保証され、自由落下による装着肢のより強い踏み込みが可能となり、前方推進力が向上した結果であると考えます。


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まとめです。
徒手的な介助で修正することが常習化されていた歩行時の骨盤側方動揺に対し弾性バンドを使用することで介助に依存せずより高い治療効果が期待できたと考えます。

今後は持ち越し効果や経時的な変化について検証する必要があると考えます。
以上で発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。

2017近畿

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はじめに、今回の報告の目的です。

脳卒中ガイドラインにおいて歩行練習の量を多くすることは歩行能力改善のために強く勧められており、
運動学習の観点からも課題を反復することが重要と考えられます。
しかし、臨床ではさまざまな機能障害が影響して歩行の頻度を増やすことに難渋することを多く経験します。
今回、脳卒中発症後に運動麻痺は軽度でしたが、重度の感覚障害から運動失調様の歩容を呈し、歩行に重度の介助を要する症例を担当しました。
歩容や歩行のパラメーター、介助量、自立度を基に運動の難易度を調整した結果、高頻度での歩行練習を行うことができ、歩行能力の向上を認めたため経過に考察を加え報告します。


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症例は70代の男性で右前側頭葉の梗塞から左片麻痺を呈していました。
下肢BRSはⅤで下肢MMTは5レベル、下肢の表在・深部感覚共に重度鈍麻していました。
歩容に影響する痙縮は認めませんでしたが、
筋出力が過大になりやすく、筋出力のタイミングも遅延しやすかったことから
歩行に際しては麻痺側立脚相において、バランスの保持が困難な骨盤帯の動揺や膝折れを認め、
麻痺側遊脚相においては努力的な下肢の振り出しから足尖のクリアランスの低下を認めました。


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歩行の評価には歩容に加え、歩行速度とストライド長、自立度を指標に
経過に応じてT-Supportや膝伸展固定用のknee splint(KS)、Gait Solution Design(GSD)を用いました。

T-Supportとは下肢に弾性バンドを装着することで、主に股関節屈曲・膝関節伸展モーメントを補助することができる歩行補助具です。


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経過です。
48病日において、骨盤帯の麻痺側への動揺や膝折れが顕著であることから後方から抱え上げ、全歩行周期において免荷するよう重度の介助を要し、
後方の介助者にもたれかかる歩容を呈していました。

そのため歩行練習時はKnee Splintを用いて単脚支持期を保障し、
骨盤帯の麻痺側の動揺に対しては介助者が側方から腰を当てて制御し、また後方へもたれないよう側方から重心移動の介助を行い中等度の介助を行いました。
歩行が安定する条件を第一の指標とし、歩行速度やストライド長に明らかな変化はみられませんでしたが
練習では50m程度の歩行路を疲労感に合わせて反復することができました。


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82病日における歩行能力は、
T字杖とGSDを用いて腋窩からの軽介助の下で歩行が可能となっていますが、度々バランスの保持が困難な程度の膝折れを認め、
また体幹がやや前傾、骨盤帯が後退し、膝折れを代償するような歩容を呈していました。
骨盤帯の麻痺側への動揺は、腋窩を軽介助することでバランスを保持することが可能な程度には改善していました。

この時の歩行練習の条件として、Knee Splintに加えてT-Supportの体幹のベストに付く弾性バンドを麻痺側骨盤帯の側方に装用し、骨盤帯の麻痺側への動揺を制御し歩行練習を反復しました。
同様に、安定した歩行を条件の指標としたため、歩行速度やストライド長に大きな変化を認めませんでしたが、体幹の前傾や骨盤帯が後退がみられ難くなり、
監視レベルで、80m程度の歩行の反復することができていました。


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95病日における歩行能力は、
T字杖とGSDを用いることで概ね監視の下で歩行できるようになっていました。
しかし軽度の膝折れや骨盤帯の麻痺側への動揺を呈しており、82病日と同様に膝折れを代償するような歩行パターンを呈していました。

この時の歩行練習における条件としてはT-Supportの弾性バンドを股関節・膝関節前面を通るよう下腿前面に装用しました。
Knee Splintではなくバンドの張力で膝折れを制御できるようになり、代償的な歩行パターンも矯正することができるようになりました。



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考察です。
本症例は経過に応じて歩行条件を適宜比較し、より安定して自立する歩行を条件に設定しました。

図は運動の強度と頻度、精度がそれぞれトレードオフの関係にあることを示すものです。
症例に対しては、膝折れや躓き、骨盤の動揺がみられていたことから精度と頻度を重要視し、
それぞれ代償的ではなく介助量が増大しない歩容となるよう歩行補助具や介助、歩行速度を調整して精度を維持し、
介助量の変化の経過を追いながら歩行練習の頻度を増やしました。


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48病日より用いていたKnee Splintの効果は
膝関節の自由度を制限し、コントロールする関節を減らすことで運動が単純化できた結果であると考えました。
それに伴い、遊脚相で問題となっていた躓きを伴う努力的な振り出しが制御でき、
立脚相においても股関節での運動のコントロールが容易になったものと考えられます。


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82病日より用いたT-Supportとは、
本来は股関節前面から下腿前面まで取り付けられた弾性バンドがその張力により主に股関節屈曲・膝関節伸展モーメントを補助することができる歩行補助具です。
今回は骨盤帯の側方動揺に対して応用的に用いたことで、立脚相における股関節外転モーメントを補助し、骨盤帯の麻痺側への動揺が制御できたものと思われます。


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95病日から用いたT-Supportに関して
これは短下肢装具に用いる際は立脚相における膝関節伸展モーメントを補助することが可能です。
Knee Splintと比較して固定性は劣りますが、経過に応じ継続してT-Supportを用いて膝関節の伸展モーメントを補助し、
荷重応答期から股関節伸展モーメントがタイミングよく働くよう学習され、荷重応答期の膝伸展モーメントに作用したものと考えらえます。

また、膝関節を固定する必要性がなくなり、
より正常に近い実用的な歩行パターンに転移させることができたのではないかと考えられます。


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まとめです。
今回、運動麻痺は軽度だが運動失調様の症状を呈し、歩行に重度介助を要する脳卒中片麻痺患者を担当しました。
歩行の自立を目標課題に運動難易度を設定し、
歩行能力の経過に応じて介助の方法や歩行補助具を選定することで、運動の正確性を維持しながら歩行の頻度を増やすことができることがわかりました。

発表は以上です。
ご清聴ありがとうございました。






 

プロフィール

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ニックネーム
中谷知生

Tomoki Nakatani
所在地
兵庫県宝塚市にある、宝塚リハビリテーション病院に勤めています。
職業
理学療法士です。

Certificated physical therapist in Neurology

自己紹介
I am interested in physiotherapy for improvement of gait ability of a patient with stroke hemiplegia.
And I'm a member of Japan Physical Therapy Association stroke guideline crew.

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