13.T-Supportを使って3人4脚したらどんなことが起きるか、って研究

13. T-Supportを使って3人4脚したらどんなことが起こるか、って研究

T-Supportって、基本的には脳卒中片麻痺患者さんの歩行能力を向上させるための道具です。
じゃぁどの時期に使ったら一番メリットがあるか、ってことを考えたときに、これまで、長下肢で膝関節を固定してて、かつある程度の介助量が必要な状況ではあんまりメリットが無いのではないか、って考えてたんですよ。

でも、2016年11月くらいに、まったく新しい使い方を思いついたのです。
それが3人4脚。

患者さんを真ん中して、左右からセラピストが介助する、という方法です。
この時にT-Supportを併用すると、めっちゃええんです。
それについての検証をここにまとめてみます。

13-1.3人4脚をやったら、立脚後期が変化して、下腿三頭筋の活動に影響を及ぼすのです。

まずは2017年、岡山で開催された第54回日本リハビリテーション医学会学術集会での発表。
ポスター発表だったので、ちょっと見づらいかもしれませんが、下に読み原稿も付けてます。
どうぞ。


 
  1. img_20180115-111621.jpg

・本研究の背景です。

・先行研究において、麻痺側の足関節底屈筋力を強めることは、片麻痺者の歩行速度を向上させることが明らかとなっています。

・また、片麻痺者ではストライドを延長させることにより、足関節底屈筋力をより強く引き出せるなど、歩き方によって底屈筋力が変化することも明らかになっています。

・当院でも脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニングにおいて筋電図を用いた評価を行いますが、同じ道具を使っていても、介助者の違い、あるいは介助方法の違いにより筋活動に大きな影響を及ぼすことを日常的に経験します。

・こうしたことを背景として、当院では、脳卒中片麻痺者の歩行トレーニングをどのような方法で進めるかを選択する上で、歩行条件を変えた場合の下腿三頭筋の筋活動を一つの判断基準としています。

・本研究では、短下肢装具を用い、介助下で歩行トレーニングを行っている症例において、介助者が後ろから抱えるか、あるいは横から支えるか、この介助方法の違いが麻痺側下腿三頭筋の筋活動に及ぼす影響について検証しました。 
 

・対象は右視床出血により左片麻痺を呈した70歳代の男性で、麻痺側下肢BRS短下肢装具を用いた介助歩行トレーニングを実施していました。

・この症例において、以下2条件での下腿三頭筋の筋活動量を比較しました。

・条件①は、1名のセラピストが後方から支える介助歩行、以下これを後方介助とします。

・条件②は、2名のセラピストが左右両側から支える介助歩行、以下これを側方介助とします。

・計測したのは、歩行時のターミナルスタンスでの麻痺側腓腹筋外側頭の筋活動量としました。
 

結果です。

・本症例では、側方介助を実施していた10週間の間、筋活動量を測定し比較しました。

・筋活動量の算出は、10m歩行の全歩行周期に記録された立脚後期の筋活動量を対象とし、側方介助時に記録された最大活動量を用いて正規化したパーセンテージを算出し、その平均を比較しています。

・その結果、10回の評価すべてで後方介助よりも側方介助時に高い筋活動が記録されました。

・この画像は3週目の評価時のものです。

・緑のグラフが下腿三頭筋の筋活動です。

・こちらは静止画ですが、本日私はVTRを持参しておりますので、興味のある方は発表終了後お声をおかけください。

 

・考察です。

・なぜ後方よりも側方介助時に下腿三頭筋の筋活動量が増大したのかを考えてみます。

・ターミナルスタンスで下腿三頭筋の筋活動を賦活するには床反力作用点を前足部に近づけ、足関節により強い底屈モーメントを発揮させる必要があります。

1名のセラピストによる介助では、後方から体幹を固定するためターミナルスタンスで前方への重心移動が不十分となりやすく、下腿三頭筋の筋活動を抑制していましたが、2名のセラピストによる介助では、側方から体幹を支持するためターミナルスタンスで前方への重心移動を促しやすく、このことが下腿三頭筋の筋活動を賦活したと考えられます。

 

・本研究の限界として、今回は1症例のみ、かつ長下肢装具からのカットダウン後の症例におけるデータであることが挙げられます。

・これまでの私の印象では、特に介助量の大きい状態の症例では、最初は後方介助のメリットがより大きく、徐々に側方介助のメリットが大きくなるような印象を受けています。

・今後は、どのタイミングで後方介助から側方介助へと切り替えることがより治療効果を高めることに繋がるかをより詳細に検証する予定です。
 

兵庫県学会 2017 カジカわ


img_20180518-085502.jpg

はじめに、近年、脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニングにおいてセラピストが後方から介助するアプローチ(以下後方介助)が普及しつつあります。
後方介助時に立脚終期(以下TSt)にかけて前足部への荷重を促すことで下腿三頭筋の筋活動が賦活される傾向があります。
しかし後方介助ではセラピストと患者の体格差などの要因が影響し、十分に前足部への荷重を促せないケースがあります。
今回、回復期脳卒中片麻痺患者に対し、セラピスト1名が後方介助を行った場合と、セラピスト2名が左右両側から介助する歩行トレーニング(以下側方介助)を行った場合で、下腿の筋活動および時間的因子にどのような影響を及ぼすかを検証しました。

対象と方法です。
初発脳卒中片麻痺患者1名を対象としました。
検証時の歩行動作は短下肢装具とT-Supportを使用して介助下にて行っていました。
本症例において、約1週間ごとに計10回Gait Judge Systemを用い、側方介助・後方介助時の麻痺側腓腹筋外側頭の表面筋電波形(LG)ならびに筋活動時間を評価しました。
歩行周期は歩行中の動画と下腿に取り付けた3軸加速度センサーから同定しました。
表面筋電波形の計測は麻痺側TStにおけるLGのデータを10m歩行路における安定した7歩行周期分の波形を採用し、解析にはMATLABを使用しました。
得られたデータは20-400HzのBandpass filterで処理した後、RMS波形に変換し最大振幅で正規化し、加算平均を算出しました。
側方介助・後方介助における計測10回の平均値を算出ならびに比較しました。

結果です。
青色の線は側方介助、黄色の線は後方介助を示しています。まずは左のLGの経時変化のグラフです。縦軸は%EMG、横軸は時間経過となっています。グラフより常に側方介助が後方介助を上回っていることが分かります。計10回の各条件の平均値は後方介助時17.8%EMG、側方介助時46.5%EMGでした。後方介助と側方介助ではLGの活動は約2.6倍の差が認められました。
次に右の1歩行周期におけるLGの振幅数のグラフです。縦軸は振幅数、横軸は歩行周期となっています。グラフ内の縦線は麻痺側TStの時間をあらわしており、青色の実線は側方介助、黄色の点線は後方介助を示しています。後方介助時の麻痺側TSt時間は歩行周期の15.4%であったのに対し、側方介助時は18.6%であり、側方介助時に約3.2%の麻痺側TStの時間延長が認められました。

考察です。
介助歩行トレーニングにおいて特にTStで腓腹筋の活動を促すには、前足部への荷重が重要となります。
後方介助では、セラピストの固定が過剰になった場合に前足部への荷重が不十分となりやすいです。
側方介助時にLGの活動が増大した要因は、側方介助により前足部への荷重が促された結果であると考えます。

以上で発表は終了です。ご清聴ありがとうございました。
 

兵庫県学会 2017 小松

img_20180518-085745.jpg

はじめに
近年、脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニングにおいて長下肢装具の治療効果が明らかとなりつつあります。
長下肢装具を用いた介助歩行トレーニングではストライド長と下腿三頭筋の筋活動に相関があることが明らかになっています。
ストライド長を伸ばすためには麻痺側立脚後期に前足部への荷重を促し前型歩行を誘導することが重要だと考えられますが、これまで介助歩行の違いによる下肢筋活動と足圧の関係はあきらかにされていません。
今回、回復期脳卒中片麻痺患者の介助歩行トレーニングにおいて、介助方法の違いが麻痺側下肢の筋活動と足圧に与える影響を検証したので報告させていただきます。

対象と方法
右視床出血により左片麻痺を呈した70歳代の女性1名を対象としました。左下肢のBrunnstrom Recovery StageⅡであり、また重度の高次脳機能障害を認めていました。
理学療法では長下肢装具を作成し、後方介助トレーニングを開始したが、協力動作が得られにくく歩行姿勢の崩れが大きいため、効率的な歩行トレーニングが難しい状態でした。
そのため歩行補助具T-Supportを併用し理学療法士2名が左右から介助する歩行トレーニング(以下側方介助)を実施していました。
本症例の後方介助と側方介助時の治療効果の違いを検証するため、歩行時の麻痺側下肢筋活動と立脚期の踵部への足圧発生時間比率を比較しました。
筋電図評価にはPacific Supply社製Gait Judge Systemを使用し立脚中期~終期における麻痺側内側腓腹筋の平均振幅を算出しました。
足圧発生時間比率の評価にはリーフ株式会社製足圧モニタインソールPiTを使用し、立脚期において踵部に足圧が記録された時間比率を算出しました。

結果
 左側が後方介助、右側が側方介助の結果になります。
 上の図はGJの画面であり、黄色の点線で囲っている部分が立脚中期~終期の腓腹筋の筋活動を表しています。平均振幅は後方介助時で78.7μv、側方介助時150.3μvと側方介助時により強い筋活動が得られています。
 下の図はPiTの画面であり、オレンジの線が踵部に足圧がかかっていることを表しています。後方介助時は立脚期の87.5%踵部に足圧がかかっていますが、側方介助時には17.8%に減少しています。また紫の線は母指球に足圧がかかっていることを表しており、側方介助時には立脚終期のタイミングで出現していることがわかります。

考察
踵部の圧発生時間の変化は、後方介助に比べ側方介助において、よりスムーズな床反力作用点の前方への移動が促されたことを表しています。その結果、立脚終期の前足部荷重が促され、より強い腓腹筋活動が賦活されたと考えられます。
 重度片麻痺患者の後方介助歩行においては体幹伸展保持の介助量が大きいことや、非麻痺側下肢の反応の乏しさ、また歩行時の転倒リスクが影響し、ストライドを伸ばした前型歩行を促しにくいことが多くあります。
 本症例では、T-Supportを併用しセラピスト2名で体幹の伸展保持を確保することで、重心移動の操作を行いやすくなり、スムーズに前足部への荷重を促せ、腓腹筋の筋活動を賦活できたと考えます。
 今回の検証を通して、側方介助歩行トレーニングは効率的な歩行トレーニングを可能とする1つの手段だと考えました。
 


img_20180126-173122.jpg
脳卒中片麻痺患者の装具療法における側方2人介助の可能性について発表させていただきます。よろしくお願いします。

img_20180126-173132.jpg
演題発表に関連し、開示すべきCOIはありません。

img_20180126-173139.jpg
はじめに、今回の 研究目的は、装具療法における介助方法の特性についての検証です。装具療法は、セラピストの技術レベルや介助方法の違いによって患者の歩容に大きな影響を及ぼします。そこで後方介助歩行と、側方2人介助歩行という介助方法の違いが歩容に与える影響について比較/検証を行いました。
歩行能力の向上には、前型歩行を促し立脚後期で股関節伸展・前足部へ荷重を促すことが重要であるといわれているため、前方への重心移動・前足部荷重に焦点を当て結果についての考察を行います。

img_20180126-173145.jpg
今回行った側方2人介助は、2人の介助者が両側から腋窩介助と手引き介助を行い、3人4脚のようにリズムよく歩く介助方法です。

img_20180126-173153.jpg
対象は80歳代の男性で左片麻痺下肢BRSⅤと比較的麻痺の程度は軽く、歩行はGSDとT-Supportを装着し軽介助レベルです。
方法は、後方介助と、側方2人介助の2条件とし、どちらとも歩行時の介助量は最小限の転倒予防とウエイトシフトの誘導程度にとどめました。
測定項目は、10m歩行における麻痺側足関節可動範囲と、足関節底屈モーメントであるFP・SP値、麻痺側時間を非麻痺側時間で除した立脚時間比、TSt~PSw区間での前脛骨筋・外側腓腹筋の表面筋電図波形における同時収縮指数としました。


img_20180126-173200.jpg
結果です。足関節可動範囲は側方2人介助で可動範囲が大きく最大値はほぼ同一の値でしたが、最小値である底屈可動域に差が出る結果となりました。足関節底屈モーメントはFP・SP共に側方2人介助で値が大きく、同時収縮指数は側方2人介助で数値の減少がみられTSt~PSwで前脛骨筋の活動が抑制されていました。また、立脚時間比は後方介助・側方2人介助共に高い対称性を保っていました。

img_20180126-173207.jpg
考察です。今回は、重心のスムーズな前方移動・TStでの前足部荷重に着目しました。
TStは足が中側指節間関節を支点として動き、身体重心は前足部の支持面から外れ前方に移動します。この時、足関節底屈筋群の活動が最大となります。
そしてPSwの終り頃から次に控えた背屈のために前脛骨筋の活動が始まります。

img_20180126-173215.jpg
後方介助の結果より、立脚時間比は高い対称性を示し左右方向の重心移動はコントロールしやすいことが分かります。一方で足関節底屈可動範囲の狭小化や足関節底屈モーメントが低値であり、前脛骨筋と腓腹筋の同時収縮指数が高値を示していました。
本来TStでは下腿三頭筋の遠心性収縮が足関節の過度の背屈と下腿の前方への崩れを防ぐことによって踵離地が起こり前方への最大の動きが可能となります。しかし、前脛骨筋の活動がTStから早期に見られることでこれらのスムーズな重心の前方移動が阻害されたもと推察しました。

img_20180126-173221.jpg
以上より後方介助の特性として、左右方向の重心移動が行いやすく後方への転倒リスクを軽減させることができる反面、前方への重心移動は促しにくいことが示唆されました。

img_20180126-173230.jpg
次に側方2人介助では後方介助以上に左右の高い対称性を保っていました。また、同時収縮指数が減少しており、前脛骨筋の活動が抑制されていることが分かりました。筋活動の変化により重心の前方移動を阻害せず前足部への荷重を促すことができた結果、蹴りだしが可能となり足関節底屈方向の可動域拡大や底屈モーメント値の増大につながったと考えました。

img_20180126-173237.jpg
今回の結果より側方2人介助の特性として、立脚時間比は後方介助を上回る高い対称性を示し、さらに左右方向への重心移動だけでなく、前方への重心移動を促しやすいことが分かりました。

img_20180126-173244.jpg
まとめです。今回の検証より、側方2人介助の可能性として、後方介助に比べ同時収縮指数の減少から前足部荷重・前方への推進力に違いが出た結果となりました。
また、リズムよく歩行ができ症例からも一番歩きやすいとの意見が聞かれました。
先行研究から高齢者や片麻痺患者では足関節筋の同時収縮指数が高く、姿勢制御の戦略であることが報告されており、必ずしも悪い反応とはいえません。しかし、足関節の剛性を高め足関節運動が減少する点を踏まえると、ストライド短縮や歩行速度の低下、歩行時のエネルギーコスト増大にも関連しており、過度な同時収縮はできる限り抑制したトレーニングが必要ではないでしょうか。
装具療法を行う上で使用する装具や介助方法の特性を知り治療方針を決定するこが重要であると考えます。

本研究の限界として、1症例での検証であり、麻痺の程度も軽度であったため、麻痺の重症度や体幹の保持能力などによっては異なる結果が出ると予測されます。そのため、今後も装具療法における介助方法の影響について検証を続けていきたいと思います。
以上で発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。

義肢装具学会2017

img_20180126-173822.jpg

img_20180126-173831.jpg

img_20180126-173838.jpg
はじめに。
脳卒中後症例の歩行速度は、歩行能力や歩行自立度、QOL、生活範囲、転倒リスクと強く関連するため、近年のリハビリテーションは歩行速度を向上させることに焦点をあてております。
歩行速度の増加には推進力が重要であると言われております。
推進力とは、図の黄色枠で示している、蹴り出しの際に生じる前方方向への床反力を指します。
この推進力の産生には、立脚後期における足関節底屈筋の筋活動が重要です。
このように、歩行速度を高めるためには推進力が重要ですが、脳卒中後症例の歩行は推進力の障害が非常に強いことが報告されており、足関節底屈筋のトレーニング戦略が重要であると思われます。

img_20180126-173844.jpg
一方で,足関節底屈筋の筋活動は,介助歩行時の歩容や介助方法の違いにより大きく影響を受けることが明らかになっております.
そのため,足関節底屈筋の筋活動を高める歩行トレーニングの方法を探ることが重要と思われます.
当院では歩行補助具T-Supportを使用して歩行トレーニングを行う場面が多くあります.T-Supportは,体幹部分のベストから下腿カフまでバンドで連結した構造であり,装着肢が進展するほど張力が発生する仕組みとなっております.
立脚期では股関節屈曲モーメントや股関節伸展角度を増大させ,遊脚期ではスイングの補助に作用します.
特に立脚期の股関節伸展角度の増大が,立脚後期の腓腹筋筋活動を増大させる効果があります.
T-Supportは介助歩行場面での使用を想定し開発され,主に後方介助歩行トレーニングで使用してきました.
しかし,セラピストが側方から介助歩行を行った際の歩行因子への影響は明らかになっておりません.

img_20180126-173851.jpg
介助歩行方法の違いによる特性として,後方介助歩行ではセラピスト1人が症例の後方から介助を行う方法であり,症例を後方へひきつけやすく,セラピストの前方への転倒恐怖心が強い特性があります.
側方介助歩行では,セラピスト2人が症例の側方から介助を行う方法であり,勝利を前方へ誘導しやすく,セラピストの前方への転倒恐怖心が少ない特性があります.
本研究では、脳卒中後症例1名における歩行の介助方法の違いが足関節底屈筋の筋活動に与える影響について検証しました。

img_20180126-173858.jpg
対象は、当院回復期病棟に入院している脳卒中後症例1名としました。
下肢のぶるんストロームリカバリーステージは、右下肢が3であり、重度の運動麻痺を認めておりました。
Gait Solution付き短下肢装具を使用した後方介助歩行時の歩容は、歩行速度が遅く、歩幅が非常に小さいことが特徴的でした。

img_20180126-173904.jpg
方法です.条件は,セラピスト1人が後方から介助を行う後方条件,TSを使用してセラピスト1人が後方から介助を行う後方TS条件,TSを使用してセラピスト2人が側方から介助を行う側方TS条件としました.
測定項目は,歩行速度、歩数、前遊脚期の足関節底屈トルク(Second Peak)、立脚後期における内側腓腹筋の表面筋電波形としました。

img_20180126-173910.jpg
セカンドピークとは前遊脚期における蹴り出しの力を指します.
筋電図の解析はSENIAMガイドラインに準拠して平均振幅を算出しました.
そして後方条件と後方TS条件,側方TS条件における歩行因子を比較しました.

img_20180126-173917.jpg
結果です.歩容は各条件で歩行速度や歩幅,また下段の腓腹筋筋活動に違いがあると思われます.

img_20180126-173924.jpg
歩行速度と歩数の結果です。
後方条件と比較してTSを使用した条件では歩行速度や歩数が改善しました。
また後方TSと比較して側方TSは歩行速度や歩数をさらに改善しました。

img_20180126-173931.jpg
次にSecond peakと腓腹筋筋活動の結果です。
後方条件と比較してTSを使用した条件ではSecond Peakや腓腹筋筋活動が増大しました。
後方TSと比較して側方TSはSecond Peakや腓腹筋筋活動をさらに改善しました。

img_20180126-173943.jpg
考察です.
歩行因子は側方TS条件で最も良い結果となりました.
なぜこのようになったのかについて,後方条件と後方TS条件から考えてみます.
まず,TS使用による最も大きな歩容の違いは歩幅の違いです.
ここから,TSによる歩行因子への影響として,非麻痺側の歩幅拡大が腓腹筋筋活動および歩行速度を増大させたと思われます.さらに,腓腹筋筋活動の増大は蹴り出し力であるセカンドピークを増大させることで歩行速度の増大に関与していたと考えます.

img_20180126-173950.jpg
次に後方TS条件と側方TS条件の違いです.両者の最も大きな違いは,症例の前方への推進を妨げないことであると考えます.
まず上半身のアライメントですが,後方介助ではセラピストが症例の上半身を後方へ引き付けやすい特徴があります.
また後方介助では,セラピストと症例の合成重心位置が,症例本来の重心位置よりも後方に位置しますが,側方介助では合成重心位置が後方に変異しないため,前方推進を阻害しなかったと考えます.
これらのことから,側方介助は後方介助と比較して前方への推進が行いやすく,それらが歩行速度や歩幅を増大させ腓腹筋筋活動の増幅に関与していたのではないかと考えます.

img_20180126-173957.jpg
まとめです。
本研究では、脳卒中後症例に対し歩行の介助方法の違いによる歩行因子への影響を検証しました.
側方介助歩行は後方介助歩行と比較して,歩行速度と歩数,足関節底屈トルク,腓腹筋筋活動を著しく改善しました.
これらのことから、側方介助歩行は,脳卒中後症例の腓腹筋筋活動を高めるトレーニング方法として有用な手段であると思われます。

2017近畿 やまもとくん

img_20180518-010433.jpg



img_20180518-010449.jpg
はじめに.
脳卒中後症例における歩行速度は,歩行能力や歩行自立度,QOL,生活範囲,転倒リスクと強く関連するため,近年のリハビリテーションは歩行速度を向上させることに焦点を当てております.
歩行速度を増加させるためには推進力が重要です.推進力とは図の黄色枠で示している,蹴り出しの際に生じる前方方向へ蹴る力のことを指します.


img_20180518-010455.jpg
この推進力の産生には立脚後期における足関節底屈筋の筋活動が重要であると言われております.
このように歩行速度を高めるためには推進力が重要ですが,脳卒中後症例の歩行は,推進力の障害が非常に強いことが示されており,足関節底屈筋のトレーニング戦略が重要視されています.
そこで,LeeらはFastトレーニングに代表される速く歩く練習が歩行速度や下肢筋活動の改善に有効であると報告しています.

img_20180518-010501.jpg
以前に当院で行われた研究では,歩行速度や立脚後期における腓腹筋筋活動は介助方法の違いにより大きく異なることを報告しました.

img_20180518-010507.jpg
また近年,神経学的な側面からは,脳波や脳磁図,筋活動の位相の類似性から,皮質脊髄路興奮性を推察できることがわかってきています.
これらを筋間コヒーレンス解析と呼び,近年では筋電図のみから観察が可能であることが報告されており,脳とその効果器である筋肉との隔たりは無くなってきております.
先行研究では,脳卒中後症例における麻痺側遠位筋群で皮質脊髄路興奮性の低下を認めることが報告されています.


img_20180518-010526.jpg
また,歩行中の皮質脊髄路の興奮性増大は歩行速度の向上と関連することが報告されています.
そこで,脳卒中後重度麻痺を呈する症例においても歩行介助方法の違いにより,腓腹筋筋活動に加えて皮質脊髄路興奮性も異なるのではないか?といった疑問が生じました.


img_20180518-010534.jpg
我々は歩行練習に介助が必要な症例に対し,後方介助歩行と,側方介助歩行を用いて,正常歩行の再現を目的に介入しております.どちらの介助方法も前型歩行を促し,体幹を安定させることが可能ですが,両者の介助特性には明確な違いがあります.

img_20180518-010545.jpg
そこで,本研究では,脳卒中後症例1名における歩行の介助方法の違いが足関節底屈筋の筋活動ならびに皮質脊髄路興奮性に与える影響について検証することとしました.


img_20180518-010601.jpg
対象です.当院回復期病棟に入院している初発脳卒中後症例1名で,性別は男性,年齢は50歳代,発症後日数は23日でした.
身体機能に関してですが,
下肢Brunnstrom Recovery StageはⅡで重度片麻痺を呈している状態でした.
その他,以下ご参照ください.
なお、歩幅や歩行速度は介助者の技術や介助方法に依存する状態でありました.

img_20180518-011056.jpg
方法です.まず,介助条件ですが,Gait Solution機能付き長下肢装具と当院中谷PTが川村義肢社と共同開発したT-Supportを使用し,理学療法士1名が長下肢装具の膝継手をロック解除し,後方から歩行介助を行う(後方TS),
理学療法士2名が患者の側方から歩行介助を行う(側方TS)の2条件における歩行因子を比較しました.
前後に予備路を設けた10m歩行路においてセラピストによる快適歩行速度での歩行を実施し,その際の動画と表面筋電計による測定を行いました.
表面筋電計測定にはパシフィックサプライ社製Gait judge Systemを用い計測しました.
測定項目は
歩行速度
歩数
前遊脚期の足関節底屈トルク(SP)
なお,このセカンドピークは歩行周期における,右の図に当たる部分で蹴り出しに相当します.
麻痺側前脛骨筋
麻痺側内側腓腹筋
筋間コヒーレンスのθ帯域,β帯域としました.

img_20180518-011114.jpg
なお,θ帯域は脊髄前角運動ニューロン,β帯域は大脳運動野からの遠心性投射を反映しているとされており,1に近づくほど興奮性が高く,0に近づくほど興奮性が低いことを示すとされています.


img_20180518-011122.jpg
表面筋電波形の計測は,SENIAM Guidelinesに準拠して解析を行い,歩行時の最大振幅で除して正規化を行ったのち,立脚後期の平均振幅を算出しました.
また,筋間コヒーレンスの解析には,その解析データをWavelet coherence analysisを用い,5-10Hzおよび15-30Hzにおける平均値を算出しました.

img_20180518-011132.jpg
結果です.
後方TSと比較して側方TSでは歩行速度や歩数,セカンドピーク,立脚後期の内側腓腹筋筋活動が高値を示しました.
また,立脚後期の前脛骨筋筋活動には大きな変化を認めませんでした.

img_20180518-011138.jpg
筋間コヒーレンスに関しては,後方TSと比較して側方TSでβ帯域(15-30Hz)において高値を示しました.
一方,θ帯域(5-10Hz)はβ帯域と比較して大きな変化を認めませんでした.
なぜこうなったか?

img_20180518-011201.jpg
考察です.
側方TSにおいて以下のような差を認めたことに関して
重心の前方移動を阻害しない側方介助において,より立脚後期での足部接地が可能であったことが考えられ,以前に当院で行われた先行研究を支持する内容でありました.


img_20180518-011231.jpg
次に神経学的側面から考察していきたいと思います.
以下の項目で介入期間中に差を示しました.
筋間コヒーレンスに関する先行研究より,θ帯域は脊髄前角運動ニューロン,β帯域は大脳運動野からの遠心性投射を反映していると報告されています.
また,脳卒中後症例の歩行においては同時収縮を基盤とした皮質脊髄路で代償していることも報告されています.
今回,β帯域コヒーレンスが側方TSにおいてより高値を示したことに関して,皮質脊髄路の興奮性増大は,要求された内側腓腹筋筋活動を大脳運動野興奮の高まりによってもたらしたためであることが考えられました.
今回,検証された筋電図は前脛骨筋-内側腓腹筋間のコヒーレンスから得られたデータであるため,側方TSにおいてより同時収縮を基盤とした,皮質脊髄路の興奮性増大による代償戦略により,麻痺の回復を図ったことが考えられました.

img_20180518-011240.jpg

まとめです.
介助方法の違いが歩行速度および筋活動の変化を認めました.
神経生理学的変数である皮質脊髄路興奮性にも差異を認めました.
歩行に介助が必要な重度脳卒中後症例の介入戦略を検討する上で新たな視点を与える検証であったと考えます.

本研究の限界点として,対象者が1名であったこと,皮質脊髄路興奮性の程度の影響する患者特性が明確でないこと,介助者が限定されていたことでした.
以上で終わらせていただきます.ご静聴ありがとうございました.

下肢装具カンファレンス

img_20180511-082437.jpg

img_20180511-082447.jpg
はじめに
近年、脳卒中片麻痺患者のリハビリテーションにおいて、課題志向型トレーニングが重要視されています。
この考えをベースにすると、片麻痺患者のトレーニングでは歩行量を増やすことになります。
しかし、ただ歩けばよいということではありません。

img_20180511-082454.jpg
大事なことは、上手に、たくさん、歩くということです。

img_20180511-082459.jpg
しかし、何をもって上手な歩行動作と判断すればよいのでしょうか?

img_20180511-082504.jpg
当院ではゲイトジャッジシステムを使用し、筋活動や関節の動きを測定していますが、これら情報も断片的情報であり、むしろ、ゲイトジャッジを使ったからこそ、余計に判断に迷う場合もあります。

img_20180511-082511.jpg
今回我々は、ゲイトジャッジシステムを用い評価した、とある日の脳卒中片麻痺患者の歩行データを提示し、
それをもとに下した我々の判断が本当に適切であったと言えるのかを皆さんに聞いていただくという発表をしてみたいと思います。

img_20180511-082517.jpg
症例は70男性で、下肢Brunnstrom Recovery StageはⅢでした。
本症例は回復期入院後に長下肢装具を作成し、約1か月半が経過しており、手ごたえとしては膝関節の固定を解除しても、まずまず良い姿勢での歩行が可能となっていました。
そのため臨床での最も重要な判断は、膝関節の固定を解除した状況で、セラピストがどのような介助をすることが、良い歩行動作であるのか、という点にありました。

img_20180511-082522.jpg
当院で良く行われる介助歩行の方法は2つあります。
一つはセラピストが後方から患者を支える後方介助歩行、そしてもう一つが、2人のセラピストが患者を側方から支える、側方介助です。
今回の検証では、どちらの介助方法がより良い歩行動作であるかを知るため、ゲイトジャッジで得られたこれらの歩行因子を比較しました。

img_20180511-082533.jpg
まずはこちらの動画をご覧ください。
後方介助での歩行の様子です。
介助下で歩き始めてみて、どうもうまくいかず、患者さんとの息が合えばもっとうまく膝を伸ばすことができるはずなのですが、もうひとつ上手く介助することができませんでした。
介助しているのは私で、撮影しているのは私の上司です。
やや気を遣う状況ですが、すいません、本当はもっとうまく歩けると思うので、もう一度評価してくださいとお願いしまして、もう一度評価を行うこととしました。

img_20180511-082541.jpg
こちらが後方介助の2回目です。
10m歩行の後半、やや膝屈曲位になる傾向がありますが、1回目に比べると手ごたえがありました。

img_20180511-082553.jpg
こちらがセラピスト2人での側方介助の様子です。膝折れすることなく歩行が可能となっています。

img_20180511-082602.jpg
さて、この3つの歩行動画をご覧になって、ぱっと見た感じ、皆さんならどの方法を選択されるでしょうか?

img_20180511-082608.jpg
ゲイトジャッジを用いた評価の結果です。
歩行速度では後方2回目側方がとんとんでした。
歩数では側方が最も少なく、ストライドが伸びていました。

img_20180511-082614.jpg
腓腹筋内側頭の筋活動は、後方1回目では波形が乱れていたため、後方2回目と側方を比較しました。
結果、後方2回目がやや活動量が高いということがわかりました。
立脚期の足関節最大背屈角度は、後方1回目で最大値となりましたが、これは膝折れの結果であると思われ、なんとも判断しかねる部分でした。
著明な膝折れの見られなかった後方2回目と側方条件では、大きな差は見られませんでした。

img_20180511-082621.jpg
Second Peakでは側方介助条件が最も高い値を、First Peakでは後方1回目が最も高い値を示しました。

img_20180511-082627.jpg
しつこいようですが、このような結果をご覧になったうえで、皆さんならどの介助方法を選択されるでしょうか?
客観的な評価を行うことはとても大切なことですが、このようにデータをとればとるほど、判断が難しくなる場合がないでしょうか?
今回我々が下した判断は、

img_20180511-082632.jpg
側方介助が比較的良いトレーニングではないか、ということです。
その理由は2つあります。

img_20180511-082637.jpg
ひとつは、後方介助ではうまく介助ができるときと、うまく介助ができないときの差が激しい、ということです。
特に今回のように、長下肢装具による膝関節の固定を解除してすぐの場合には、ちょっとした介助方法の違い、あるいは患者さんと息があうかどうか、といったことが大きく影響し、歩容が変化してしまうことがあります。
歩容の再現性の低い介助歩行は、患者様にとって効率的な運動学習を阻害する可能性があるため、この評価を行った時点では積極的に実施することにリスクが伴うのではないかと考えました。

img_20180511-082643.jpg
一方で、側方介助では比較的安定して評価時の歩行動作が遂行可能でした。
ゲイトジャッジの評価では、手ごたえのあった後方介助2回目と、側方介助とでいくつかの評価結果が似た値であること、また側方介助ではその動作の再現性が高いということを総合的に判断し、今回の評価からは、側方介助がベターではないかと考えました。

img_20180511-082650.jpg
まとめです。
麻痺患者の歩行能力を向上させるために、理学療法士に求められるものは多岐にわたりますが、我々は、以下の4つの条件を高いレベルで揃えることが必須であると考えています。
一つは適切なトレーニング理論、次に、その理論を実践するために最適な治療道具を選択できること、さらに、実際に良い歩行動作ができているか判断するための歩行評価機器の使用、そして最後に、そこで得られた評価結果を適切に判断する力、です。
近年臨床場面にさまざまな最新の機器が導入されるようになっていますが、我々理学療法士にとって、この評価結果の判断こそが最も重要であるということを、本症例を通して再認識しました。

以上で発表を終わります。

プロフィール

プロフィール画像
ニックネーム
中谷知生

Tomoki Nakatani
所在地
兵庫県宝塚市にある、宝塚リハビリテーション病院に勤めています。
職業
理学療法士です。

Certificated physical therapist in Neurology

自己紹介
I am interested in physiotherapy for improvement of gait ability of a patient with stroke hemiplegia.
And I'm a member of Japan Physical Therapy Association stroke guideline crew.

ブログ

1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031

blog

7月 2026年8月 9月
1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031

ライフログ

1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031
QRコード
携帯用QRコード
アクセス数
ページビュー数