6.T-Supportによる長下肢装具の膝の固定解除に関する研究
長下肢装具って、便利やん?
けど、膝固定するやん?
スイングのときに、不便やん?
そう、だから、T-Supportを使ってみたら、面白いんじゃないですか?
T-Supportの弾性バンドの張力を使ったら、長下肢装具の膝関節の固定を比較的早めに解除できるんじゃないかと思うのです。
そういうお話。
6-1.徒手的に介助するのと、T-Supportで介助するのと、こんなに違う感じなんですよ、って研究
これは2015年の第4回脳血管障害への下肢装具カンファレンス2015でボキが発表した内容です。

この会場におられる多くの皆さんが、脳卒中片麻痺患者の治療場面に長下肢装具を使用されることと思います。
私の所属する宝塚リハビリテーション病院でも、積極的に長下肢装具を使用しています。
長下肢装具は麻痺側立脚期に重心を持ち上げる上で非常に有用な道具であると実感しています。
しかし、長下肢装具を使用する上で最も難しいことの一つとして、どの段階でカットダウンするべきか、という議論があると思います。
これは私の個人的な意見ですが、適切なカットダウンの時期とは、長下肢装具を用いて行っていた歩行動作を、そのまま短下肢装具でも行えるようになった時期こそが、適切な時期ではないかと考えています。

しかし現実には、長下肢装具を用いてセラピストの後方介助による前型歩行を繰り返し練習してきたのに、カットダウンした途端に患者さんは3動作揃え型歩行を始める、というようなことがよくあります。
なぜ長下肢装具で獲得した歩容がそのまま短下肢装具で実現できないのか?
この原因の一つとして、長下肢装具から短下肢装具へのカットダウンの過程において、一気に運動の難易度が上がってしまうことが挙げられるのではないかと考えています。
膝関節を固定した状態から、もうワンクッション難易度を下げた運動を経由してカットダウンへと持っていくことで、長下肢装具で行ってきた歩行動作を短下肢装具でも行えるようになるんではないだろうか。
今日はそういう取り組みをご紹介したいと思います。

そのためには、T-Supportという歩行補助具を使う必要があります。
これは、私が川村義肢さんの協力を得て3年ほど前から開発してきたもので、基本的にはゴムバンドで下肢装具を引っ張ると治療効果が高まるんじゃないか、というコンセプトで開発された歩行補助具です。
これまで様々な種類のT-Supportを作成して参りまして、おそらく、来年度には商品化して皆さんにお使いいただけると考えています。

今回お話しますのは、その開発過程の一品で、体幹コルセットを使用していますので、我々は『コルセットタイプ』と呼んでいます。
これは体幹コルセットにハンドルが付いておりまして、セラピストが後方から患者の体幹を操作できるようになっています。
コルセット前面からはゴムバンドが伸びておりまして、下腿カフに巻きつける構造になっています。
これは当初、カットダウンの難易度の調節を目的として作成したわけではありません。
あくまでも長下肢装具の膝関節はロックした状態で、上手くスイングできるようなサポートするにはどのような構造がよいのかを模索していました。
しかし、ある日気づいたのです。
この歩行補助具とセラピストの重心移動により、長下肢装具が適応であると思われる段階の患者さんにおいても、膝関節の運動自由度を上げた状態での歩行動作が行いやすくなるのではないか、と。

そこで今回は、当院に入院中で長下肢装具を使用した歩行練習を行っている患者様にご協力をいただきまして、T-Supportを使用することでどのような歩行動作が可能であるか、データを取らせていただきました。
ご協力頂いた患者様は発症から約4カ月が経過しており、下肢Brunnstrom Recovery StageはⅢでした。
比較したのは、長下肢装具の膝継手をロックした状態での歩行と、膝継手を解除した状態でセラピストが長下肢装具を徒手的にコントロールした歩行と、長下肢装具の膝継手を解除しコルセット型T-Supportを装着した歩行で、川村義肢社製Gait Judge Systemを用いてどのような違いがあるのかを検証しました。

これは長下肢装具の膝継手をロックした状態の歩行動作です。
膝関節が固定されていることで麻痺側立脚期の足関節はしっかりと底屈位へと踏み込み、その後下腿の前傾に伴い背屈位へと変化しています。
足関節の角度変化はこちらのグラフ、これは正が背屈・負が底屈ですが、きれいに踏み込んだ後に背屈位へと切り替わっていることがわかります。
この歩行動作自体はとてもきれいに行えていると思います。
ただし、スムーズに短下肢装具を用いた歩行動作につなげるという観点からは、問題点が2.つあると私は考えています。
一つは、立脚期に重心を持ち上げるという動作が、長下肢装具のおかげであまりにも簡単に行えているといこと。
そしてもう一つは、膝関節が伸展位で固定されているために、立脚後期から遊脚初期にかけての膝関節の屈曲動作を伴ったスイングが学習できないということです。
この症例で、膝関節のロックを解除するとどうなるでしょうか?

この時期、本症例は自己でのスイングが十分には実施できないため、セラピストは遊脚期に徒手的に長下肢装具をひっぱります。
その後、立脚初期からは膝折れを防ぐために股関節・膝関節が伸展する方向に支持しようとします。
しかし支持しきれずに膝折れが起きます。
足関節の角度を見ても、立脚初期からの踏みこみが乏しく、また膝伸展位での下腿前傾が起こらないためにえ背屈位への切り替えもほとんど見られません。
患者さんにとっても、セラピストにとっても、この環境で膝を自由に動かして歩行するということがまだ難しすぎるんだと思います。

そこで、T-Supportを使用します。
T-Supportを使用する最大のメリットは、ゴムバンドによるスイングのサポートがあるために、セラピストが下肢を引っ張る必要がなくなるということです。
そして、空いたセラピストの手はコルセットのハンドル操作に用いることができるため、立脚期の身体重心のコントロールに集中することがます。
これにより、膝の自由度を制限しない状態であっても膝折れを起こさずに立脚期を創ることが可能になります。
足関節の動きをみても、初期接地から足関節が底屈位へと踏み込み、その後膝関節伸展位のまま背屈位へと変化していることがわかります。
また立脚後期から遊脚期にかけて、膝関節を固定した場合には決して行えない、膝関節屈曲位からの慣性力を用いた伸展運動が可能となっています。
このように、T-Supportを使用することで、随意性や支持製の乏しい症例においても、より正常歩行に近づけた歩行トレーニングが可能となるのです。

なぜT-Supportの使用が難易度の調整に有効なのでしょうか?
立脚期の膝関節の支持性は筋力よりも股関節と足関節の相対的な位置関係関によって規定される、とされています。
臀部・体幹をしっかりと持ち上げることで、床反力を膝関節の中心部に近づけ、支持性の乏しい状態であっても伸展位で保持することが可能となるからです。
長下肢装具で膝関節を固定している場合には、このアライメントはなかば強制的に誘導されます。
カットダウンにより歩容が変化してしまうのは、膝関節の自由が許された状態で、セラピストにより重心を持ち上げるという動作の学習の機会が提供されていなかったことが要因ではないかと考えています。

T-Supportを使用することにより、麻痺側下肢の動きはゴムバンドでコントロールしつつ、セラピストは体幹・骨盤の操作を行うことが可能となります。
これにより、膝関節の運動自由度を確保した状態で、安定した立脚期をつくる事が可能となったのです。
本日ご紹介した症例だけではなく、当院では、このようにセラピストの徒手的な介助ではまだまだきれいな立脚期をつくることが難しい症例において、膝の固定と遊動を組み合わせた歩行動作が可能となり、より早い段階でのカットダウンが可能となってきています。
今後は、このT-Supportを用いたロック解除歩行が治療的にどのような意味があるのか、を検証していこうと考えています。
…うん、なかなかよい内容なのです。
この症例を担当してたのはモリイちゃんなのですが、彼女も2015年の第27回兵庫県理学療法学術大会で発表しています。
それがこちら。
6-2.早期のロック解除トライアル、モリイちゃんがまとめたよ


はじめに
麻痺側下肢の支持性低下により、長下肢装具膝継手固定解除下では膝折れが著明にみられ、歩行が困難であった症例に対し、歩行補助具T-Supportを使用することで、膝継手固定解除下での歩行動作が可能となりました。
これにより、膝関節の運動自由度を制限せず、正常歩行に近い関節運動を繰り返し学習することが可能となった結果、歩行能力が向上したため報告させて頂きます。

対象は、70歳代の男性で脳梗塞右片麻痺を呈し、下肢Brunnstrom Recovery StageはⅡと重度の運動麻痺を認め、さらに感覚障害や高次脳機能障害がみられていました。
当院入院後、長下肢装具を作製し、フリーハンド介助歩行練習を中心に実施しました。
当院入院から約2ヶ月半後の第131病日、膝固定解除下では立脚期に膝折れが著明で歩行困難でしたが、T-Supportを装着することで膝固定解除下での歩行が可能でした。

そのため、T-Supportを装着した歩行練習の効果検証を目的に装具装着下での杖歩行をT-Support有り、無しの2条件において、10m歩行速度と歩数の変化を計測しました。
T-Supportとは、下肢装具を用いた歩行練習において、体幹前面から装具の下腿カフをゴムバンドでつなぎ、立脚後期の股関節伸展に伴ってゴムバンドが伸張され、遊脚期で股関節屈曲を補助することを目的としています。

結果です。
第131病日、T-Supportなしでは歩行動作が困難でしたが、T-Supportを使用することで歩行可能でした。
そのため、膝継手固定解除しT-Support装着下でのフリーハンド歩行練習を中心に実施しました。
第167病日よりT-Supportなしの歩行が可能となり、第212病日ではT-Supportの有無にかかわらずほぼ同等の速度・歩数で歩行が可能となりました。
また、測定開始から5回目の測定まで、歩行速度の向上・歩数減少を認め、より前型の歩行が可能となりました。

考察です。
まず、こちらの動画をご覧ください。131病日の歩行場面です。
左側がT-Supportなし、右側がT-Supportありです。
T-Support無しでは、麻痺側立脚期に膝折れが著明にみられており、麻痺側遊脚期の振り出しも介助が必要な状態です。
そのため麻痺側の機能回復を促すようなアライメントでの歩行練習が困難な状態でした。
しかし、T-Supportを装着することで麻痺側でも踵接地から、膝折れなく立脚中期にかけて身体重心を上方へ持ち上げ、立脚後期で股関節を伸展することが可能となっています。
また、立脚期に伸張されたゴムバンドの張力により前遊脚期から遊脚初期にかけて素早い股関節屈曲とそれに伴う膝関節屈曲が得られクリアランスが確保されています。

先ほどの動画のように、本症例は麻痺側立脚期の支持性が低く、膝折れが強いため、立脚中期の身体重心持ち上げが困難、立脚後期の股関節伸展も難しい状態でした。
T-Supportを装着することで、膝関節の前方を通るゴムバンドが膝関節伸展を補助し、立脚中期に膝折れなく、立脚後期で股関節膝関節を伸展位で保持することが可能となりました。
また、セラピストは体幹操作に集中することができ、より良いアライメントで歩行練習を行うことが可能となりました。

さらに、遊脚期では常時屈曲位であった膝関節が、T-Supportを装着することで、慣性力を用いた屈伸動作が可能となりました。
その結果、正常歩行に近い膝関節の動きを繰り返し学習することが可能となりました。

これは退院時の動画です。
長下肢装具から短下肢装具へ移行する時期については様々な報告がありますが、膝関節の支持性が得られた時点でカットダウンするというというものが多いように感じます。
しかし、本症例のように、膝関節の支持性が不十分な段階でもT-Supportを使用することで、立脚期の支持性・遊脚期の膝関節屈伸動作を確保した歩行練習が早期に可能となると考えます。
以上で発表を終わります。
ご清聴ありがとうございました。
…これね、動画をいっぱい使った発表だったから。
本当にね、徒手的な牽引では、膝屈曲位になっちゃってたの。
それがT-Supportを使うことで、膝伸展位での保持が可能になったんだよ。
動画…見てほしいわ。
MAJIDE。
この症例の変化で、ボキ、T-Supportはこれまでの装具療法に革命を起こせるって自信を持ったんだ。
ただし、気をつけなきゃならないことがあります。
T-Supportを使った早期のロック解除は、少々技術的な難易度が高い、ということなのです。
ただT-Supportをつけたらそれだけでできるものではありません。
装着したうえで、理学療法士がしっかりと目的を持った介助をしないと、早期のロック解除はできません。
そんなお話をきいてもらいましょうか。
6-3.なつみとトモッキーのハーモニー 第一章


2つ前に竹田総合病院の丹保氏が発表されましたが、オランダには麻痺側下肢に弾性バンドを装用し牽引するCVAidという歩行補助具があります。
私は、これに興味を持ち、昨年、丹保氏と2人でオランダに見に行ってきました。
そしてCVAidを職場に持ち帰り、患者さんに装着してみたり、勝手に改造してみたり、実習生に装着させたりと、いろいろ試してきました。

このCVAidのほかにも、近年、脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニングにおいて、ロボットスーツHAL、リズム歩行アシスト、アクシブなど、麻痺側下肢に外力を加えるという機器が普及しつつあります。

そうした流れの中で、2011年より、宝塚リハビリテーション病院と川村義肢は、下肢装具と体幹を弾性バンドで連結する歩行補助具、T-Supportの開発を進めてまいりました。
さまざまな階良を加えてまいりまして、このような形で近日中に皆さまにお使いいただけることになりそうです。

T-Supportを装用することが歩行時の身体にどのような力学的影響を与えるのか、これまで様々な検証を行ってきました。
これまでに明らかになっていることは、遊脚期に股関節屈曲モーメントを増大させることで、麻痺側下肢のスイングを補助すること。
また、立脚期には膝関節伸展モーメント、および足関節底屈モーメントを増大させ、立脚期の支持性を向上させることです。

この数年間、私ほど、片麻痺患者さんの麻痺側下肢にゴムバンドを巻いた歩行練習をしてきた理学療法士は居ない、と自負しています。
そしてその経験から、ゴムバンドを利用することは、徒手的な介助に比べ、優れた部分が多々あると考えています。
この写真は、今年度の兵庫県理学療法学術大会で発表した内容ですが、このように、徒手的な介助ではまだしっかりと下肢の伸展位保持が難しい症例においても、T-Supportを使用することで、良いアライメントを保持することが可能となる場合があります。
しかし、ここで留意すべきことがあります。

それは、T-Supportの最大の特徴は、理学療法士による介助歩行時の使用を前提に開発されたものであるため、使用する理学療法士の介助技術により、その効果にも差が出る、ということです。

本日お話しする内容は、当院に入院する回復期脳卒中片麻痺患者において、臨床経験13年目と、臨床経験1年目の理学療法士が、同じようにT-Supportを用いた介助歩行を行った際に、どのような違いが生じるのか。
そこから、どうすれば上手く歩行介助ができるようになるのか、ということを考えてみたいと思います。

今回の評価にご協力いただいた患者さんは、70歳代の女性で、左視床出血による右片麻痺、ブルンストロームリカバリーステージは3でした。
担当理学療法士は先ほどのスライドに出てきた、新人のなつみでした。

これは、第70病日の、長下肢装具で膝関節を固定した状態での新人による後方介助歩行の様子です。
ゲイトジャッジシステムの画面で確認すると、ローディングレスポンスからターミナルスタンスにかけて、足関節が底屈位から背屈位へと、非常にスムーズに変化していることがわかります。
このことは、麻痺側立脚期に下腿がスムーズに前傾していっていることを表しています。
発症から約2か月半が経過して、ぼちぼち膝関節の固定を介助した歩行トレーニングも始める必要があるのではないかと考え、立脚期の下肢の支持性を保障するために、T-Supportを装用し、膝関節の固定を介助したフリーハンド歩行練習を行うこととしました。
まず、新人による、膝固定解除下での歩行の様子をご覧いただきます。

ターミナルスイング。

ローディングレスポンス。

ミッドスタンス。

ターミナルスタンス。
立脚期全般を通して、膝伸展位の保持が困難であり、まだまだ膝関節の固定を解除するのは難しそうな印象を受けます。
ここで、足関節のグラフを、膝関節固定時の波形と見比べてみると、波形の違いが明らかです。
では次に、熟達者が同じ条件で歩行をしてみます。

ターミナルスイング。

ローディングレスポンス。

ミッドスタンス。

ターミナルスタンス。
まずまず良いアライメントです。
これならばぼちぼち、膝関節の固定を解除した歩行トレーニングを行ってもよさそうです。
足関節の波形も、少々がたつきがありますが、比較的似た形であり、麻痺側立脚期が安定していたことを反映しています。
でこの違いを数値でどのように表すことができるでしょうか?
やはり、一番の違いは膝関節のアライメントであると思われますので、ターミナルスタンスの膝関節の角度を、ビデオ画像をキャプチャして計測しました。

青のグラフが熟達者、赤のグラフが新人です。
膝関節の固定を介助した第70病日では、新人は、熟達者に比べ、膝関節が14.2°屈曲位となっていました。
臨床では、熟達者が、歩行介助の方法を指導し、介助技術の向上を試みました。
第85病日では、膝関節の角度差は8.8°へと縮まり、第101病日では、その差は3.8°となりました。
このことは、徐々に新人が上手くT-Supportを使いこなすようになり、比較的膝が伸びた状態でのターミナルスタンスを創ることができるようになったことを表しています。

では考察に移ります。
今回の検証を通して、まず、長下肢装具による膝関節の固定を早期に解除する上での技術的な課題とは何か?
次に、今回の症例においてT-Supportが果たした役割とは何か?
最後に、なぜ新人なつみは歩行介助が上手くなったのか?
の3つのことを考えました。

長下肢装具を用いた歩行練習は、膝関節の固定により、麻痺側立脚期の重心のコントロールを容易なものとしてくれます。
その一方で、麻痺側下肢のクリアランスを確保するために、膝関節を自由に動かした状態でのスイングの練習もまた重要です。
しかし、多くの臨床家にとって、どの段階で膝関節の固定を解除するかということは非常に悩ましい問題ではないでしょうか?
膝関節の固定を解除することは、特にターミナルスタンスにおいて、股関節・膝関節伸展位を上手く保持させられるかどうか、が重要だと感じています。

しかし、おそらく多くのみなさんが経験しておられることと思いますが、長下肢装具を使用した介助歩行練習時にはしっかりと股関節を伸展していた症例が、膝関節の固定を外したとたんに非麻痺側のストライドが短縮し、揃え型に近い歩容を呈する。
これは膝関節の運動自由度が向上したことで、課題の難易度が一気に向上したためであると思われます。
T-Supportは装着下肢の股関節を伸展した際に、下肢前面のゴムバンドが伸長され、膝関節伸展を補助するため、難易度の調整が可能となる。
これが、膝関節の固定の解除を行う際の、T-Supportの役割であると考えます。

しかし、新人なつみは当初、ターミナルスタンスでの膝折れに対する恐怖心が強く、歩行周期全般を通し患者の体幹部を強固に自身に引き付ける介助となったため、特にミッドスタンス以降に重心が後方に残ってしまい、その結果、膝関節に強い屈曲モーメントが発生していました。
そこで熟達者の指導のもと、膝関節のロック解除下での適切な重心移動の方法を繰り返し練習しました。
その結果、最終的に膝関節の屈曲角度の差が縮まり、膝関節ロック解除下での安定した歩行トレーニングが可能となったものと考えます。

まとめです。
回復期脳卒中片麻痺患者において、歩行補助具T-Supportを使用した熟達者と新人の介助歩行動作を経時的に比較しました。
介助方法の違いにより、立脚期の安定性に大きな違いが認められました。
T-Supportが介助歩行時に効果を発揮するには理学療法士の適切な介助が必要であることがわかりました。
6-4.これはちょっと訳ありで、本当はこのテーマじゃなかったんだけどね…
じゃぁ次。第5回脳血管障害への下肢装具カンファレンスでのザイゼンくんの発表。
ちなみにこの第5回脳血管障害への下肢装具カンファレンス、宝塚リハビリテーション病院から、大阪会場で2本、東京会場で3本発表しましてん。
本当は大阪で発表しようとしてたんだけどね。
宝塚リハビリテーション病院の発表本数が多すぎるってことで…半分を東京での発表に変更したんだ。
結果的に東京で京大の大畑先生と初めてじっくりお話しできて、ボキ的にはとっても収穫が多かったんだけどね。
その東京での発表。
本当はこの症例、サウンドシステムが劇的に効いた経過を発表しようとしてたんだけど。
ちょうどこの時期、川村義肢さんがまだサウンドシステムの特許が取れてなくて、発表は待ってくれ、ってことになってね。
急遽抄録を差し替えたのだ。
そんな思い出のある1本です。


はじめに。
脳卒中片麻痺者に対する歩行訓練は、脳卒中治療ガイドラインでグレードAとなっています。
当院では重度片麻痺患者に対して長下肢装具を使用し歩行訓練を行うことが多いです。
しかし、長下肢装具の問題点として膝固定による歩容の変化が挙げられ、より正常な歩行を行っていただくための膝固定解除を、どの段階で行うかに関して一定の見解はありません。
そこで、T-Supportという歩行補助具を使用することにより、膝ロック解除がスムーズに行えた症例を担当させていただきましたので発表します。

そもそも、T-Supportとはどのような物かを簡単にではありますが説明させていただきます。
図のように体幹部分にハーネスを装着しています。
これにより体幹機能をサポートする機能を有しています。
そして、骨盤から膝まで弾性バンドが装着されており、この機能により遊脚期の振り出しの補助や膝折れの抑制などに効果を発揮します。
症例は、年齢85歳、性別は女性、疾患名は脳出血(左被殻~前頭葉)でした。
平成27年4月中旬に発症し、第33病日の5月中旬に当院に入院となっています。
第104病日目の評価では、BRS は 下肢Ⅱであり、重度の運動麻痺を呈していました。
当院入院後、約70日間長下肢装具により膝関節を固定した歩行を繰り返していました。
介助歩行中の介助量が減少してきたため膝固定解除での歩行トレーニングを検討しました。

T-Supportを装着した歩行練習の効果検証を目的として、長下肢装具の膝関節の固定を解除した後方介助歩行動作においてT-Support未装着下・装着下の2条件で10m歩行の所要時間・歩数・荷重応答期の足関節底屈トルクFirst Peak値(以下FP)を計測しました。
計測はパシフィックサプライ社製Gait judge systemを用いました。
計測は第104病日と第125病日に実施しました。
(→動画スライド1枚目)
第104病日の動画です。
左の動画が膝ロック無し、右の動画が膝ロック無し、T-Support使用下での歩行です。
同日内で撮影した動画ですがIC時には膝屈曲角度の減少、Tsw時には股関節屈曲に伴う膝関節伸展が促されていることがわかります。
このT-Supportを使用した膝ロック解除歩行を約3週間程度繰り返しました。
(→動画スライド2枚目)
125病日目の動画です。
この動画では、T-Support未使用下でもIC時には膝屈曲角度の減少、Tswには股関節屈曲に伴う膝関節伸展が促されており、3週間T-Supportを使用した歩行訓練を繰り返したことによりT-Support使用有無での変化が少なくなってきていることがわかります。
結果として、104病日目ではT-Suppot無しのFPが9.4Nm、有りが10.3Nmと介助歩行の方がFPが高くなっています。
しかし、125病日目では、T-Support無しのFP値が10.9Nm、有が10.3NmとT-Suppot無しに向上が見られており、踵接地がうまく促せていることがわかります。
長下肢装具膝ロック下での歩行トレーニングの問題として、大腿カフをセラピストが徒手的に牽引する方法では、股関節屈曲方向への誘導は容易ですが、それに伴ってターミナルスイングにかけてみられる膝関節伸展の動きが難しい傾向にあります。
それと比較して、T-Supportの弾性バンドは体幹前面を起始部とし、下腿前面を停止部としているため、セラピストの徒手的な介助では困難であった遊脚期での股関節屈曲に伴う膝関節伸展運動の誘導が容易に行えます。
その結果として、より膝関節が伸展した状況でイニシャルコンタクトを迎えることが可能となり、より強い踵接地から倒立振子機能を獲得することが可能になったと考えられます。
このことは、FP値の平均値がT-Support使用で向上したことからも推察されます。
このことから、長下肢装具を用いた歩行トレーニングにおいてT-Supportを使用することは、従来よりもより早期に膝関節の固定を解除した運動を行うことを可能とするものであることが示唆されました。
T-Supportを使用することにより長下肢装具による膝関節の固定解除がスムーズに行えた症例を経験しました。
この報告は、未だ一定の見解が得られていない膝固定解除の時期、方法を考える上での一助になると考えます。2016神経理学療法学会 しずーか
2016 神経理学療法学会 なかたに

2016近畿学会


脳卒中の歩行トレーニングにおいて長下肢装具を使用する最大の利点は膝関節の自由度の制限による運動の難易度調整にあります。
そして能力が向上し歩行トレーニングが進みにつれて、自由度の制限をなくし関節運動を正常歩行に近付ける必要がありますがいつ、どの段階で膝継手のロックを解除するかについて一定の見解が得られていません。
そのため臨床場面では膝関節の支持性によって決定されることが多いです。

そこで当院では脳卒中患者の下肢装具療法において歩行補助具T-Supportを積極的に使用しています。
T-Supportとはスライドの図のように体幹前面と下腿前面を弾性バンドで連結された歩行補助具をいいます。
特徴として、立脚期では主に立脚中期~後期にかけて弾性バンドが張力を発揮し、膝関節伸展・足関節底屈モーメントを増加させることにより立脚期の支持性を高めます。
この特性からこれまでの我々の研究で早期の長下肢装具ロック解除が可能となることが検証されています。

T-Support使用により長下肢装具ロック解除での歩行が可能となることはそれ自体に大きな意義があります。
しかし、ロック解除での歩行因子について検証されていないため、歩行トレーニングとして効果的なのか疑問が残る部分ではないかと考えます。

そのため本研究の目的はT-Support介助と従来のループ介助での歩行因子を比較・検証することとしました。その検証結果よりT-Support介助がロック介助歩行に対して有効であったため報告します。

症例紹介です。
対象は回復期病棟入院中の初発脳卒中片麻痺患者としました。
現病歴は左視床出血を発症後,第19病日に当院入院となりました。早期より長下肢装具を作製しロック解除での歩行練習が開始となっています。

方法です。
歩行の評価は,パシフィックサプライ社製Gait Judge Systemを用い,10m直線路を歩行した際の歩行速度,歩数,立脚中期および後期における膝関節屈曲角度,推進力の指標であるTrailing Limb Angle(TLA),荷重応答期および前遊脚期に生じる足関節底屈モーメント (我々はそれぞれファーストピーク、セカンドピークと呼んでいます)を測定しました。
膝関節屈曲角度およびTLAはビデオで撮影したデータを用い、膝関節屈曲角度は装具大腿部と下腿部の外側金属支柱を基準軸に,TLAは第5中足骨頭と大転子を結んだ線と垂線がなす角度と定義し,画像解析ソフトImage Jを用いて算出しました.統計学的処理は,各条件で10歩行周期分の膝関節屈曲角度,TLA,FP,SPを対応のあるt検定を行いました。有意水準は5%としました。

結果です。
歩行速度はT-Support介助とループ介助との間に大きな差を認めませんでしたが、歩数がT-Support介助18歩、ループ介助20歩とT-Support介助でストライド長が増大しています。
FP,SPはともにT-Support介助の方が高い値を示しており、有意差を認めています。

次に膝関節屈曲角度ですが、立脚中期ではT-Support介助10.4度、ループ介助16.5度と有意差を認めました。立脚後期ではT-Support介助9.6度、ループ介助11.2度と有意差を認めませんでした。
最後にTLAは、T-Support介助10.057度、ループ介助0.456度と大きな差があり、有意差も認めています。

なぜこのようにT-Support介助で良い歩行が可能であったかはTLAの結果より考察すると見えてきます。
ループ介助では、膝折れを抑制するため立脚期では大腿部を後下方に押し付け,他動的に股・膝関節を伸展させる必要があります。股・膝関節の伸展を意識した難易度の高い介助を行うため、セラピストが患者を後方に引きつけてしまい、T-Support介助と比較しTLAが減少したと考えられました。
つまり、T-Support介助では難易度の低減によりスムーズな倒立振子の獲得が可能となり、TLAの増加、立脚中期での膝関節屈曲角度の減少が得られたと考えられます。

T-Support介助によりTLAが増加したアライメントを作り出したことで、セカンドピークおよび膝関節伸展モーメントも増加しスイングが補助されます。その結果、FP値が向上しヒールロッカー機能が賦活されたと考えられます。

T-Support介助はループ介助と比較し,歩数・立脚期における膝関節屈曲角度・TLA・足関節底屈モーメントにおいて高値を示しました。
T-Support介助はロッカー機能を賦活し,スムーズな倒立振子の獲得を容易とする介助方法であることが示唆されました.

全国2017


脳卒中片麻痺者の歩行トレーニングにおいて長下肢装具を使用する機会が増えましたが、その作成基準やカットダウンの基準についてはまだ統一した見解が得られていません。
理由の一つに、長下肢装具のような治療用装具は、理学療法士の介助とセットで使用されることが多いため、我々がトレーニングのなかで上手く使えたかどうか、により、治療結果が大きく違ってくることが影響しているのではないでしょうか?
例えば、重度の運動麻痺や筋力低下を呈している症例でも、セラピストの介助技術が高い場合には、早期にカットダウンができる、高い歩行能力を獲得する、ということはみなさんも日常的に経験していると思います。
ここが、下肢装具療法に関する検証の最も難しいところだと思います。

私は、装具療法に関する臨床判断の正確さを高めるためには、3つの議論が必要だと考えています。
1つめは、患者さんの身体機能についての議論。具体的にはどのような身体状況であればどんな装具を使用すべきかについての検証。
そして2つ目が、セラピストの介助技術についての議論。具体的には上手な介助歩行とな何か、治療者の身体技法についての検証。
そして3つ目が、下肢装具など手持ちの道具をいかに上手く使いこなすか、そのための工夫についての検証です。
この3つについてしっかり考えることで、下肢装具療法の治療効果を高めることができると考えています。
今から私が報告するのは、この介助歩行における、我々の工夫についてのお話です。

今回私は、長下肢装具を用いて膝関節の固定が必要だと担当療法士が判断して歩行練習をしている症例において、早めに膝関節の固定解除の評価をしました。
その際、徒手的に装具を引っ張った場合と、歩行補助具T-Supportを使用した場合とで、条件を変えて、歩行動作がどう変わるかを検証しました。

対象は、初発脳卒中片麻痺患者10名で、発症後の日数は平均61.9日でした。
ステージはⅡが5名、Ⅲが4名、Ⅳが1名と、比較的重度の麻痺を呈していました。
いずれもが本人用の長下肢装具を用い、膝関節を固定した歩行トレーニングを行っていました。

この10名において、
長下肢装具で膝関節を固定した場合と、固定を解除して装具を徒手的に牽引した場合と、同様に固定を解除してT-Supportで牽引した場合の、荷重応答期の足関節底屈制動モーメントおよび麻痺側と非麻痺側の立脚時間の対称性を比較しました。

荷重応答期の足関節底屈制動モーメントは、ヒールロッカーへの影響を見ることができます。
立脚対称性、これは非麻痺側立脚時間を麻痺側立脚時間で割った値で、この値が1に近ければ立脚時間に差がないことを表すため、各条件における下肢の支持性への影響を見ることができます。
これらの歩行因子を3群間で比較しました。

結果です。
足関節底屈制動モーメントは、膝固定時11.7Nm、徒手牽引時5.5Nm、T-Support使用時7.8Nmで、膝関節の固定時が、他の2群に比べ有意に高く、さらにT-Support使用時は徒手牽引時に比べ有意に高い結果となりました。
立脚時間の左右対称性は、膝固定時1.18、徒手牽引時1.43、T-Support使用時1.20と、徒手牽引時が他の2群に比べ有意に高く、左右対称性が低下していました。
このことから、早期の膝固定解除下では、徒手牽引に比べ、T-Supportを使用した際に、より強く踏み込み、立脚時間の左右対称性も向上する傾向にあることがわかりました。
では徒手牽引とT-Supportによる牽引でなぜこのような違いが生じたのかを考えます。

この写真は、被験者の1人の、徒手とT-Supportでの立脚時のアライメントの比較です。
徒手牽引では、大腿カフにとりつけた牽引用のループを引っ張っています。
このループを引っ張るという介助は、技術的に2つ、難しいポイントがあります。
一つは、立脚初期で、接地時の膝関節伸展を促すことが難しく、膝屈曲位での初期接地になりやすいこと。
このため足関節底屈制動モーメントが低下しやすくなります。
もう一つが、立脚期後半に股関節伸展・膝関節伸展の運動を誘導することが困難であるということ。
このため立脚後期が短縮し、時間的対称性が低下しやすくなります。
それに対し、T-Supportは、ゴムバンドが股関節と膝関節をまたぐために、立脚初期と立脚後期に膝関節の伸展を促す効果があります。
この影響により、徒手牽引に比べ、足関節底屈制動モーメント、時間的対称性ともに有意な向上が見られたと考えます。

まとめです。
今回の調査を通して明らかになったことは2つあります。
一つは、介助歩行における早期の膝固定解除の評価において、T-Supportの使用は徒手的な牽引よりも利点がある、ということ。
もう一つが、膝関節を固定して歩行練習をしている症例では、膝関節を固定した方が良いことがありそうだ、ということです。
ただしここで留意すべきは、膝を固定した方がよいのは、今回検証した歩行因子については、ということです。
これは本研究の限界に繋がると思うのですが、

こちらは先ほどの症例の、ゲイトジャッジの画面です。
緑のグラフは下腿三頭筋の筋電図です。
膝関節の固定時には、初期接地時に逸脱したタイミングで収縮しているのに対し、T-Support使用時は正常に近いタイミングで収縮していることから、強い踏み込みを促すには膝を固定し、筋収縮を促す意味では固定を解除するほうが良いかもしれません。
(アニメーション)
さらに同じ日に、より上手なセラピスト、これは言うまでもなく私のことですが、がT-Supportを使うと、さらに強く、適切なタイミングでの筋活動が促されています。
冒頭でも少し話しましたが、治療用装具はセラピストの介助下で使用されることが多いため、理学療法士がどのような目的をもって、どのような治療効果を引き出すかによって、結果が大きく異なります。
ですから、今後長下肢装具の適応を検証するには、患者さんの身体機能に加え、セラピストの介助技術、あるいは使ううえでの工夫などを含めた、より包括的な評価を行う必要があると、今回の検証を通して学びました。
2017 近畿学会


脳卒中治療ガイドライン2015では、早期からの歩行練習が勧められています。
重度の運動麻痺を呈した患者のリハビリテーションでは
長下肢装具を使用する機会が多く、当院でも積極的に長下肢装具を使用しています。
先行研究において、長下肢装具の使用により下腿三頭筋では、随意的な筋力発揮よりも歩行時に強い筋収縮が得られると報告されています。
脳卒中患者の歩行練習において、歩行時に適切なタイミングで筋収縮を発揮させ、患者の身体機能を最大限に引き出すことが重要であると考えます。

しかし、臨床場面で長下肢装具を用いた歩行練習時、スムーズに歩行しているように見えても適切な筋活動が得られにくい症例を多く経験します。

当院では、脳卒中片麻痺患者に対する歩行練習においてT-Supportを使用しています。
T-Supportとは、体幹部分をサポートするベストとベスト前面から下腿カフへ配置した弾性バンドで構成されています。
このバンドは立脚後期から前遊脚期にかけて最も伸長される構造となっており、長下肢装具膝継手ロック解除歩行では、膝関節伸展モーメントを補助することができます。

臨床での歩行練習において、長下肢装具を使用する目的は膝関節の自由度の制限による課題難易度の調整にあるとされています。
長下肢装具を用いた歩行練習では、一般的に患者の歩行能力に合わせて膝継手による固定を変化させ、カットダウンへと移行していきます。
重度の運動麻痺を呈した患者において、長下肢装具の膝継手を解除すると膝折れを認める症例を多く経験します。
これは、膝関節の自由度が増大し課題難易度が上がることで生じると考えられます。
T-Supportは膝継手ロック時とロック解除時の中間的な難易度調整ができ、カットダウンを進める上で、段階的な歩行練習が可能となります。

今回、重度脳卒中患者に対してT-Supportを併用し早期に長下肢装具膝継手ロック解除にて歩行を行うことで、筋活動に及ぼす影響について検証しました。

対象は、60歳代女性で左被殻から放線冠領域にかけての初発脳卒中片麻痺患者1症例としました。
Brunnstrom Recovery Stageは下肢Ⅰであり、感覚は重度鈍麻レベルでした。
長下肢装具を用いた歩行では、患者は後方の介助者にもたれかかる様子を認めていました。

方法は、長下肢装具ロック下での補助ループ介助と長下肢装具ロック解除下でのT-Support介助の2条件としました。

評価項目は、10m歩行速度・歩数・右立脚期の腓腹筋活動・右足関節最大背屈角度としました。
測定には、パシフィックサプライ社製 Gait Judge Systemを使用しました。
筋電図解析についてはスライドをご参照ください。

結果です。
青色が長下肢装具ロック下、(オレンジ色)はロック解除下での数値を示しています。
歩行速度・歩数については差は見られませんでした。

麻痺側MStからTStでの右腓腹筋の筋活動と右足関節最大背屈角度の結果です。
長下肢装具ロック解除歩行では、筋活動の増大、足関節背屈角度の増大を認めました。

次に、歩行周期別の右腓腹筋の活動です。右の図は筋活動の波形であり、横軸は左から右にかけて、麻痺側ICから順に歩行周期を示しています。
長下肢装具ロック歩行では、LRで一番強く腓腹筋が活動し、MStからTStでは活動が低下しています。

一方、ロック解除歩行では、麻痺側MSt~TStにかけて腓腹筋の筋活動増加を認めました。

考察です。
長下肢装具のメリットは、膝継手をロックすることで関節の自由度の制限による課題難易度の調整が可能であり、特に股関節周囲などの中枢部の筋力強化を目的で使用します。
しかし、ロックをすることで下肢の支持性が補償され、適切な筋活動が働かなくても歩行が可能となることや、患者は装具や介助者に依存しやすいといったデメリットも生じると考えられます。
先行研究では長下肢装具から短下肢装具へ移行する際に膝折れが生じる患者において、長下肢装具での歩行時、荷重応答期であるLRにおいて股関節屈曲モーメントが発生していたと報告しています。健常者の歩行においてLRでは股関節伸展モーメントが働き、大腿を後方へ引っ張り膝関節を伸展させる作用を持ちます。このことから、患者は膝関節伸展位保持を自らの筋活動でなく装具に依存することで運動学習が進まなかった可能性があるとされています。
本症例においても、長下肢装具での歩行練習過程で患者は装具や介助に依存傾向であり後方へもたれる様子や膝継手ロックを解除すると麻痺側MStからTStで膝折れを認めました。

一方、ロック解除歩行では、麻痺側MSt~TStにかけて腓腹筋の筋活動増加を認めました。

これらは装具や介助に依存せず、前方への重心移動および前足部への荷重をおこなうことで腓腹筋の筋活動が増加したと考えます。
重度脳卒中患者において、T-Supportを併用した膝継手ロック解除歩行を行うことで、より患者の身体機能を最大限に引き出すことが可能となりました。

まとめです。
本症例は、装具や介助に依存的であり、長下肢装具での歩行時に後方の介助者へもたれかかる様子を認めました。
長下肢装具膝継手を解除するにあたり、段階的に難易度を調整することで効果的な筋活動を促すことが可能であると示唆されました。
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プロフィール
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Tomoki Nakatani - 所在地
- 兵庫県宝塚市にある、宝塚リハビリテーション病院に勤めています。
- 職業
- 理学療法士です。
Certificated physical therapist in Neurology
- 自己紹介
- I am interested in physiotherapy for improvement of gait ability of a patient with stroke hemiplegia.
And I'm a member of Japan Physical Therapy Association stroke guideline crew.
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