3.T-Support装用時の筋電図変化についての研究
T-Supportを患者さんの脚に装着すると、いろんな効果があるんです。
その中でも面白いのが、筋電図の変化。
当院ではパシフィックサプライ社製のゲイトジャッジシステムの筋電図を使ってます。
これで患者さんの主に下腿の筋電図を評価することが多いんですけどね。
特に強く感じるのは、T-Supportを装用すると、患者さんの下腿三頭筋の収縮の強さとか、タイミングががらりと変化する、ってこと。
これについて、今まで何本か発表してきてるんです。
それをちょっとご紹介。
3-1.歩行補助具T-Support装用が回復期脳卒中片麻痺患者の下腿筋群の同時収縮に及ぼす影響
これは2016年2月に大阪で開催された、『第5回脳血管障害への下肢装具カンファレンス2016』の大阪会場で、宝塚リハビリテーション病院のウメモトくんが発表しました。
…あ、ちなみにウメモトくんはこれまで何度か学会発表をしてるんですが、彼は極度の緊張しぃなのです。
質疑応答がとっても苦手で、質問されたらフリーズする、というのが彼の得意技なのです。
この写真は発表前。
極度の緊張です。
そのウメモトくんの緊張感を感じながら、彼のパワポのスライドと読み原稿をそのまんま載せるのでまぁ読んでみてください。
非常に興味深い内容です。

はじめに。
円滑な関節運動を遂行する上で、主動作筋と拮抗筋の協調した収縮が重要であるとされています。
しかし脳卒中片麻痺患者では立位・歩行動作時に下肢筋群の同時収縮が関節運動を阻害し、歩行能力低下の要因となると考えられています。

当院では回復期脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニングにおいて歩行補助具T-Supportを使用する機会が多くあります。
これまでの検証により、T-Supportの装用は装着下肢の立脚後期股関節屈曲モーメントおよび足関節底屈モーメントを増大させ、歩行速度を向上させる効果があることが明らかになっています。
しかしT-Support装用時の麻痺側下肢筋活動の変化については明らかになっていません。
今回運動麻痺は軽度で下肢装具を使用せず自立歩行が可能ですが、麻痺側下腿筋群の同時収縮の影響により足尖部のクリアランスに問題の見られた症例に対し、T-Supportを装用したところ、同時収縮の改善が見られました。
本症例の歩行時の筋活動および歩行能力の即時的・継時的変化について、考察を交えここに報告します。

対象です。
対象は左被殻出血により右片麻痺を呈した70歳代の男性です。
第14病日の身体機能はSIASの下肢テストが12/15、Brunnstrom Stageは下肢Ⅴであり、麻痺側母趾の表在深部複合感覚に極軽度の感覚障害を認めました。歩行動作は、下肢装具は使用せずフリーハンド歩行が可能でしたが、麻痺側遊脚初期~中期にかけて足尖部のクリアランスの低下による躓きを認め、不安定さを認めました。また、T-Support装用によりクリアランスは向上し安定性の向上が認められました。
方法です。
まずT-Supportの弾性バンドはベルクロで下肢装具の下腿カフに巻く構造のため、本症例では下腿に専用のサポーターを装用し、そこに弾性バンドを巻きつけて下腿を牽引しました。
T-Support装用による歩行動作への影響を検証するため、10m快適歩行での歩行速度とステップ数、パシフィックサプライ社製Gait Judge Systemを使用し、麻痺側前脛骨筋と腓腹筋の筋電図計測を実施しました。
評価は第16病日および第23病日に実施しました。

結果です。
まず初回評価時のT-Support未装用及び装用時の動画をご覧下さい。
(動画一つ約15秒×各2回)
スライドの筋電図波形は、緑色が腓腹筋、青色が前脛骨筋を示しています。
第16病日である初回評価時、T-Support非装用時の10m快適歩行速度は13.40秒、ステップ数は23歩でした。
T-Support装用時は10.81秒、ステップ数は19歩と装用により即時的な改善が認められました。
筋電図評価においてもT-Support未装用時に認めた立脚中期から後期にかけて青色で示す前脛骨筋の持続的な収縮が、装用時に抑制されました。

次に第23病日、1週間後の非装用時の結果です。
筋電図を見ると、1週間前T-Support未装用時に見られた立脚中期から後期にかけての前脛骨筋の持続的な収縮が抑制されていることがわかります。
10m快適歩行速度、ステップ数ともにT-Support非装用・装用時のデータはほぼ同様のものとなっています。

非装用時の歩行能力の変化を比較します。
T-Support非装用時の10m快適歩行速度は13.40秒から7.97秒へ、ステップ数は23歩から19歩へと大きく改善していることが分かります。
また立脚中期から後期にかけての前脛骨筋の持続的な収縮が抑制されていることもわかります。
考察です。
第16病日の筋電図波形を見ると、歩行周期全般を通して前脛骨筋の持続的な収縮を示しており、腓腹筋 の収縮時にも活動していることがわかります。
この同時収縮により下腿後面筋群の機能が低下し、遊脚初期の膝関節屈曲・足関節底屈が阻害された結果、クリアランス低下に繋がったと思われます。
同日のT-Support装用時の筋電図波形を見ると、腓腹筋収縮時の前脛骨筋の活動が抑制されており、これがT-Support装用の効果であると推察されます。
先行研究では歩行時の股関節伸展運動と適切な荷重感覚が入力されることで、歩行周期に同調したリズミカルな筋活動が促されるとされています。
これまでの我々の検証では、歩行時にT-Supportを装用することで、片麻痺患者では装着下肢の立脚後期の股関節伸展角度、足関節背屈角度が増大することが明らかになっています。
本症例では、T-Supportの装用が股関節伸展角度を増大させ、前足部への適切な荷重感覚を入力させたことで、立脚中期~後期にかけての前脛骨筋筋活動を即時的に抑制したものと考えました。
また筋電図波形の変化は第23病日のT-Support未装用時にも見られており、T-Supportの効果には持続性があることも示唆されました。

まとめです。
今回歩行時に立脚中期~後期にかけて前脛骨筋の持続的収縮の認める症例にT-Supportを装用しました。
その結果前脛骨筋の持続的収縮が即時的に抑制されました。
また、効果は即時的だけでなく継時的に見られました。
今回の検証を通し、T-Supportは極軽度の脳卒中片麻痺患者においても麻痺側下肢筋群に歩行周期に同調した筋活動を促し、歩行能力を向上させる効果があることが明らかとなったと考えます。
以上で発表を終わります。
ご静聴ありがとうございました。
(9分1秒/10分)
…ってことで。
ここでご紹介したように、運動麻痺が軽度の患者さんでも、下腿三頭筋の筋電図を測定してみると、遊脚期にもずっと筋収縮が持続している場合が多いわけです。
こういったケースで、T-Supportを比較的緩めに装着すると、効きます。
あ、ここでいう緩めっていうのは、装着下肢の股関節屈曲伸展中官位くらいの状態で、弾性バンドがプランプラン、くらいのニュアンスです。
で、立脚後期に股関節がしっかり伸展した際に弾性バンドがちょっとテンションかかる、くらいの感じ。
これくらいで、ガストロの筋収縮のタイミングががらりと変化する方が結構居られるわけです。
その理由は…現在考え中なんですけどね。

あ、ちなみに、これ、脳血管障害への下肢装具カンファレンス2015大阪大会の座長や発表者の記念写真。
注目すべきは…やはり、後列右から4人目のトモッキーと、その左のヒロニキの2人の表情でしょうか。
3-2.あ、これは筋電図を処理したわけじゃないけど、参考までに…
これは2015年、神戸でのリハビリテーション・ケア合同研究大会で発表した内容。


このセッションはこの後、4本連続で、我々が開発したT-Supportという歩行補助具を使った臨床でのちょっとした工夫についての発表です。
まず、T-Supportとは一体何なのか、というお話から始めたいとおもいます。
当院では多くの脳卒中片麻痺患者さんの歩行トレーニングにおいて、積極的に下肢装具を使用しています。
T-Supportは、下肢装具と体幹部分をゴムバンドで連結することで、患者さんがもっと歩きやすくすることを目的として、2011年より開発を進めて参りました。

2011年より開発を進めて参りまして、様々な試作品による効果検証を行ってきました。
ようやく納得できるものが出来上がりまして、近日中に販売が開始される予定です。
ここで商品名のT-Supportの意味を説明しておきたいと思います。

T-SupportのTには3つの意味が隠されているんですね。
一つは、私の職場である宝塚リハビリテーション病院のT。
もう一つは、体幹、トランクのT、ですね。
T-Supportは基本的に体幹部分を支持する機能がありますので、それを表しています。
で、3つ目が、私、中谷知生と申しますが、そのトモキんのT、ですね。
これ、まぁどうでもいい豆知識ですね。

T-Supportの効果は大きく分けると2つあります。
一つは、スイングするときに、楽に脚を出せるということ。
もう一つは、スタンスの際に、脚の踏ん張りが効くということです。

今から私が紹介する症例は、T-Supportを装着することで楽に脚が出せるようになった、というお話です。

症例は、70歳代の男性で、右片麻痺ブルンストロームステージは3で、麻痺側の下腿後面の筋緊張の更新が著明でモデファイドアシュワーススケールは3でした。
このため、麻痺側下肢のスイング時に足関節が底屈する傾向にありました。
本症例の歩行動作時に、T-Supportを使用した場合に、どのような運動の変化が起こるかを検証しました。
計測には川村義肢社製ゲイトジャッジシステムを用い、歩行中の足関節運動をチェックしました。

ゲイトジャッジシステムの特徴は、足関節が底屈位になった際に、ゲイトソリューションの油圧ユニットに発生する底屈トルク値を計測することが可能であるという点です。
トルク値はこのグラフで表示されます。
本来、スイング動作時の足関節は底屈位にならないため、スイング時にトルクが記録されるということは、スイング時に底屈方向の運動が生じていることを表しJます。
ではまず杖歩行時の様子をご覧いただきます。

この患者さんに、T-Supportを装着していただきます。
すると、遊脚期の底屈トルクが減少します。

10m歩行時のすべての歩行周期における、遊脚期の最大底屈トルク値の平均値を算出しました。
未使用時は3.9Nm、使用時は2.1Nmと、大幅な減少が認められました。

なぜ底屈トルク値が減少したのかを考えます。
本症例は、比較的重度の運動麻痺を呈しており、麻痺側下肢のスイングの際に過剰な努力が見られていました。
その結果、スイング時に収縮する必要のない下腿の後面の筋群が収縮していました。
T-Supportはゴムバンドで楽にスイングできるように手伝ってくれます。
本症例の底屈トルク値の減少は、T-Supportの装着の結果、患者さんが楽にスイングできるようになったということを表したものだと考えます。

…うん、ごめん、筋電図に関しては何にも触れてないんだけどね。
でもスライドで表示してる水色の筋電図波形、あれがガストロの筋電なのね。
それがT-Supportを使ってあげると、全体的に減少してるでしょ?
こういう変化、多いんですよ。
やっぱり患者さんにリラックスして歩いてもらうということがとっても大事だと思うんだ。
じゃぁ次いってみよう。
3-3.これは初めて、ちゃんと筋電図のデータを処理した発表ですよ。
第12回の日本神経理学療法学会学術集会でコマツさんが発表したやつです。どうぞ。


T-Supportとは、下肢装具を弾性バンドが牽引することで、下肢スイングを補助する歩行補助具です。主に中枢神経疾患で麻痺側下肢スイングの低下した症例において使用する機会が多くあります。
また下肢の支持性が低下した症例においては、立脚期での膝関節の安定性を向上させる効果も確認されています。
今回、立脚後期に膝関節が過度に屈曲し不安定性を認める症例に対して、T-Supportを使用することで立脚後期の歩行因子にどのような影響を与えるかを検証しましたので報告致します。

対象は、中心性頚髄損傷により四肢不全麻痺を呈した70歳代男性であり、Frankel分類はCでした。下肢の麻痺は左側で優位であり、また左右ともに遠位筋で特に筋力低下を認めました。
歩行は抑速ブレーキ機能付き歩行器を使用し軽介助レベルで可能でしたが、左立脚後期で過度に膝関節が屈曲するため不安定性を認めていました。

方法です。症例の左下肢に足継手にGait Solutionを備えた金属支柱付AFO・右下肢にSHBを装着し、評価は麻痺の強い左下肢で行いました。
評価項目は、10m歩行における所要時間とステップ数、立脚後期における腓腹筋の筋活動量、および前遊脚期における足関節底屈トルク値としました。
評価は即時的効果の検証として、歩行器歩行・フリーハンド介助歩行、T-Supportを装着したフリーハンド介助歩行の3条件における歩行因子を比較しました。
また経時的効果の検証として、T-Supportでの歩行練習を継続的に実施し、歩行器歩行時の歩行因子の変化を比較しました。

解析方法はスライドをご参照ください。
なお、本症例において立脚後期は足関節が最大底屈位から最大背屈位となる区間と定義し、両者ともに歩容の安定した5歩行周期分のデータを算出しました。

結果の前にGJの説明を致します。
画像の右側、いちばん上の緑の波形が足関節底屈トルク値を表しています。健常歩行では1歩行周期において2回、荷重応答期と前遊脚期に底屈トルクが発生します。
中央の白の波形が足関節角度を表しており、基線より上が背屈、基線より下が底屈位となっていることを示します。
一番下の水色の波形は腓腹筋の筋電図を表しています。High Passおよび移動平均処理後の波形になります。

結果に移ります。まず歩行器歩行です。
緑の波形をご覧ください。荷重応答期での底屈トルクは認められていますが、前遊脚期においては底屈トルクが認められていません。
下の水色の波形をご覧ください。黄色の点線で区切った部分が立脚後期に相当します。立脚後期における腓腹筋の筋活動量は14.5μvでした。

次にフリーハンド歩行です。
歩行器歩行と同様に、SPは認められません。
立脚後期における腓腹筋の筋活動量は15.5μvでした。

T-Support歩行です。
前遊脚期において底屈トルク値が発生しているのがわかります。
腓腹筋の筋活動量は23.4μvでした。

3つのグラフを比較します。
左が歩行器歩行、中央がフリーハンド歩行、右がT-Support歩行です。
T-Support歩行においてSPが出現しており、立脚後期における腓腹筋の筋活動量が増加しています。

経時的評価に移ります。こちらは初回評価時より7日経過時点での歩行器です。
初回評価時と同様SPは認められていません。
立脚後期における腓腹筋の筋活動量は11.9μvです。

23日経過時点の歩行器歩行です。
わずかではありますが、SPが認められています。
立脚後期における腓腹筋の筋活動量は36.7μvでした。

3つのグラフを比較します。
T-Support歩行練習を開始して23日経過時点でSPが認められました。
また立脚後期における腓腹筋の筋活動量に増加が認められます。

考察です。まず立脚期に期待されるT-Supportの効果について説明します。
T-Supportは装着により股関節屈曲モーメントを増大させるため、立脚後期の股関節伸展角度の増大が期待できます。
それにより相対的に足関節が背屈位となり、Stretch Shortening Cycle(以下SSC)の作用により足関節底屈モーメントが増大すると考えられています。
また同時に立脚後期において膝関節伸展モーメントが増大するため、膝関節の安定性向上に効果があると考えています。

本症例は立脚後期に過度に膝関節が屈曲する傾向がありました。
立脚後期において足関節背屈位を示していましたが、膝関節が屈曲していたことによりStretch Shortening Cycleが利用できなかったことが考えられます。
T-Supportを装着することで立脚後期での膝関節伸展を補助し、腓腹筋の筋活動量を増強させる運動が可能となったことで、Stretch Shortening Cycleが利用でき、SPが出現したと考えられます。
さらにT-Supportを使用した歩行トレーニングを継続することで、T-Support未装着下での歩行器歩行においても、装着時と同様の筋活動が得られ、SPが出現したと考えられます。

まとめはスライドをご参照ください。
…T-Supportを使用することで、下腿三頭筋はいろいろ面白い変化を示すんです。
最初のウメモトくんの発表は、遊脚期にお休みできるようになったという変化。
3つめのコマツさんの発表は、立脚後期に筋の活動量が向上したという変化。
2016臨床歩行分析研究会定例会 シズーカ


T-Supportとは、股関節前面に取り付けられた弾性バンドを下肢装具に連結させ、その張力により股関節屈曲を補助する歩行補助具です。
当院では、回復期脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニングにT-Supportを使用する機会が多くみられます。
これまでの検証によって、T-Support装用により立脚後期の股関節屈曲モーメントおよび足関節底屈モーメントを増大させ、歩行速度の向上やステップ数の増加など歩行能力を向上させる効果がある事が明らかになっています。
今回、歩行トレーニングにT-Supportを継続して利用した症例を担当しました。
退院時に下肢装具を使用せず自立歩行が可能となりましたが、下腿三頭筋の過剰収縮の影響により麻痺側遊脚初期から中期にかけて足尖の引っ掛かりが認められていました。
そこで、裸足歩行時にもT-Supportを使用したところ足尖の引っ掛かりは軽減し、立脚期の安定性にも向上がみられました。
本症例の歩行時の筋活動および歩行の即時的変化について、考察を交えて報告致します。

対象は多発性脳梗塞(右視床・橋BAD)により右片麻痺を呈した70歳代の男性です。
第151病日の身体機能は下肢Brunnstrom Recovery StageⅤで、筋緊張は下腿三頭筋に軽度亢進を認めModified Ashworth Scaleは1でした。
歩行は、下肢装具を使用せずフリーハンド歩行が可能でしたが、麻痺側遊脚期初期から中期にかけてクリアランスの低下による足尖の引っ掛かりがみられていました。

方法です。
本来、上の写真のようにT-Supportは下肢装具のベルクロ部分に弾性バンドを巻いて使用する構造になります。
本症例は下肢装具を使用せず歩行トレーニングを行っていたため、下の写真のように下腿部分に簡易ベルトを装用し、そこに弾性バンドを巻いて実施しました。
評価項目は、10m歩行における所要時間とステップ数、立脚後期における腓腹筋の筋活動量としました。

筋電図データの処理・解析方法につきましては、スライドを参照下さい。
なお、本症例において立脚後期は足関節が最大底屈位から最大背屈位となる区間と定義し、両者ともに歩容の安定した5歩行周期分のデータを算出しました。

まず、一番下の水色の波形は腓腹筋の筋電図を表しています。
High Passおよび移動平均処理後の波形になります。
結果に移ります。
まず裸足歩行になります。全歩行周期を通して、腓腹筋の収縮がみられているのが分かります。
遊脚期における腓腹筋の筋活動量は271.7mVでした。

次にゲイトソリューション付き短下肢装具装用時です。
裸足歩行時には全歩行周期を通して腓腹筋の収縮がみられていましたが、短下肢装具を装用する事によって、遊脚期においては腓腹筋の休息がみられています。
立脚後期で腓腹筋の活動が最もみられているのが分かります。
遊脚期における腓腹筋の筋活動量は91.7mVでした。

T-Supportを装用した歩行です。
遊脚期における腓腹筋の筋活動量は35.1mVでした。

以上のグラフを比較します。
左が裸足歩行時、中央が短下肢装具装用時、T-Support装用時になります。
短下肢装具装用時とT-Support装用時の波形においては、立脚後期で腓腹筋の収縮がみられており、遊脚期では腓腹筋の休息がみられています。
歩行速度やステップ数については大きな変化は認めませんでした。

考察です。
正常歩行における下腿三頭筋の筋活動は立脚後期でピークを迎え、遊脚初期の段階ではその活動が終了するとされています。
本症例は裸足歩行時に、全歩行周期を通して腓腹筋の持続的な収縮がみられていました。
その結果、本来底背屈中間位であるとされる足関節が底屈方向に運動し、クリアランスの低下に繋がったと考えました。

ここで、短下肢、麻痺側下肢スイング時の過剰な努力が抑制出来た結果、遊脚期において腓腹筋の休息がみられたと考えます。
装具装用時およびT-Support装用時の筋活動を比較してご覧下さい。
双方とも、下腿三頭筋の逸脱したタイミングの抑制が可能となっている事が分かります。
本症例はゲイトソリューション付き短下肢装具を装用していました。
油圧により、足関節底屈方向の運動を制御した事によって遊脚期のクリアランス向上に繋がったのではないかと考えました。
一方で、T-Support装用については先行研究により、 T-Supportは装用する事で股関節屈曲モーメントを増大させるため、立脚後期の股関節伸展角度の増大が期待出来るとされています。
また同時に立脚後期において膝関節伸展モーメントが増大するため、膝関節の安定性向上に効果があると考えています。
T-Supportを装用する事で、股関節屈曲モーメントが補助され、クリアランスの向上に繋がったと考えます。
その結果、麻痺側下肢をスイングする際の過剰努力が減少し、遊脚期における腓腹筋の休息に繋がったと考えました。

まとめはスライドをご参照下さい。
2017ぜんこくがっかい こまつさん

2017 WCPT

Effect of improved walking speed using a walking aid to support hip joint upon lower limbs of hemiparetic stroke patients
Background
Improving walking speed of patients with hemiparetic stroke helps prolong their continuous walking distance, saves energy cost, and subsequently affects their functional outcome afterwards. Previous studies clarified that hemiparetic stroke patients could improve their continuous walking distance and energy cost significantly by doing walking training at a high speed. At our hospital, we often use T-Support (Kawamura Gishi, Japan) as a walking aid to improve walking speed. T-Support can assist the motion of the flexion of the hip joint, resulting in the improvement of walking speed. However, many functional changes remain unclear in the T-Support-equipped lower limb.
Purpose
The purpose of this study was to examine the changes of the lower limb function of hemiparetic stroke patients when they wear T-Support and do training with improved walking speed.
Methods
Eight patients with primary hemiparetic stroke who were able to walk on their own were enrolled (average age: 71.1±9.6 years). The Brunnstrom Recovery Stage of lower limb of the subjects was III in 3 patients, IV in 3 patients, V in one patient, and VI in one patient. Of them, 4 patients used a T-shaped stick, 3 patients did not need it, and one patient used a four-pint walking stick. Factors of walking to be measured were walking speed and the number of steps walked during a 10-meter walk when they did/didn’t wear T-Support, as well as the moment of ankle plantar flexion during the late stance phase and the muscle activity of calf muscles. An electrode was attached to the paralysis side of the lateral head of gastrocnemius muscle with sampling frequency at 1000Hz to calculate the muscle activity during the late stance phase by normalizing at the average value of a gait cycle. Wilcoxon matched-pairs signed-ranks test was used for statistical analysis and a significant level was set at 5%.
Results
Factors of walking at the time when the patients did/didn’t wear T-Support were determined as follows: walking speeds were 35.7/32.4m/min; the numbers of steps walked were 23.6/25.4 steps; the moment of ankle plantar flexion was 2.4/1.7Nm; and the muscle activity of calf muscles was 165.1/148.5%. A statistical significance was observed in all these items.
Conclusion
Previous studies clarified that improvement of walking speed in the healthy adults depends on the moment of ankle plantar flexion and the muscle activity of plantar flexor during the late stance phase. In this study, it was suggested that even for the hemiparetic stroke patients, improving walking speed wearing T-Support can increase the moment of ankle plantar flexion and the muscle activity of calf muscles during the late stance phase and improve the lower limb function.
Implications
In recent years, there is an increasing chance of using large-scale devices for walking training of hemiparetic stroke patients. T-Support needs an elastic band only as power source, so it can be used for various situations. In the future, it is expected that T-Support can be used for more walking trainings and contribute to the improvement of walking ability of hemiplegia patients.
2017義肢装具学会


発表にあたり開示すべきCOI関係にある企業はありません。

脳卒中片麻痺者の歩行トレーニングにおいて、アシスト機能を有する歩行支援機を使用する機会が増えてきました。
歩行支援機の動力源にはモーターやバネなどに加え、弾性バンドを用いたものがあり、歩行補助具T-Supportもそのひとつです。
我々はこれまで、T-Supportの使用が脳卒中片麻痺者の歩行因子に及ぼす影響に関する調査を行ってきました。
その多くは症例報告が中心であり、個々の症例において歩行速度の向上や、ストライドの増大などの効果を報告してきました。
今回は症例数を増やし、T-Support装着による片麻痺者の歩行因子の変化の傾向を調べてみました。
このことで、T-Supportの臨床での使用目的が明確になり、今後のトレーニング方法選択の一助となると思われます。
なおT-Supportは長下肢装具を用いた重介助でのトレーニング時から、下肢装具を使用しない自力歩行まで、幅広い状況で効果がありますが、本研究では、自力歩行可能な片麻痺者の歩行因子に及ぼす影響を調査しました。

対象は回復期病棟入院中の片麻痺者15名で、取り込み基準は初発脳卒中片麻痺者であること、自力歩行が可能であること、下肢に整形外科疾患の既往がないこと、としました。
対象者の属性は、平均年齢70.9歳。
下肢BRSはⅢが4名、Ⅳが4名、Ⅴが5名、Ⅵが2名でした。
歩行動作はフリーハンド歩行が9名、T字杖使用者が5名、四点杖使用者が1名でした。

測定は、T-Support未装着・装着下で10m歩行動作を計測し、以下の8つの項目、
歩行速度、歩幅、荷重応答期の足関節最大底屈角度、立脚終期の最大背屈角度、立脚期前半および後半の腓腹筋活動量、立脚期前半および後半の足関節底屈モーメントについて比較しました。
これらの因子の変化を通して、T-Supportが足関節のロッカー機能にどのような影響を及ぼすか、が明らかになると考えました。

結果です。
装着により、歩行速度は有意に向上しました。
また歩幅は有意に増大しました。

足関節角度は、荷重応答期には有意差がなく、立脚終期の最大背屈角度が有意に減少しました。

腓腹筋の活動量は、初期接地から立脚中期には有意差が無く、立脚終期に有意な増大を認めました。

足関節の底屈制動モーメントは、初期接地から立脚中期に有意差がなく、立脚終期に有意な増大を認めました。

結果をまとめます。
TーSupportの装着により、歩行速度の増大、歩幅が延長し、その際立脚期後半に腓腹筋活動量の増大と、足関節底屈モーメントの増大が認められました。
このことから、脳卒中片麻痺者においてTーSupportを装着することは、立脚期後半の足関節底屈運動を強めることで麻痺側下肢の推進力を増大させる効果である、と考えられました。
なぜこのような効果があるのかを考えてみます。

健常歩行の立脚期後半では、反対側の足をより前方に、安定して接地させるために、股関節を伸展、足関節を背屈しながら、重心の落下にゆるやかにブレーキをかける必要があります。
これを可能としているのが、股関節では腸腰筋の遠心性収縮、足関節では下腿三頭筋の遠心性収縮です。
腸腰筋と下腿三頭筋は互いに補完しあいながら、立脚後半のアライメント保持に貢献しています。
多くの片麻痺者では筋力低下により、立脚中期から終期にかけて、これら二つの筋のブレーキ作用が効きにくくなっています。
そのため、

ご覧いただいている動画のように、比較的軽度の運動麻痺を呈した症例においても、立脚後期の股関節伸展・足関節背屈位保持が困難となり、膝関節が屈曲位となります。
このような姿勢の崩れに対し、我々はどのような治療手段を持ち合わせているでしょうか?
先ほどのスライドでも提示しましたが、私はまず、腸腰筋が発揮している、股関節の屈曲モーメントによる緩やかな股関節伸展運動をすることが重要であると考えています。
TーSupportは、股関節前面に弾性バンドを配置し、膝関節前面をまたいで短下肢装具の下腿カフに停止する構造のため、立脚期後半の腸腰筋によるブレーキ作用および、膝伸展位保持をアシストします。
その結果、足関節背屈位保持のために要求される底屈モーメントを軽減でき、良肢位保持が可能となり、立脚期後半の足関節の機能を賦活したものと考えました。

脳卒中片麻痺者の歩行能力向上を目的とした弾性バンドによる歩行補助具は、私の確認する範囲ではオランダで開発されたCVAidと、T-Supportの2つです。
CVAidの治療効果については、一定期間の使用後に歩行速度とエネルギーコストの向上がみられたとの報告がありますが、装着時の下肢機能の変化についての報告はなされていません。
本研究では歩行分析機器を用いたことで、弾性バンド装着による力学的因子の変化が明らかとなり、効果機序について言及することが可能となりました。
本研究の限界として、歩行時の股関節、膝関節の運動学的因子、力学的因子を測定していない点が挙げられます。
今後は、装着時の下肢推進力増大に対する下肢各関節への影響を評価する必要があると考えています。
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- T-Supportに関する学会発表一覧
- 1.T-Supportが完成するまでの研究
- 2.T-Support装用時の力学的な変化についての研究
- 3.T-Support装用時の筋電図変化についての研究
- 4.T-Support装用時の歩行因子の変化についての研究
- 5.T-Supportの弾性バンドの伸長に関する研究
- 6.T-Supportによる長下肢装具の膝の固定解除に関する研究
- 7.T-Supportが効果を発揮する条件に関する研究
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- 10.T-Supportの継続利用に関する研究
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- 13.T-Supportを使って3人4脚したらどんなことが起きるか、って研究
- 14.在宅生活でT-Supportを使ってみた
- 15.T-Supportが整形外科疾患の患者さんの歩行動作に及ぼす影響に関する研
- 16.T-Supportの弾性バンドを3本使ったら何が起こるか?に関する研究
- 17.歩行コンテストという試み
- TSTraining理論
- キャリアラダーについてまとめてみた
- 観察による歩行分析Basic&Advance 2012に行ってきた
- WCPT2017で発表してきた
プロフィール
- ニックネーム
- 中谷知生
Tomoki Nakatani - 所在地
- 兵庫県宝塚市にある、宝塚リハビリテーション病院に勤めています。
- 職業
- 理学療法士です。
Certificated physical therapist in Neurology
- 自己紹介
- I am interested in physiotherapy for improvement of gait ability of a patient with stroke hemiplegia.
And I'm a member of Japan Physical Therapy Association stroke guideline crew.
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- 0207 神戸西支部さま
- T-Supportに関する学会発表一覧
- 1.T-Supportが完成するまでの研究
- 2.T-Support装用時の力学的な変化についての研究
- 3.T-Support装用時の筋電図変化についての研究
- 4.T-Support装用時の歩行因子の変化についての研究
- 5.T-Supportの弾性バンドの伸長に関する研究
- 6.T-Supportによる長下肢装具の膝の固定解除に関する研究
- 7.T-Supportが効果を発揮する条件に関する研究
- 8.T-Supportを装用した走行動作に関する研究
- 9.T-Support使用時にケツにパッドを用いる研究
- 10.T-Supportの継続利用に関する研究
- 11.T-Supportと他の歩行補助機器の効果比較に関する研究
- 12.T-Supportの伸長と聴覚刺激の併用に関する研究
- 13.T-Supportを使って3人4脚したらどんなことが起きるか、って研究
- 14.在宅生活でT-Supportを使ってみた
- 15.T-Supportが整形外科疾患の患者さんの歩行動作に及ぼす影響に関する研
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