卒中八策 その八 歩行スピードを向上させよう

なぜ歩行スピードを向上させた方がいいのか?

理由1:速く歩いた方が楽に歩けるから

ソース:大畑光司の一連の講習会の内容

理由2:強制的に速く歩かせると、脳卒中患者の歩行機能は改善するから

ソース:Dobkin BH,et al

International randomized clinical trial,stroke inpatient rehabilitation with reinforcement of walking speed(SIRROWS),improves outcomes.       neurorehabil neural repair 24:235-342,2010

 

理由3:回復初期段階の脳卒中片麻痺患者に速度負荷をかけた歩行トレーニングを実施することで、将来獲得するべき歩行動作の学習が可能となる(かもしれない)から
ソース:山田晋平ほか 
脳卒中患者におけるトレッドミル歩行の時間・距離因子-回復期リハ2週時速度負荷条件と6週時快適歩行条件との比較-
(第34回臨床歩行分析研究会定例会抄録集P47~48)


理由4:歩行速度を向上させることで、ミッドスタンスでの支持側にかかる床反力を軽減させることが可能となり、より効率的な歩行動作が可能となるから
ソース:『観察による歩行分析セミナー2012』
キルステン ゲッツ・ノイマンの講義より


理由5:片麻痺患者の歩行速度は参加制約に直結する因子であるから。
ソース:Perry J et al,stroke.1995

理由1についての解説

img_20120720-172407.png

歩行スピードを向上させた方がいい理由、ですが。

もうここまで卒中八策をしっかり読み込んでいただいた賢明な読者のあなたには伝わっているでしょう。

上の図、その五でも紹介しました、私の大好きな図です。

歩行動作の力学的なパラダイムである倒立振り子。

この倒立振り子が上手く機能するためには、歩行スピードが必要です。

なぜか。

歩行スピードを上げるとどんないいことがあるのか。

 

…以下のようなサイクルが出現すると考えられます。

速いスピードで麻痺側下肢のスイングを行う

⇒速いスピードでの麻痺側イニシャルコンタクトが行われる

⇒麻痺側ヒールロッカーがしっかり働き、麻痺側ミッドスタンスに向けて身体重心を高く持ち上げることができるようになる

⇒身体重心が持ち上げらえたことで、大きな位置エネルギーを得ることができる

⇒位置エネルギーを運動エネルギーに変換しつつ、速いスピードで非麻痺側下肢のイニシャルコンタクトが行われる

⇒非麻痺側のヒールロッカーが…

 

という感じで、歩行スピードを上げることでロッカーファンクションがどんどん良い方向に働き始めるわけです。

だから、歩行スピードを向上させることは重要なんですね。

そういえば来月、2012年10月に鹿児島で開催される第47回日本理学療法士協会の
全国学術研修大会の大会特別号、疾患別セミナーで脳血管障害について大畑光司先
生が『歩行障害に対する理学療法』というテーマで講演されるようですね。
その内容が相変わらず大畑光司の素晴らしさ全開でした。
以下要約を記てみましょう。

・脳血管障害後の片麻痺患者にとっての『歩行機能の回復』について考えるとき、我々理学療法士はしばしばジレンマに陥ることがある。
・例えば担当した患者の歩行が反張膝のような歩容異常を呈しており、さらにその歩行速度が非常に遅かったとする。
・このとき、改善すべき課題としては『歩行パターンの正常化』と『歩行速度の増加』があげられる。
・もしセラピストが歩容の改善を目指そうとした場合、トレーニング戦略としてはできるだけ健常者の歩行に近づけるように運動学習を行わせることになるだろう。このとき、課題の難易度を下げるために遅い歩行速度で行うほうがよいことになる。
・しかしもし歩行速度の改善を目指した場合には、早い速度での歩行を行わせる必要があるため、少々の歩容の悪化には目を瞑ることになるかもしれない。
・より最適な歩行回復を行わせるために我々はどちらを優先すべきであろうか。
・脳血管障害後の運動機能は時間経過に伴って、ある程度回復することが知られている。しかし、完全な運動回復が得られるのは15%にすぎないという。
・つまり、多くの場合、片麻痺患者の運動には何らかの問題が残存することが予想される。
・では残存する問題とはどんなものであろうか。Duncanらはインペアメントの評価であるFugl-Meyer Assessはmentにおいて90%以上回復する患者は全体の4割以下であるのに対し、アクティビティーレベルの評価であるバーサルインデックスが90%以上となる患者の割合は6割程度も存在するとしている。
・つまり、インペアメントレベルの問題は、アクティビティーの問題より残存しやすいと考えられる。
・このような差異の原因は、運動機能の『代償』にあると考えられる。
・前述の例に対して、歩行速度の改善を目標とし、歩容を考慮せずにトレーニングを行うことを選択したとする。もし、インペアメントレベルでは変化がなくとも、非麻痺側の下肢への依存度を増加させて歩行するというような代償によって、歩行速度を変化させることができる場合もある。
・そのように考えると前述の『歩行パターンの正常化』と『歩行速度の増加』のジレンマとは、運動機能を健常者と同様なパターンに『回復』させることを優先するか、健常者と異なる『代償』を用いてでも運動速度を改善させることを優先するかという二者択一であると考えらえるのではないだろうか。
・一般に理学療法士は歩容異常が生じることに対する拒否感が強い。このため歩行速度より歩容改善を優先させたトレーニングを行うことが多いように見受けられる。
・しかし、歩行速度を増加させることに伴って代償的な運動が生じることは一概に悪いこととはいえない。
・なぜなら脳卒中後片麻痺患者における歩行速度の問題は、参加制約に直結する重要な課題であり、トレーニングにおける最優先課題の一つだからである。
・さらに、片麻痺患者の歩行筋電図における特徴とその回復過程を調査した研究によると、片麻痺歩行において健常者の歩行と比較して異なる筋電図の時間的特徴が認められることは確かだが、この特徴は歩行速度やFunctional Ambulation Categoryの改善が得られていても変化しなかったとしている。
・つまり、筋電図の正常化が必ずしも歩行機能の改善を意味しておらず、通常歩行とは異なる筋電図パターンであっても、歩行機能の改善が可能であることを示唆している。
・しかし、それでも理学療法の目標の第一選択としては、以下の3つの理由から、インペアメントレベルの改善を通して、アクティビティーレベルの向上を目指すべきであるとされる。
・一つ目の理由は、慢性期であっても適切なトレーニングにより神経学的可塑性が得られること、二つ目は代償的な運動が長期的な関節可動域制限や痛みのような問題を引き起こす可能性があること、三つ目は代償的な運動が、その後の麻痺側の運動機能の改善を制限する可能性があることである。
・我々は、回復期における歩行速度と筋活動パターンの関係について調べたところ、筋活動が健常者と類似したパターンであるほど歩行速度が速かったこと、筋活動の類似性が一定以上改善したグループにおける歩行速度の改善が顕著であったことが示された。
・このことは健常者に類似した歩行筋活動パターンになること、つまり『歩行筋活動の正常化』が歩行速度を改善する基盤を形成している可能性を示唆している。


…うん、要約にしようと思ったんですが、頭の良いヒトの文章を要約するのは困難で、結局殆どそのまま、です。
でもこの文書、やっぱりええこと書いてますねぇ。

歩行速度の向上は参加制約に直結する重要な課題である。
筋活動を正常に近づけることで歩行速度を向上させることが可能である。

これ、逆に言うと、代償動作を用いずに歩行速度を向上させることで、筋活動を正常に近づけることが可能である、ということもできる、のだろうか。
きっとそうだと思います。
そしてその根っこの部分には、重心移動の正常化による身体重心と床反力の関係があるんだと思うんです。
だって歩行時の筋活動は、身体重心と床反力の結果として起こるわけですから、筋活動を正常化させるには、身体重心のコントロールを正常化させる必要があるわけですから。

理由2についての解説

強制的に速く歩かせると、脳卒中患者の歩行機能は改善する、という素敵なお話。
これ、脳卒中患者のトレーニングにおいて歩行スピードを向上させることの有効性を裏付ける文献だと思うので紹介します。

大畑先生の講義なんかでも時折出てくるDobkinらの2010年のデータ。

Dobkin BH,et al

International randomized clinical trial,stroke inpatient rehabilitation with reinforcement of walking speed(SIRROWS),improves outcomes.

neurorehabil neural repair 24:235-342,2010

発症早期における脳卒中患者の歩行機能の向上は、その後の機能的予後、生命予後を右する重要なファクターであり、partial body weight support treadmill walking(部分免荷トレッドミル)や歩行ロボットなどを使用した介入が有効である。

しかし、ただ歩かせるだけでは意味がないことを著者らはこの文献を通じて強調しており、特にreinforcement of walking(強制的に、早く歩かせる)ことの重要性を説いている。

対象は162例の脳卒中患者(発症後30日前後)。

これらを

daily reinforcement of walking speed(DRS)群88例

no reinforcement of walking speed(NRS)群91例

の2群に分け、強制的に速く歩かせることの有効性を調査した。

img_20120808-052317.jpg

結果は下のように、DRS群とNRS群では明らかな違いが認められた。 

img_20120808-052510.jpg

DRS群とNRS群の間で、リハビリテーションユニットへの入院期間には差は認められなかった。

しかし、歩行能力における各パラメータ(歩行速度・連続歩行距離・歩行能力)すべてにおいて有意にDRS群で改善が認められた。

この事実は、リハビリテーションにおいてただ歩かせるのではなく、より速く歩かせることが重要であることを示している。

 

…ね、やっぱり速く歩くこと、大事でしょ?

 

・じゃぁより早く歩くにはどうするべきか?

 

まぁ歩行速度を上げる方法といっても、いろいろありますわなぁ。

そりゃありますよ。

決して一つではない。

ここではまず随意性の低下していない場合を考えてみましょう。

 

 
・筋力とバランスが中・高齢者の歩幅と歩行率に及ぼす影響について 
 

これは2000年のPT全国学会で、上のタイトルで都老人総合研究所というところが発表してた内容。

東京都在住の高齢者223名を対象に、握力・膝伸展筋力・足関節底屈筋力・開眼・閉眼での重心動揺およびファンクショナルリーチの6項目を評価した。

その結果わかったこと。

・6項目すべて、加齢とともに低下する。

・歩幅への影響では、足関節底屈筋力の影響が最も大きい(正の相関がある)。

・歩行率への影響では、ファンクショナルリーチの影響が最も大きい(正の相関がある)。

 

で、この結果から言えること。

・高齢者においては、運動能力と活動性に密接な関連が認められる。特に歩行能力(歩行速度)が重要であることが明らかになっている。

・歩行速度を決定する歩幅・歩行率はいずれも加齢により低下するが、歩幅の低下がより大きく、これが高齢者の歩行の特徴の一つである。

・今回の調査結果からは、歩幅に最も大きな影響を与えるのが特に足関節底屈筋力であり、下腿三頭筋筋力の重要性が明らかとなった。

 

もう一ついってみましょうか。

 

・高齢者の歩行自立度に対する下肢筋力および最大歩行速度の影響 
 

これは2004年のPT全国学会、埼玉医科大の文献。

・在宅高齢者の膝伸展筋力、足底屈筋力、10m最大歩行速度を調査した。

・対象は屋内歩行が自立していはる高齢者56名。

・筋力はμ‐Tasで測定し、体重比を算出。

・上記3要因とFIM5・6・7の3段階との関連を、クラスカルワーリス検定を用いて検討。

 

結果、

・FIMの点数が高いほど歩行速度が速い。

・歩行能力が高い者ほど足関節底屈筋力が強い。

このことから、

・歩行能力向上のためには下腿三頭筋の筋力向上が重要と考えられる、と。

 

 

…やっぱり歩行スピードの向上に下腿三頭筋は重要なんですね。

じゃぁそこの随意性が低下している脳卒中片麻痺患者では、歩行スピードを向上させられないのか?

そんなことはないんですね。

そんなことはない理由を以下に。

まずは次の文献に目を通してください。

 

・足関節底屈筋と股関節屈筋はトレードオフの関係にある
 

ここまで下腿三頭筋、下腿三頭筋と表現してまいりましたが、下腿三頭筋を構成する腓腹筋とヒラメ筋、この2つの機能的な違いをしっかり把握しておかねばなりません。

歩行動作における腓腹筋とヒラメ筋の役割は明確に違います。

Neptuneらは、ヒラメ筋は、立脚期の支持性の向上に寄与し、一方で腓腹筋は遊脚期の下腿の振り出しに寄与すると報告しています。

つまり歩行スピードの決定因子となるのは腓腹筋であると言えます。

では腓腹筋が上手く使えない場合、歩行スピードが落ちてしまうのか?

実はそう単純な話ではないんですね。

腓腹筋が上手く働かない場合には、股関節の屈筋が代償します。

その結果、同じ運動が可能になります。

このことから、遊脚期のスイングの初速形成において、足関節底屈と股関節屈曲はトレードオフの関係にあるのです。

img_20120810-010558.png
 

逆に言うと、ヒラメ筋、腓腹筋ともに髄性が低下した場合には股関節屈筋を働かせることでスピード向上は可能です。

そして股関節屈筋は、随意性が低下していても十分にスイングに寄与できる構造的な有利さを持ち合わせているわけです。

このホームページでもどこかで紹介したと思いますが、片麻痺患者の歩行能力の決定因子として、股関節屈筋と足関節底屈筋が重要である、と言われる所以はここにあるんですね。

どっちも歩行スピードに大きく貢献します。

そして、ここまで何度も何度も書いてきたように、股関節屈筋と足関節底屈筋が力学的により有利に働かせるために、股関節は伸展しましょう。

やっぱり肝はそこなんでしょうね。

理由3についての解説

先日、初めて臨床歩行分析研究会の定例会に参加してみました。

PTだけじゃなくて、工学系の方々も参加・発表してる様子で、面白かったです。

で、中でも卒中八策の正当性を裏付けてくれるような発表がこれでした。

藤田保健衛生大学七栗サナトリウムの山田氏による発表。

演台名が

『脳卒中患者におけるトレッドミル歩行の時間・距離因子-回復期リハ2週時速度負荷条件と6週時快適歩行条件との比較』

というもの。

以下、要約します。

 

・一般的に回復期の脳卒中患者の歩行速度は訓練経過に伴い向上することが多い。

・回復初期段階で一定の速度負荷をかけた歩行が、将来獲得する歩行と類似した特徴を持つならば、回復初期における速度負荷をかけた歩行訓練が、将来獲得するべき歩行動作の学習を早める可能性がある。

・回復期リハ実施後2週時のトレッドミル速度負荷条件と6週時の快適歩行速度条件の2つのトレッドミル歩行を時間・距離因子を用いて比較し、その類似性を比較した。

・対象は回復期リハビリテーション病棟へ入院した初発脳卒中患者39名。

・各被験者の入院2週後と6週後のトレッドミル歩行を3次元動作解析装置にて計測。

・入院2週後では平地快適歩行速度の130%の速度で、6週後では快適歩行速度で計測を行った。

・結果がこちら。

img_20121127-054050.jpg

↑まぁ、この画像のデータをしっかり解釈するにはちゃんと抄録を入手して読んでください。

・で、結論から言いますと、入院2週後の130%の速度での歩行因子と、6週後の快適歩行速度との間には、ICC0.9以上の高い相関が認められた、ということ。

・このことから、回復初期段階のトレッドミル速度負荷により初来獲得する歩行を実現できる可能性が示唆された、ということ。

 

 

らしいんです。

これ、非常に面白い発表だと思いました。

無論使用してる機器がトレッドミルなんで、それ以外のトレーニングにもすぐに当てはまるわけじゃぁないんでしょうけれども。

てか臨床歩行分析研究会の発表って、トレッドミルに関する発表がものすごい多かったように感じました。今回だけだったのかどうか良く知りませんが…

まぁそんなことは置いといて。

『速度負荷をかけた歩行トレーニングの意味』ですよ。

速度負荷をかけることで、近い将来獲得する歩行因子に近い状態での歩行トレーニングが可能となる。

これはもう全くその通りだと思います。

私は自慢のT-supportを用いたフリーハンド歩行を中心に理学療法をすることが多いんですが、ゲイトジャッジシステムで評価してみると、当然のことながら速度を上げれば上げるほど、ストライドが伸びて、ファーストピーク、セカンドピークの波形が尖鋭化して、そしてトルク値が上がってくる。

それはしばらく後の、介助が無い状態での歩行データに近いことが多いですね。

今回、そのあたりをこうやってたくさんの症例でデータをとって、根拠を示したところがとっても素晴らしいと思いました。

ちなみに発表者は最後に、速度負荷をかけすぎることによるデメリットもあるので、一概に速度を上げればいいというものでもない、と注意しておられました。

でも、そんなことは無いんじゃないかなと私は個人的に想います。

確かに例外的にそういうケースも考えられないことはないですけれども、圧倒的多数の片麻痺患者さんは、理学療法士によって、ゆっくり歩かされているんじゃないかと思います。

我々はもっともっと速度を上げた歩行とレーニングというものに対して貪欲になっていいんじゃないかと思ってます。

 

まぁしかし、世の中にはかしこい人がいっぱいおるわ。

 

理由4についての解説

以下の内容は、『観察による歩行分析Basic&Advance 2012に行ってきた 』のページに書いたことなんで、そっちを読んだ方はもうそれで構いません。

 

で、なぜ歩行スピードを向上させると、床反力を減少させることが可能なのか、って話。

そのためには、健常歩行においてイニシャルコンタクト~ローディングレスポンス、ミッドスタンスの床反力がどう変化するかを理解すればよいわけです。

 

身体が床に接する瞬間であるイニシャルコンタクトから、衝撃を吸収する相であるローディングレスポンス。

キルステン ゲッツ・ノイマンは、脳卒中片麻痺患者においてこの衝撃吸収相をいかに安定させるかが最重要課題だと言っています。


で、下の図はローディングレスポンスでの床反力の様子ですね。

下肢が床に接する直前に、身体は約1cmの高さからの自由落下します。

それによって短時間に激しい床反力が生じます。
この床反力は自分の体重よりも大きいものです。
img_20121217-063008.jpg
これ、画像がちょっとわかりにくいかもしれませんが、黄色い線が床反力。
これが骨盤を突き抜けるくらいの長さになってます。
この床反力はとっても大きいエネルギーです。

 

その非常に大きな床反力が、ミッドスタンスにかけてどう変化するか。

img_20121217-063131.jpg
これ、ミッドスタンスの後期です。
ほら、さっきのローディングレスポンスでの床反力と比べて、小さくなってるのがわかるでしょ?

その仕組みはね…
反対側の下肢のスイングに秘密があるわけです。
反対側の下肢がある程度の速度でもって、スイングをした結果、身体を上方に持ち上げようとする力が発生してるわけですよ。
体重を上に持ち上げようとしてる。
反対側の素早いスイングによって。
だから床反力が小さくなっているわけです。
これにより、下肢の筋活動を低下させても安定して歩行ができるわけです。

ですから、臨床場面においても、患者さんがゆっくり歩くということは、床反力を体重よりも小さくするといことができなくなるということです。
この傾向は特に高齢者で著明になります。
ですから、可能な限り歩行スピードを上げなければなりません。 

 

…というお話です。

おわかりいただけましたでしょうか。

 

理由5についての解説

あ、すいません、ソースにペリーなんて書いちゃいましたけどね。

ボキ、この文献を読んだわけじゃぁないんですよ。

先日、というのは2013年3月24日でしたが、私、京都大学で大畑光司先生のセミナーに参加してきましてね。

そこで紹介されてた話を、ここでまとめてみようと思うわけです。

まずこちらの表を見ていただきたい。

img_20130404-184008.jpg

これ、Waters RL氏らがGait &Postureに1999年に発表したデータらしいんですが。

あ、細かい数字はね、大畑先生の配布資料があまりにも 薄汚い ちょっと印刷が荒かったもんで、良く見えないためにちょっと自信がないんですけれども。

まぁだいたいニュアンスが伝わればそれでいいでしょう。

この表で言いたいことは、

 

・片麻痺患者では一般の高齢者に比べても、歩行速度の低下が著明であるということ。

・そして、歩行時の酸素摂取量自体はそれほど落ちていないんだけれども、歩行速度が低下することが影響して、1m進むためのエネルギーコストが高くついている、ということ。

 

この2つですね。

じゃぁこのエネルギーコストが0.27というのはどの程度しんどいのか、といいますと。

img_20130404-190035.jpg

これ、膝関節を無理やり屈曲位にして歩いたら、どれくらいエネルギーコストが上がるかというデータ。

ソースは先ほどの表と同じ、Waters RL氏ら。

これ見ると、片麻痺患者の歩行とは、膝関節を45°屈曲位で歩行するのよりもしんどい、という話になってきます。

めっちゃしんどいんですね。

若い人の倍しんどいということになる。

逆に言うと、健常者の歩行というものは、それだけ効率的なんですね。

で、その効率性を担保しているものは、やはり歩行速度なわけです。

img_20130404-192443.jpg

これ、大畑光司先生が配布した薄汚いスライドですけれども。

縦軸がエネルギーコスト。

横軸が移動のスピードを表しているわけさ。

でね、この表で、左端の方での字みたいなカーブを描いてるグラフがあるでしょ。

これが、歩行速度とエネルギーコストの関係なわけ。

何を言いたいかというと、歩行はスピードが落ちすぎると、エネルギーコストが上がっちゃう、っていうこと。

逆に歩行速度を上げすぎても、またエネルギーコストは上がってくわけさ。

このちょうどいいくらいのスピードというのは、健常者で言うと時速4キロ前後なんだそうだけれども。

兎に角それより遅くなると、両脚支持期から単脚支持期へと重心を持ち上げるのに、いっぱい筋力を必要とするようになるわけ。

だから、歩行スピードの落ちる脳卒中片麻痺患者では歩行時のエネルギーコストが上がっちゃうわけさ。

 

で、ここでようやくペリーの話にたどりつくわけだけれども。

ペリーが1995年、こんなデータを出したのさ。

片麻痺患者の歩行速度は、生活における歩行による活動範囲を決定する、と。

ペリーは歩行を生活においてどれくらい利用するか、で、3種類に分けたのさ。

屋内外ともに歩行で生活する人⇒Community Ambulator

屋内は歩行だが、屋外での長距離移動などでは車いすなどを利用する⇒LimitedCommunityAmbulator

屋内でしか歩行できない人⇒House Hold Ambulator、

とね。

で、Community Ambulator であるには、歩行速度が0.8m/sec、言い換えると、10M歩行所要時間が12.5秒以下である必要がある、と。

LimitedCommunityAmbulator であるには、歩行速度が0.4m/sec、言い換えると10M歩行所要時間が25秒以下である必要がある、と。

それ以下の歩行速度では、屋内でしか歩行できないということです。

 

だから、脳卒中片麻痺患者の歩行練習においては、歩行速度を向上させることが非常に重要となってくるのですね。

 

 

プロフィール

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ニックネーム
中谷知生

Tomoki Nakatani
所在地
兵庫県宝塚市にある、宝塚リハビリテーション病院に勤めています。
職業
理学療法士です。

Certificated physical therapist in Neurology

自己紹介
I am interested in physiotherapy for improvement of gait ability of a patient with stroke hemiplegia.
And I'm a member of Japan Physical Therapy Association stroke guideline crew.

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