2.T-Support装用時の力学的な変化についての研究

 

T-Supportについて、これまでいろいろなデータをとってきたわけだけれども。
やっぱり一番大切なのは、装用することで下肢の各関節にどのような運動力学的な変化を及ぼす道具なのか、ということをはっきりさせておくことだと思うのです。
でもね、なかなかその手の情報って、かんたんに入手できないでしょ?

それを初めてできたのが、2015年の8月だったんだな。
当時国際医療福祉大学に所属していた勝平純司先生にお声をおかけいただきましてね。
慢性期脳卒中片麻痺患者さん1名にご協力いただいて、国際医療福祉大学のVICONを使ってデータを取っていただいたのです。
ご協力いただいた被験者の方は発症から10年以上が経過した男性で、右片麻痺。
右下肢のBRSはⅢで、計測時はフリーハンド歩行が安定して行えました。
この方に、
①GSDのみ使用した歩行
②GSD+T-Supportを装用した歩行
③GSD+T-Support+サウンドシステムを装用した歩行
④GSDのみ使用した歩行、
という条件で、4度VICONで計測させていただいたのでした。
それをまとめたのがこれ。

2-1.VICONでっせ、奥さん、これがVICONでっせ!(深い意味は無い…)

img_20160718-080842.jpg
2016年の第51回日本理学療法学術大会。
見にくいよね?
だからもうちょっとでっかいグラフを載せましょう。

img_20160718-092259.jpg
左から①→②→③→④、の順です。
ここで言えるのは、T-Support装用により歩行速度がぐいと上がり、その効果は外したあとも残っている、ということ。

img_20160718-092516.jpg
じゃあストライドはどんな変化なのか。
これがなかなか興味深いんだけど、装用時に非麻痺側のストライドがぐいと上がるんだよね。
このことは、前型歩行を促している、ということだと思われるのです。

img_20160718-092648.jpg
では関節角度とモーメントはどんな変化か?
このグラフ、少し見にくいかもしれませんが、
緑:装用前
赤:T-Support
青:T-Support+サウンドシステム
黒:装用後
です。

このグラフからは、装用した下肢の立脚後期の股関節伸展角度が増大し、股関節屈曲モーメントが増大する、ということがわかります。

img_20160718-093009.jpg
足関節の角度とモーメントを見てみます。
すると、装用した下肢の立脚後期の背屈角度が増大し、底屈モーメントが増大しています。

今回の検証から明らかになったこと。
T-Supportは弾性バンドの張力のアシストにより、装用した下肢の屈曲モーメントを補助する。
その効果は特に立脚後期の股関節伸展、足関節背屈角度を増大させる。
その結果、非麻痺側下肢のストライドを増大させ、かつ麻痺側下肢のストレッチショートニングサイクルを賦活させることで麻痺側下肢の推進力を増大させて歩行速度を向上させる効果がある、ということが推察されたのでした。


…ってこと。




あ、ちなみにね、この学会ではポスター発表だったんだけど。
ボキ、学会ポスターを筒に入れて持ち歩くのがあんまり好きじゃないんだ。
img_20160718-100902.jpg
なんかほら、コテカhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%86%E3%82%ABっぽいやん?
てかコテカで検索したらなぜかエガシラが出てきたわけだが。
…今の若い子はジャングルの王者ターちゃんなんて知らんやろなぁ。

閑話休題。
だから、ポスターは布で作るの。
これなら折りたたんで運べるしね。

img_20160718-101227.png
発表前日、ポスターにくるまって寝てるスーパーアイドルともっきーの画像。
かわいいね。
 

兵庫2017 ひがくん

img_20180518-090359.jpg

それでは発表を始めさせていただきます。
右側運動失調を呈した右片麻痺患者に対する歩行補助具T-Supportの効果検証
はじめに、脳卒中治療ガイドライン2015において歩行能力向上のために歩行トレーニングの量を増やすことが勧められています。しかし、同じ脳卒中患者でも、運動失調を併うケースでは運動の正確性が損なわれるため、単純に歩行量を増しても、それが誤学習に繋がる可能性が考えられます。
先行研究では、2001年のThe American Physiological SocietyにてGAMMON M. EARHARTらが運動失調を呈する患者は、歩行の際に肢節内の協調性障害が生じる。加えて、歩行の特徴は非対称性や不規則な方向転換、下肢の高い振り上げから生じる過度な膝関節屈曲位での接地が挙げられる。としています。
つまり、運動失調患者は安定した歩行が困難な状態であることが言えます。
当院では脳卒中患者の歩行訓練に川村義肢社製のT-Supportを使用することが多く、これまで歩行速度の向上,ストライドの延長,前遊脚期における足関節底屈トルク値増大の効果など、歩行の安定性を向上させることが明らかとなっています。
T-Supportとはこちらの写真で示すように、体幹と下腿前面をゴムバンドで連結した歩行補助具であり、立脚後期から前遊脚期にかけてゴムバンドが伸張されることで股関節屈曲・膝関節伸展モーメントを発生させることが示唆されています。
そこで、本研究は右側の運動失調を呈した右片麻痺患者に対して、T-Supportを装着した際の運動失調の即時的抑制が可能であるか検証することを目的としました。
 
 対象と方法に移ります。
 対象は病日28日で当院に入院された左橋出血により右片麻痺・運動失調を呈した80歳代男性です。
 身体機能は下肢Brunnstrom Recovery StageⅣ、SARA21点でした。
 歩行は短下肢装具(Gait Solution Design)を使用しましたが、右立脚期全般に膝関節屈曲位であり、右立脚終期の股関節伸展が乏しい状態でした。また、運動失調の影響からバランスが不安定で、ふらつきに対して介助を要していました。
 方法はT-Support未装着・装着下における10m歩行時の歩行速度、ステップ数、麻痺側前遊脚期の底屈トルク(以下SP)平均値、SP変動係数を病日32日より約一週間置きに計3回計測し、比較しました。底屈トルク値の計測に関してはパシフィックサプライ社製のGait Judge Systemを使用しました。
 
 結果に移ります。
グラフの横軸は病日を表しており、縦のグラフはそれぞれ歩行速度、ステップ数、SP平均値、SP変動係数を示しています。青色の折れ線はT-Supportなし、赤色の折れ線はT-Supportありを示しています。
歩行速度、ステップ数、SP平均値は先行研究の結果と同様に向上しており、ほとんどにおいて期間が経つにつれてグラフが収束していることがわかります。そして、今回の研究で一番言いたい所は右端のSP変動係数のグラフです。T-Supportなしに比べ、T-Supportありでは変動係数が減少しており、日が経つにつれて双方とも変動係数が減少していることがわかります。つまり、T-Supportを装着することによって一定した蹴り出しが行えるようになっているのです。
 
 結論に移ります。
井口らの先行研究では、運動失調を呈する患者の特徴的な歩行因子に、前遊脚期のSP変動係数増加が挙げられており、本症例も同様に変動係数の増加がみられました。
そして、T-Supportを装着することによって歩行速度、ストライド、前遊脚期のSP平均値が向上し、前遊脚のSP変動性も減少しました。
今回、前遊脚期の足関節底屈トルク値が減少した要因について、T-Supportの特徴である立脚後期から前遊脚期に必要な股関節屈曲モーメント、膝関節伸展モーメントが補助されたことによって、足関節を含めた下肢の協調性も促通され、一定した蹴り出しが行えるようになったと考えます。
今回の結果を元に、T-Supportは運動失調による影響を即時的に抑制することが示唆されました。
これで発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。



 

プロフィール

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ニックネーム
中谷知生

Tomoki Nakatani
所在地
兵庫県宝塚市にある、宝塚リハビリテーション病院に勤めています。
職業
理学療法士です。

Certificated physical therapist in Neurology

自己紹介
I am interested in physiotherapy for improvement of gait ability of a patient with stroke hemiplegia.
And I'm a member of Japan Physical Therapy Association stroke guideline crew.

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