12.T-Supportの伸長と聴覚刺激の併用に関する研究
12-1 たぶんこれがサウンドシステムに関する最初の発表だとおもう
T-Supportの新しい機能のひとつに、サウンドシステムってやつがあります。
これはT-Supportの弾性バンドが伸びたときに、ミニスピーカーから音がなって、股関節伸展を意識できる、ってやつです。
2018年現在、まだ市販はされてないんですが、宝塚リハビリテーション病院では川村義肢さんの試作品をちょいちょい臨床で使ってます。
結構面白い変化がみられるんですよ。
それについての学会発表について、ここに集めてみます。
まず1本目が、リハビリテーション・ケア合同研究大会茨城2016での私の発表です。


脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニングでは麻痺側股関節の伸展角度を増大させることが重要であるとされています。
しかし、患者自身が麻痺側下肢のアライメントを把握することは困難な場合が多くあります。

ところで話が変わりますが、皆さん歩行補助具T-Supportをご存知でしょうか?
今年度から販売が開始された歩行補助具で、体幹ベスト部分から伸びた弾性バンドを下肢前面に装着し、そのバンドが伸長することで下肢機能を向上させるものです。
T-Supportはその構造上、やはり装着下肢の股関節を立脚後期にかけてしっかりと伸展させることが重要になります。

我々は考えました。
T-Supportの弾性バンドの伸長を聴覚的にフィードバックすることで、装着者が股関節伸展を理解しやすくなり、より効果的なトレーニングが可能となるのではないか、と。
そこで、弾性バンドの張力を計測し、張力発生時に電子音が発生する装置(サウンドシステム)を開発しました。
サウンドシステムは、張力センサとスピーカーの2つのユニットで構成されています。
T-Supportは骨盤前面から下腿前面を弾性バンドでつなぐことで装着下肢を牽引しますが、そのバンドの起始部に張力センサーを配置して、股関節伸展運動に伴い電子音がスピーカーから発生する仕組みです。
本研究の目的は、弾性バンドの伸長に伴う聴覚刺激が脳卒中片麻痺患者の歩行動作に及ぼす影響を明らかにすることです。

対象は当院回復期病棟入院中の初発脳卒中片麻痺患者で、T字杖と短下肢装具を使用し自力歩行が可能でした。
歩容の特徴として、麻痺側下肢のスイングの速度が低下している印象を強く受けました。
この症例において、短下肢装具のみ使用した場合と、T-Supportを装用した場合と、それに加えサウンドシステムを使用した場合の3条件で、10ⅿ歩行所要時間、ステップ数、立脚後期に短下肢装具に発生する底屈制動モーメント、これは通称セカンドピークと呼ばれています、また麻痺側下肢の立脚時間・遊脚時間の平均値を比較しました。
まずは3つの条件の歩行の様子をご覧いただきます。

こちらが、短下肢装具を使用した状態での歩行動作です。
まずまず上手く歩けているように思いますが、10ⅿ歩行所要時間が17.5秒であり、より実用性を高めるには歩行速度を向上させる必要がありました。

そこで、T-Supportを装用してみます。
10ⅿ歩行所要時間は16.4秒と、約1秒短縮します。
それでもまだちょっと遅い感じがします。

そこで、サウンドシステムを追加します。
10ⅿ歩行所要時間は13.9秒となり、特に麻痺側下肢のスイング速度が向上した印象を受けます。

結果をまとめます。
T-Supportに加え、サウンドシステムを併用することで最も歩行速度が向上しました。
歩数は3条件とも変化ありませんでした。
セカンドピークは、サウンドシステム使用時に著明に向上しました。
装着下肢の立脚時間と遊脚時間の平均値を見ると、サウンドシステム使用時に著明に遊脚時間が減少していることがわかります。
3条件での遊脚時間平均値は、短下肢装具時0.64秒、T-Support時0.6秒、サウンドシステム時0.44秒と、聴覚刺激を併用した際に最も素早いスイングが可能となっていました。

考察です。
先行研究では、脳卒中片麻痺患者の歩行動作時にメトロノームなどを用いた律動的な聴覚刺激を入力することで、歩行速度の向上や左右の対称性の向上などさまざまな効果があることが明らかとなっています。
しかしこれらの研究は、聴覚刺激のリズムにあわせるよう意識することによる動作の変化を検証したものです。
今回我々が開発したサウンドシステムは、従来の聴覚刺激とは異なり、立脚後期の股関節のアライメントの変化に応じた聴覚刺激が入力されます。
ではこれによる動作への影響はどのようなものであったのでしょうか?
今回の評価結果のなかで私が最も注目したのは、聴覚刺激を併用した場合における、セカンドピークの変化です。
セカンドピークとは、立脚後期からの足関節底屈運動に関連し、セカンドピークの向上は遊脚期のスイングスピードに関係するといわれています。
つまり、本症例では聴覚刺激により、立脚後期のより強い足関節の底屈運動が促され、その結果遊脚時間が減少し、歩行速度の向上につながったと考えられます。
この要因については、サウンドシステム使用時に症例本人から「どこで脚が伸びてるのかわかりやすい」との感想が聞かれており、聴覚刺激により立脚後期の下肢のアライメントが理解しやすくなった結果ではないかと推察しています。
まとめです。
回復期脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニング時に、股関節伸展動作に伴う聴覚刺激を発生する機器を使用しました。
即時的に歩行速度の向上が見られました。
なぜこのような変化があるのか、今後その要因について、さらなる調査が必要であると考えています。
これが2本目、第32回日本義肢装具学会学術大会で
1本目と同じ2016年の日本義肢装具学会学術大会でコマツさんが発表したのがこちら。

当院では脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニングにおいて、歩行能力の改善を目的に長下肢装具を用いた介助歩行トレーニングを実施することが多くあります。
この際に重視していることは、立脚後期で股関節を伸展させることです。
それは股関節伸展位での姿勢保持を学習することで、最終的に症例自身の股関節前面の軟部組織の伸張を用いたスムーズな下肢スイングの獲得が期待できるからです。

長下肢装具を用いた歩行トレーニングには様々な方法がありますが、当院では下肢のリズミカルな屈曲伸展運動を促すことを目的に、セラピストが後方から症例を抱えて上肢の支持物の無い状態での歩行動作から開始します。
しかし後方から患者を抱えた姿勢での歩行トレーニングは、特に体幹の支持性の低下した症例などにおいて、装具を装着した下肢と体幹の連結性が乏しいことから、歩行時の姿勢の崩れが見られるなど、セラピストの技能の差により歩行時のアライメントが大きく影響を受けます。
このような場合、我々は川村義肢株式会社製T-Supportを使用します。
これは下肢装具と体幹部分を弾性バンドで連結するため、介助歩行時のアライメントの崩れを軽減させることが可能です。
そして、T-Supportは股関節前面に配置された弾性バンドが伸長されることで下肢機能を補助するため、やはり立脚後期での股関節伸展が重要になります。

しかし介助歩行中にから患者の股関節が伸展しているか把握することは難しく、多くの場合はセラピストの感覚に基づいていると思われます。
そこで我々は、股関節が伸展位となった際に電子音によるフィードバックがなされれば、どのセラピストでも容易に股関節伸展が把握できるのではないかと考え、T-Supportに新しい機能を追加しました。

それが、T-Support Sound Systemです。
Sound Systemは、弾性バンドの上部に取り付けた張力センサーがバンドの伸張を感知し、肩ベルト部分に繋いだスピーカーから電子音が鳴る装置です。
スピーカーの電源を入れた際の弾性バンドの張力を閾値とし、閾値以上の張力が発生した際に電子音が鳴る仕組みです。また弾性バンドの伸張が強くなるほど音階が上がっていきます。
Sound Systemを使用することで股関節伸展が把握しやすくなり、その結果立脚後期での股関節伸展角度が増大するのではないかと考えました。本研究の目的は、T-Support・ Sound Systemを使用した介助歩行における、歩行因子の変化を検証することです。

対象は、当院に所属する理学療法士11名としました。
脳梗塞により左片麻痺を呈した80歳代の女性患者に、本人用の長下肢装具とT-Supportを装着し、10mの歩行路において、Sound System使用・未使用下で介助歩行を行いました。
評価項目は10m歩行におけるステップ数、立脚後期での股関節伸展角度および足関節背屈角度とました。
T-Supportの弾性バンドは全セラピストの介助歩行時に張力を統一し、股関節屈曲伸展中間位よりも張力が発生した際に電子音が鳴る設定としました。
(統計処理はWilcoxon符号付順位和検定を用い、有意水準は5%としました。)
また測定後、対象者にSound System使用・未使用時の股関節伸展の把握に関してアンケートを実施しました。

結果です。
Sound System使用により、立脚後期での股関節伸展角度が増大し、10m歩行におけるステップ数が減少するという傾向は得られたものの、統計学的な有意差は認められませんでした。

また測定後に実施したアンケートでは、11名中7名のセラピストが、通常の介助歩行時は立脚後期での股関節伸展が把握しにくいと回答しましたが、Sound System使用時には11名全員が股関節伸展を把握しやすいと回答しました。
しかしその一方で、Sound System使用時に電子音が鳴るタイミングが予想と違うという意見も聞かれました。

考察です。
Sound Systemの使用により、介助歩行における立脚後期での股関節伸展角度の増大を期待しましたが、その傾向は得られたものの個人差があり、統計学的な有意差は認められませんでした。
その理由として、SSは弾性バンドの伸張を感知して電子音が鳴るため、体幹の過度の伸展や股関節外旋などの代償動作によっても電子音が鳴る場合があります。そのため代償動作によって電子音が鳴っているにも関わらず、股関節が十分に伸展していると判断してしまう可能性が考えられます。
また一部のセラピストからは電子音が鳴るタイミングが予想と違ったという感想も聞かれており、電子音によるフィードバックが介助に活かせなかったことも推察されます。
本研究の結果から、Sound Systemの機能を臨床場面で活かすには、その特性を理解し、使い方を工夫する必要があると考えました。
次は臨床歩行分析研究会定例会2016


近年、脳卒中片麻痺患者の歩行場面でモーターやバネなどの外力を用い下肢のスイングを補助する機器が普及しつつあります。
当院でも、ロボットスーツHALやHonda歩行アシストなどのロボットリハビリテーションに力を入れていますが、これに加え、弾性バンドの張力で装着下肢の股関節屈曲動作を補助する川村義肢株式会社製T-Supportも積極的に使用しています。
T-Supportは体幹前面から下腿前面を弾性バンドで連結し、その張力を用いて歩行動作を補助する装置であり、伸長された弾性バンドが立脚後期から遊脚初期の股関節屈曲モーメントを補い歩行能力を向上させます。
このためT-Supportの効果を高めるには、立脚後期にかけて股関節を伸展させ、弾性バンドを伸長させることが重要ですが、装着者が歩行時に伸長の程度を確認することは困難な場合があります。
近年、脳卒中片麻痺患者の歩行場面でモーターやバネなどの外力を用い下肢のスイングを補助する機器が普及しつつあります。
当院でも、ロボットスーツHALやHonda歩行アシストなどのロボットリハビリテーションに力を入れていますが、これに加え、弾性バンドの張力で装着下肢の股関節屈曲動作を補助する川村義肢株式会社製T-Supportも積極的に使用しています。
T-Supportは体幹前面から下腿前面を弾性バンドで連結し、その張力を用いて歩行動作を補助する装置であり、伸長された弾性バンドが立脚後期から遊脚初期の股関節屈曲モーメントを補い歩行能力を向上させます。
このためT-Supportの効果を高めるには、立脚後期にかけて股関節を伸展させ、弾性バンドを伸長させることが重要ですが、装着者が歩行時に伸長の程度を確認することは困難な場合があります。

そこで我々は、T-Supportの弾性バンドの伸長を聴覚的にフィードバックすることが有効ではないかと考え、弾性バンドの張力をロードセルで計測し、張力発生時に電子音が発生する装置(サウンドシステム)を開発しました。
サウンドシステムは、張力センサーとスピーカーの2つのユニットで構成されています。
T-Supportはこのように、骨盤前面から下腿前面を弾性バンドでつなぐことで麻痺側下肢を牽引しますが、そのバンドの起始部に張力センサーを配置して、股関節伸展運動に伴い電子音がスピーカーから発生する仕組みです。
本研究の目的は、弾性バンドの伸長に伴う聴覚刺激が脳卒中片麻痺患者の歩行動作に及ぼす影響を明らかにすることです。

対象は左被殻出血により右片麻痺を呈した60歳代の男性で、右下肢のBrunnstrom Recovery StageはⅣ、短下肢装具を使用しフリーハンドでの歩行動作が可能でしたが、麻痺側立脚後期の股関節および膝関節の伸展運動が不十分で歩行速度の低下が認められました。
本症例において、フリーハンド歩行時、T-Supportを装用した歩行時、T-Supportサウンドシステムを使用した歩行時の10m歩行所要時間、ステップ数、荷重応答期における足関節底屈運動時に短下肢装具の油圧ダンパーが発生する制動力(以下ファーストピーク)、前遊脚期から遊脚初期における足関節底屈運動時の油圧ダンパーの制動力(以下セカンドピーク)、立脚期の下腿三頭筋の筋活動量を比較しました。
まず、3つの条件の歩行の様子をご覧いただきます。

これは短下肢装具のみ装着した歩行動作です。
10ⅿ歩行所要時間が18.5秒と、もう少し歩行速度を向上させたい印象を持ちます。
歩容の特徴としては、麻痺側立脚後期にかけての股関節伸展動作が乏しいことがあげられます。
右下水色のグラフが下腿三頭筋の筋電図です。

T-Supportを装用します。
10ⅿ歩行所要時間が15.1秒と、歩行速度が向上します。
また麻痺側立脚期の股関節伸展が促されたことがわかると思います。
下腿三頭筋の筋活動も増大しています。
この状態で、T-Supportにサウンドシステムを装着します。

10ⅿ歩行所要時間はサウンドシステムを使用することで13.3秒と、さらに向上します。
ストライドが向上していることもおわかりいただけるかと思います。

結果をまとめます。
T-Support装用、さらにサウンドシステム使用により、歩行速度の向上が認められました。
歩数の減少から、速度向上に伴いストライドが増大していることがわかります。
立脚期の足関節機能をあらわす底屈制動モーメントでは、特に立脚後期のセカンドピーク値において、T-Supportの効果が表れています。
下腿三頭筋の筋活動については、T-Supportのみの使用時に最も活動量が増大し、サウンドシステム使用時はT-Supportのみ使用時に比べ活動量が減少していました。

考察です。
まず、T-Supportの弾性バンドの効果について考えます。
これまでの我々の検証により、T-Support装着により多くの片麻痺患者において、立脚後期の股関節伸展角度の増大、それに伴う足関節底屈モーメントの増大がみられることが明らかとなっています。
本症例においても、T-Supportの弾性バンドが立脚後期の下肢機能を向上させ、立脚後期の股関節伸展角度が増大し、立脚終期の足関節底屈を強めることにつながったと考えます。

次にサウンドシステムの影響について考えます。
聴覚刺激により、T-Supportのみの場合に比べ、さらなる歩行速度の向上が認められました。
このとき歩数は減少しており、さらにストライドが延長したことがわかります。
今回我々が下腿三頭筋の筋活動の変化を検証しようとした理由は、ストライドが延長したことにより、相対的に立脚後期の足関節下腿三頭筋が伸長されることで、その活動量が増大するのではないかと考えたからです。
しかし立脚期の下腿三頭筋は、サウンドシステムを使用することで減少しました。
これについてはいくつかの理由が考えられます。
一つは、立脚期全体の筋活動量を解析したため、下腿三頭筋が下肢の推進力に貢献するとされるミッドスタンスからターミナルスタンスにかけての活動量自体の変化をどこまで拾えたかが不明であること。
もう一つは、これは抄録では触れていないのですが、本症例では歩行時の前脛骨筋の筋電図測定も実施していました。
T-Supportのみでは歩行時に持続的に見られていた立脚期の前脛骨筋の筋収縮が、サウンドシステム使用時には立脚期に休止するタイミングが表れています。
このことから、聴覚刺激による立脚期の下腿筋群の同時収縮の改善による下肢機能への影響も考える必要があるのではないかと考えました。
この点については今後詳細な検証が必要であると考えます。

まとめです。
回復期脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニング時に、股関節伸展動作に伴う聴覚刺激を発生する機器を使用し、即時的に歩行速度の向上が見られました。
聴覚刺激による歩行様式・筋収縮の様式の変化については不明な部分も多く、今後も継続して検証を行う必要があると考えます。
3本目、神経理学療法学会2016 やまもとくん
そして4本目、アサイくんが。


はじめに
近年、脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニングにおいて、聴覚刺激をもちいることがトレーニング効果を高めるという報告があります。
しかしその多くは、メトロノームなどを用い、一定のリズムに合わせて歩行動作を行った場合の効果に関するものです。
今回、歩行時の股関節伸展動作に伴う聴覚刺激を用いた歩行トレーニングの効果を検証したので報告します。

聴覚刺激を発生させるために使用したのは、歩行補助具T-Supportです。
ご存知の方も多いと思いますが、T-Supportは麻痺側下肢に弾性バンドを装着し、その張力により立脚期後半の股関節機能をサポートします。
T-Supportは装着肢の股関節が伸展するほど弾性バンドに張力が発生します.
この構造を利用し、現在我々は

聴覚刺激装置T-Suppportサウンドシステムを開発しています。
T-SupportサウンドシステムはT-Supportの弾性バンドの上部に取り付けた張力センサーがバンドの伸張を感知しスピーカーから電子音がなる装置です。
(ここで実際に浅井君が音の鳴る様子を見せる)
このように、弾性バンドの伸張増大に伴い音階が上がるため、装着肢の下肢のアライメントに関する情報を聴覚から得ることができます。
現在当院において、どのような場合の歩行トレーニングに効果をより高めるのか、検証作業を進めています。

本日ご紹介するのは、T-Supportサウンドシステムを併用することでより治療効果が高まった症例の1人です。
その経過をご紹介します。

対象は初発脳卒中片麻痺患者で60代男性でした。
ブルンストロームステージ左下肢Ⅳ、高次脳機能、認知面に問題はありませんでした。
長下肢装具を用いた歩行トレーニングを中心に行い、下肢の支持性向上に伴いカットダウンを実施しましたが、このように麻痺側立脚後期に過度な骨盤後方回旋、体幹前傾が生じていました。

サウンドシステムを使用する事で麻痺側立脚後期の過度な骨盤後方回旋、体幹前傾は軽減し、しっかりと蹴り出せるようになっている印象を受けます。
そこで、本症例においてサウンドシステムを用いることが、運動にどのような影響を及ぼしているのかを検証することとしました。

本症例の歩行能力を向上させるためには、特にこの立脚後期のアライメントの修正が重要であると考えました。
そこで、T-Supportを併用した介助下でのトレーニングを行いました。
T-Supportを使用し、セラピストが後方から軽く触れる程度の介助を行うと、姿勢の修正は容易でした。
しかし、T-Supportのみ使用して歩行すると姿勢の崩れが出現しました。

こちらがT-Supportのみを使用した歩行です。
麻痺側立脚後期の過度な骨盤後方回旋、体幹前傾に軽減は見れず、蹴り出しも乏しい状態でした。
姿勢の崩れに対し、映像や声かけなどでフィードバックしましたが、この様な姿勢は修正できず、1ヶ月以上が経過しました。

ここで問題点を整理します。
本症例は当院入院前に下肢の支持性が乏しい状態で短下肢装具を用いた歩行トレーニングを実施しており、立脚後半の姿勢の崩れはその結果、生じたものではないかと考えました。
本人も姿勢の崩れを認識していましたが、介助下でのトレーニングでは修正は困難な状況でした。
そこで、新たな運動学習の機会が必要と考えました。
運動学習の課程において、随意運動と感覚フィードバックが必要と言われています。
セラピストの介助と言う受動的な動作ではなく、自身で音を鳴らすという能動的な動作を取り入れることで変化が起きることを期待しました。

サウンドシステムを使用する事で麻痺側立脚後期の過度な骨盤後方回旋、体幹前傾は軽減し、しっかりと蹴り出せるようになっている印象を受けます。
そこで、本症例においてサウンドシステムを用いることが、運動にどのような影響を及ぼしているのかを検証することとしました。

方法は杖のみを使用したAFO条件、T-Supportを使用したTS条件、TSサウンドシステムを使用した聴覚フィードバック条件としました。
測定項目は,歩行速度、前遊脚期の足関節底屈トルク(Second Peak)、立脚後期における内側腓腹筋の筋活動量とし、聴覚刺激を用いた10日間の変化を調べました。
セカンドピークと立脚後期の腓腹筋活動量を測定項目とした理由は、これらが立脚後半の下肢機能の変化を表す指標であり、本症例の立脚後半の運動の変化、下肢機能の変化を推察することが可能であると考えたからです。

結果です。
歩行速度の変化です。
黄色がAFO条件、灰色がTS条件、緑が聴覚フィードバック条件です。
左側の3つのグラフが、聴覚刺激介入開始時の3条件の値で、右側の3つのグラフが、10日間の聴覚刺激介入を行った後の3条件の値です。
聴覚フィードバックを用いることで即時的に歩行速度は低下しましたが、10日間の使用によりAFO条件での歩行速度は向上しました。

セカンドピークの結果です。
特に介入開始時、聴覚FB条件下で著明な向上が認められました。
また10日間介入後には、全ての条件下で向上していました。

腓腹筋内側頭の筋活動量です。
介入開始時、TS・聴覚FBにおいて活動量が増大し、10日間介入後は全ての条件下にておいて増大していました。

歩容はAFOと杖を使用しての条件で比較しました。介入開始時と比較し10日間介入後は過度な骨盤後方回旋、体幹前傾は減少しました。

考察です。歩容の修正に難渋した約1か月の間、症例に対しては麻痺側立脚後期のアライメントの崩れを映像などを用いて繰り返しフィードバックしました。
症例からも、立脚後期の姿勢の崩れは理解しておられる様子でしたが、歩行時、どのように身体を動かして姿勢を修正すればよいのかがわかりにくい、という訴えが聞かれていました。
TSサウンドシステムを使用した初日、股関節伸展に伴う電子音により、症例からは、「ここで音を鳴らすことに意識を集中することで、どのような姿勢をとればよいのかがとてもわかりやすくなった」という感想が聞かれました。
このことからT-Supportサウンドシステムの効果とは、聴覚を用いることで立脚後期における股関節のアライメントを学習しやすくさせ、また、能動的な運動により良い運動学習につながったと考ます。

まとめです。
脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニングにおいて聴覚刺激を用いることの有用性が明らかとなりました。
これで発表を終わります。
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プロフィール
- ニックネーム
- 中谷知生
Tomoki Nakatani - 所在地
- 兵庫県宝塚市にある、宝塚リハビリテーション病院に勤めています。
- 職業
- 理学療法士です。
Certificated physical therapist in Neurology
- 自己紹介
- I am interested in physiotherapy for improvement of gait ability of a patient with stroke hemiplegia.
And I'm a member of Japan Physical Therapy Association stroke guideline crew.
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