9.T-Support使用時にケツにパッドを用いる研究

T-Supportの付属品に、
『後方介助パッド』
っていうのがあるのね。
セラピストが後方から介助するときに、患者さんのケツに一枚かますことで、股関節の伸展を出しやすくなるん。
もともとはね、宝塚リハビリテーション病院のセラピストが、患者さんを後方から介助して歩行練習するときに、患者さんの
ケツの部分に厚手のタオルを畳んで、かましてたん。
そうしたら確かに、介助しながら後方介助がしやすいん。
でもね、タオルって、介助してるうちにずれてきたり、落ちたりするん。
で、川村義肢さんに相談して、T-Supportの付属品として作ってもらったわけ。
だから、最初は、
ケツに当てるパッド→ケツパッド→KPD
って呼んでたん。
ただ最終的にね、川村義肢さんから、
『商品名にケツ、というのはちょっと…』
って話になってね。
後方介助パッド、って何とも締まりのわるい商品名になったわけだけれども。
ケツだけに締まりが悪い…なんつってね。
HAHAHA。
誰が上手いこと言えと…

良いと思うんだけどな。
ボキ、ケツ好きやもん。

閑話休題。
じゃぁケツパッド後方介助パッドに関する発表をまとめてみようか。

9-1.まずはシングルケースで見てみよう。

これは2015年の第31回日本義肢装具学会学術大会でボキが発表した内容さ。
改めて見返してみると…数値的にはそんなに劇的な変化じゃないんだな。
発表で質問されたもん。
『この数値の変化に、いかほどの意味があるのですか?』
って。
ボキ、発表のときにね、めちゃくちゃ二日酔いだったの。
まじで発表中に吐くんじゃないかというくらい。
だから…
『はぃ、意味無いかもしれませんね』
って答えちゃったくらいさ。
本当は違うんだけどね。

そんな発表です。
まぁスライド見てちょ。

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発表に先立ちまして、まず、T-Supportとは一体何なのか、というお話から始めたいとおもいます。
当院では多くの脳卒中片麻痺患者さんの歩行トレーニングにおいて、積極的に下肢装具を使用しています。
T-Supportは、下肢装具と体幹部分をゴムバンドで連結することで、患者さんがもっと歩きやすくすることを目的として、当院と川村義肢が共同で、2011年より開発を進めて参りました、歩行補助具の名称です。

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2011年より開発を進めて参りまして、様々な試作品による効果検証を行ってきました。
ようやく納得できるものが出来上がりまして、近日中に販売が開始される予定です。
ここで商品名のT-Supportの意味を説明しておきたいと思います。

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T-SupportのTには3つの意味が隠されているんですね。
一つは、私の職場である宝塚リハビリテーション病院のT。
もう一つは、体幹、トランクのT、ですね。
T-Supportは基本的に体幹部分を支持する機能がありますので、それを表しています。
で、3つ目が、私、中谷知生と申しますが、そのトモキんのT、ですね。
これ、まぁどうでもいい豆知識ですね。

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T-Supportの効果は大きく分けると2つあります。
一つは、スイングフェーズにおいて、股関節屈曲モーメントを増大させる効果です。
これにより、楽に脚を振り出せるようになります。
もう一つは、スタンスフェーズにおいて、膝関節伸展モーメントを増大させる効果です。
これにより、脚の踏ん張りが効く、具体的に言うと、立脚期の膝折れをコントロールできます。
なぜこのような効果があるのか。

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それは、装着肢前面のゴムバンドによる影響です。
T-Supportは装着下肢の股関節を伸展すればするほど、ゴムバンドが伸長され、張力が発生します。
この張力は、股関節屈曲報告かつ、膝関節伸展方向の力を発揮します。
ですから、T-Supportを用いた歩行トレーニングでは、いかにして装着肢の股関節を伸展位で保持するか、ということが重要です。

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今回の発表のテーマは、介助歩行トレーニングにおいて、いかにして股関節伸展位を保持するのか?ということです。

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今から紹介する症例は、T-Support使用時に、臀部に後方介助パッド、略してKPDという道具を一枚かますことで、股関節伸展を行いやすくなりました。
まず初めに、KPDとはどういう道具であるかをご説明します。
後方介助パッドは、この黒いやつです。
やや硬いスポンジ状の物体で、厚さは3センチ程度です。
T-Support本体とベルクロで着脱する構造になっています。
横から見るとこういう状態ですね。
これを後方介助歩行時に一枚かますことで介助ががらっと変わります。

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これが実際にかました状態ですね。
後方介助歩行でこの臀部をしっかりと押すというのは結構難しいんですが、
パッドがぐいと押してくれます。
では運動がどのように変化しているのかを見てみます。

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症例は、40歳代の男性で、右被殻出血による左片麻痺、ブルンストロームステージは3でした。
当院にて長下肢装具を作成し、継続的にT-Supoortを使用した介助歩行トレーニングを行ってきました。
今回の検証時は、主に短下肢装具を用いたフリーハンド歩行練習を中心に行っていました。
本症例の介助歩行時に、後方介助パッドを使用した場合と、しなかった場合を比較してみました。

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ゲイトジャッジシステムの特徴は、ゲイトソリューションの油圧ユニットに発生する底屈トルク値を緑グラフで、また足関節角度を白いグラフで表示します。
足関節の角度は、基線より上が背屈・下が底屈です。
これはKPDを使用していない歩行ですね。
特にこの臀部に着目してごらんください。

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こちらは、KPDを使用した介助歩行です。
先ほどの動画と比べて、ざっと見た感じで、臀部が前方に押されている感じがおわかりいただけるかと思います。
踵接地時の足関節底屈トルクと、立脚後期での足関節背屈角度も増大した印象を受けます。

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両者を並べてみます。

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後方介助パッドをかますことで、歩行速度の向上、ストライドの増大、ファーストピーク値の増大、これはより強い踵接地が促されたということですね。
そしてターミナルスタンスでの背屈角度の増大が見られました。
これはおそらく、相対的に股関節伸展角度の増大を表しているものと考えます。
これらの変化は治療上非常に意義深い変化であると考えています。

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片麻痺患者さんの歩行能力を向上させるうえで、麻痺側下肢ターミナルスタンスにおいて股関節伸展かつ足関節背屈位を保持するということはスムーズなスイングを確保するうえで重要です。
しかし多くの患者さんがこのアライメントをとることを避けたがる傾向にあります。
ですから、我々理学療法士が介助を行う際には、しっかりとこの姿勢を誘導し、患者さんに覚えていただく必要があります。
今回の検証でわかったことは、T-Supportを用いた介助歩行時に後方介助パッドを一枚かますことで、治療上より有効であると考えられるアライメントを保持することが可能である、ということです。
今回は短下肢装具を用いた歩行トレーニング時の変化について報告しましたが、当院では長下肢装具を用いた介助歩行練習時から、積極的にKPDを使用し、しっかりと股関節を伸展させたアライメントを学習していただくよう心がけており、より効果的なトレーニングが可能となっている印象を抱いています。

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…とまぁ、そういうことですわ。
後方介助パッドに関しては、当院理学療法士のモリイちゃんが結構面白い発表してるの。
次はそれを見てもらおうか。

9-2.患者さんのケツにナニを挟んで、セラピストがかわるがわるあんなことやこんなことを…って研究

これ、2016年の第52回理学療法学術大会でモリイちゃんが発表した内容。
1名の患者さんで、後方介助パッド使用時と未使用時の股関節の角度の変化を検証したの。
まぁ見てみて。

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はじめに
脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニングにおいて、長下肢装具を使用した歩行トレーニングは麻痺側立脚期の支持性を保証し、適切なアライメントの保持を容易なものとするため、高い治療効果があるとされています。
この特性を活かすため、当院では長下肢装具を使用した介助歩行トレーニングはフリーハンド後方介助で行い、立脚後期に股関節伸展位を促すことを重視しています。
しかし後方介助歩行場面においてセラピストの両上肢は体幹支持や麻痺側下肢の振り出しに使用することが多く、骨盤帯の側方動揺や後方回旋といった逸脱動作の制御が難しいため、麻痺側立脚後期の股関節伸展が不十分となりやすい傾向にあります。

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そこで今回、当院と川村義肢株式会社が共同で開発した歩行補助具T-Supportの付属品として、後方介助歩行時の骨盤動揺を軽減し、麻痺側立脚後期で股関節伸展を促すことを目的とした後方介助パッド(以下KPD)を作成しました。
T-Supportとは、麻痺側立脚後期に股関節を伸展させることで伸張された弾性バンドが下肢の振り出しを補助する歩行補助具であり、当院では長下肢装具を用いたフリーハンド後方介助歩行練習場面において積極的に使用しています。
本研究の目的は、T-Supportを用いた後方介助歩行時に KPDを併用することが麻痺側立脚後期の股関節伸展角度に与える影響を明らかにすることです。

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KPDとは、厚さ3p程度のポリウレタンで作成し、T-Supportに面ファスナーで接続させることで、装着者の腰部から臀部の任意の場所に配置することができます。
今回、麻痺側立脚期の股関節伸展角度に与える影響について検証するため、KPDを麻痺側臀部に配置しました。

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対象は当院に所属する理学療法士13名(男性9名、女性4名)としました。
症例は脳梗塞左片麻痺を呈し当院にて長下肢装具を用いたフリーハンド後方介助歩行を行っている女性です。身長145p、体重57.5sとふくよかな体形であり、麻痺側立脚期に重心の上前方移動が難しく、特に立脚中期から後期にかけて体幹屈曲・骨盤左回旋・側方動揺が著明にみられ、フリーハンド後方介助では体幹伸展位の保持・麻痺側下肢の振り出しと骨盤帯の逸脱動作抑制に介助が必要で、中等度以上の介助を要していました。

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方法です。
長下肢装具を用いた歩行トレーニングを行っている患者1名の、フリーハンド後方介助歩行における麻痺側立脚後期の股関節伸展角度を計測し、T-Support装着下での介助歩行と、T-SupportとKPDを併用した介助歩行の2条件を比較しました。

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結果と考察です。
麻痺側立脚後期の股関節伸展角度の平均値はT-Support群が16.3°、T-Support・KPD併用群が20.0°となり、統計学的有意差を認めました。
このことから、装着者の臀部と介助者の骨盤前面の間にKPDを挟むことで、骨盤帯の後方回旋を抑制することが容易となり、麻痺側立脚後期の股関節伸展角度の増大につながったと考えます。

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これは女性セラピストの介助歩行時の画像です。
T-Supportのみの使用時と比較し、KPD併用時に麻痺側臀部後退や骨盤の左回旋が抑制され、股関節伸展角度が増大し、非麻痺側のストライドが延長していることが分かります。
女性セラピスト4名「の股関節伸展角度変化の平均は5.3度でした。

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次に、男性セラピストの介助歩行場面です。
女性セラピストと比較すると股関節伸展角度の変化は少ない傾向ではありましたが、男性セラピスト9名の股関節伸展角度変化の平均は3度であり、伸展角度に増大がみられました。

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以上のことより、装着者の臀部と介助者の骨盤前面の間にKPDを挟むことで臀部後退や骨盤回旋といった逸脱動作を抑制することが容易となり、麻痺側立脚後期の股関節伸展角度増大につながったと考えます。
今回ご協力いただいた症例のように介助量が大きく、体幹や麻痺側下肢振り出し操作にセラピストの両上肢がとられる場合において、麻痺側立脚後期の股関節伸展角度は不十分となることが多いと感じます。その中で、今回の検証を通し、KPDは長下肢装具を用いた歩行トレーニングの効果を高める歩行補助具であることが示唆されたと考えます。

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最後に、統計学的な有意差は見られませんでしたが傾向があった点についてです。
男女での角度変化については、女性セラピストは平均5.3度、KPDを併用することで股関節伸展角度が増大していますが、男性セラピストでは3.0度の増大となり、身長が低く介助者負担が大きいセラピストでより効果を発揮しやすい傾向となっていました。さらに、女性セラピストからは介助量が軽減したとの感想も聞かれました。
また、男性セラピストの身長平均である170pを基準とし、170p以下・170p以上で分けた場合にもわずかですが角度平均に違いがみられました。
そのため、小柄な女性セラピストや、患者と体格が近い場合に、より効果を発揮しやすい傾向がみられました。
今後もどのような症例やセラピストでよりKPDが効果を発揮しやすいか検証を進めていきたいと思います。

以上で発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。




…って内容さ。
面白いでしょ?
ちなみにこの発表の座長は京大の大畑先生だったの。
『面白い内容です』
ってほめてもらったよ。
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これ、発表中のモリイちゃん。



…ちなみにね、どうでもよい話だけど、ボキ、この学会、ジーパンで参加したんだ。
理学療法がらみの学会の、スーツがデフォってドレスコードは何の役にも立ってないと思うから。
で、勇気をもってジーパンで参加したら、この会場に、広南病院のヒロニキが来てて。
その恰好がこれですよ。
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ヒロニキには勝てない。
なにをしても勝てない。
そう思った瞬間だったわけさ。

 

プロフィール画像
ニックネーム
中谷知生
所在地
兵庫県宝塚市にある、宝塚リハビリテーション病院に勤めています。
職業
理学療法士です。

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