芸能人ダイエット方法

1.T-Supportが完成するまでの研究


おそらく日本の、いや世界中の理学療法士のなかで、ボキほど片麻痺患者さんの麻痺側下肢にゴムバンドを巻いた人間はいないでしょう。
そしてボキほど、片麻痺患者さんの麻痺側下肢にゴムバンドを巻いたらどんな変化があったかを学会発表してきた人間はいないでしょう。
初めて、ゴムバンドのことを学会で発表したのはいつだったか…調べなおしてみたら、2012年の第28回日本義肢装具学会学術大会でした。
これは名古屋であったんだよね。

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これ、ブログにのっけてた写真。
ランチョンセミナーでさ、大畑先生がゲイトジャッジのお話をするっていうから、ボキ、朝5時に家を出て名古屋に向かったんだ。
ランチョンの参加券を入手するためにね。

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で、名古屋の会場で、川村義肢のドラえもん安井氏に、まだ開発途上だったゲイトジャッジを見せてもらったのだ。
これを初めて見たときはドキドキしたもんですよ。


…いや、前置きが長くなったけど、とにかくこの名古屋の義肢装具学会学術大会で、初めてゴムバンドで麻痺側下肢を引っ張る、って発表をしたのだ。
発表が終わったらすぐに新幹線に乗って京都に戻って、京都から近鉄電車で奈良に向かったの。
奈良では同じ日に近畿学会が開催されてて、会場まで走っていったら、ちょうどモリイちゃんの発表に間に合ったの。
懐かしいね。

あ、ごめん、まったく関係ない話になってしまった。
とにかく2012年、ボキ、初めてT-Supportの原点となる発表をしたのだ。
この発表が、座長の推薦を受けることになって、最終的に義肢装具学会誌で論文(っていうか短報?)になったんだけどね。
じゃあその発表内容を見てもらおうか。
 

1-1.これがT-Supportの原点の発表だ!


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近年、脳卒中片麻痺患者の歩行練習において長下肢装具を使用する機会が増えており、そのメリットは多くの先行研究で報告されています。
私も日々の臨床において長下肢装具を積極的に用いていますが、歩行練習を行う上で、上手く利用することが難しいなぁと感じることがあります。
それは、麻痺側下肢のスイングのしにくさのために、体幹が側屈するなどの代償動作がでたり、がんばってスイングしようとするために筋緊張が亢進したりして、肝心の歩行速度が低下してしまうことがあるという点です。
そこで今回、長下肢装具を装着した状態でのトレーニングの質を向上させることを目的とした、股関節屈曲補助バンドを作ってみましたので、その効果について聞いていただきたいと思います。

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まず、なぜそのようなものを作ろうとしたのか、そのきっかけについてお話しようと思います。
きっかけはとある患者さんでした。
その患者さんは、長下肢装具を装着した歩行において、プレスイングからイニシャルスイングにかけて、どうしても力んでしまって、代償動作、特に体幹の側屈が強く見られました。
麻痺側下肢が重たい、重たいと言われて、そのためにいろんなしてほしくない動作で下肢をスイングしようとされます。
そこで、いっそのこと筋トレ用のセラバンドを装具にくくりつけて、ひっぱってみたらどうだろう、と思ったんですね。

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これが運動をがらっと変えるんですよ。
速く歩けるようになり、かつ患者さんからは歩くのが楽になった、という感想が聞かれました。
これは川村義肢社製ゲイトジャッジシステムで評価している動画で、左が普通に歩いた状態、右がセラバンドで引っ張ってる状態です。
一番おもしろいと思ったのは、股関節の運動の変化ですね。
青いグラフは股関節の角度で、+方向が屈曲、-方向が伸展を示しています。
股関節の屈曲を補助するバンドを装着することで、ターミナルスタンスにおける股関節の伸展角度が増大しているように見えます。

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で、これは面白い、ということで、こんな股関節屈曲補助バンドを作成してみました。
イメージとしては、股関節屈曲のキーマッスルである、大腰筋を補助するイメージです。
今回の発表は、この補助バンドを装着した場合に、歩行がどう変化するかを調査してみました。

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対象としたのは6名の脳卒中片麻痺患者で、すべて本人用の長下肢装具を用いた歩行練習を行っていました。
評価指標としては、10m歩行時の速度や歩数の他に、川村義肢株式会社製Gait Judge Systemを用い計測されるイニシャルコンタクトからローディングレスポンスに装具に発生する底屈トルク値、これをファーストピークと呼びます、およびターミナルスタンスにおける股関節伸展角度を測定しました。

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10m歩行所要時間は有意に短縮しました。

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歩数も有意に減少しました。

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ファーストピーク値は有意に増大しました。

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ターミナルスタンスの股関節伸展角度については、4症例で増大しましたが、2症例では減少しており、このパラメータのみ、有意差が認められませんでした。

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この補助バンドが、歩行補助具として優れている点はどこにあるのか考えてみました。
随意性の低下した片麻痺患者がスムーズなスイングを行うには、ターミナルスタンスにおいて股関節を伸展させることが重要と言われています。
なぜならば、股関節を伸展位とすることで、大腿骨頭を大腰筋の靭帯部分が後方へと押し返し、股関節は屈曲方向へと動くとされているからです。
しかし、私の経験上、多くの片麻痺患者さんは麻痺側下肢が引っかかることを恐れ、歩行時に麻痺側下肢の股関節伸展位を避けようとします。
また、股関節伸展位を取ったとしても、そこからさまざまな代償動作を用いたスイングをしようとする傾向にあります。
補助バンドは、麻痺側股関節が伸展位となった時にゴムの張力が発生し、股関節屈曲運動をアシストする構造となっているため、患者さんに覚えていただきたい姿勢や、リラックスしたスイングを覚えていただける、そういう効果が期待できるのではないかと考えています。

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しかし、注意しなければならない点があります。
この動画がその例なんですが、特に筋緊張の低下が著明な症例では、このバンドを装着した上で、少々股関節を伸展させたとしても、そう簡単にはスイングできない場合があります。
そうなると、人間どうしてもゴムのテンションを強く引っ張りたくなるんですね。
ところがこの補助バンドは、骨盤帯と大腿前面を引っ張る構造になっていますので、テンションを上げれば上げるほど、股関節が十分な伸展位となる前に、ゴムの張力でスイングが始まってしまうことになります。
今回、2症例において股関節伸展域が減少した原因は、その結果ではないかと思われました。
重要なのは、しっかり骨盤を起こした状態で、股関節伸展位での運動を覚えてもらうことであり、そこを意識していないと、ただバンドで引っ張っただけのトレーニングになってしまいかねません。

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その点を反省し、現在、体幹部までをサポートする新型の補助バンドを作成しており、この効果については近々発表したいと考えています。
今回の発表をまとめますと、長下肢装具を用いた歩行練習において、股関節屈曲補助バンドを使用することは、より良い運動方法を学習させ、トレーニングの効果を増大させるものであると考えます。



…って内容です。
うん、今ボキが考えていることと、基本的には同じです。
変わってません。
そして同じ2012年度、第2回脳血管障害への下肢装具カンファレンスで、初めてT-Supportってキーワードが登場するわけです。

1-2.初めて人前でT-Supportってことばを発表するときは、緊張したんだから!


さて、義肢装具学会で初めてゴムバンド療法について発表して、意外と好評だったことに機嫌をよくした私は、下肢装具カンファレンスで発表することにしたのです。
それが、これ。

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よろしくお願いします。
まず、今日何をお話しするかをお伝えします。
最初に、長下肢装具を用いた歩行練習の難しさについて、私が感じていることをお伝えします。
その次に、それを解決するために作ってみた、股関節屈曲補助バンド2つをご紹介します。
そして最後に、そのバンドの形状の違いにより歩行時の股関節伸展角度にどのような影響があるかを考えてみます。
それらを通して、『あ、この股関節屈曲補助バンドを一度使ってみよう』と思っていただくことが、発表の目的です。
では早速本題に入ります。

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私は回復期リハビリテーション病棟にて理学療法士をしておりまして、日々、脳卒中片麻痺患者さんの歩行練習において、長下肢装具を頻繁に用います。
長下肢装具の高い治療効果を日々実感しておりますが、一方で、上手く使いこなすということが難しい道具でもあるな、とも思います。
どういう点が難しいのか。
私がよく感じるのは、『長下肢装具を作成した直後において、装具を装着したら足が出にくくなる、出にくくなる足を何とか頑張って出そうとするから、体幹側屈などの代償動作が出る、頑張って出そうとするから筋緊張が亢進する』ということです。
こうしたことを防ぐにはどうしたらいいのか。
自分なりにいろいろ考えてみまして。


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股関節屈曲のキーマッスルである、大腰筋をしっかり補助すれば、もっと楽に足が出るのではないかと考えました。

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そこでまず最初に作成したのが、股関節屈曲補助バンドの記念すべき第一号、骨盤ベルトタイプです。
こちら、写真で見ていただければおわかりになると思いますが、骨盤に巻いたベルトから、ゴムバンドが垂れ下がっています。
このゴムバンドを大腿カフのベルトに巻きつけまして、股関節伸展位を取った際に、バンドが股関節屈曲方向への張力を発揮するというものです。
これ、先ほども骨盤ベルトタイプ、とご紹介しましたが、当院では『人工大腰筋』と呼んでおります。
ネーミングセンスには多少自信がありませんので、フォントを小さくしておりますが、本日の発表では人工大腰筋と呼ばせていただきます。
ではこれを使用することでどんな効果があるのでしょうか。

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こちらは、右下肢に長下肢装具を装着した症例の歩行を、ゲイトジャッジで評価した動画です。
左側は長下肢装具のみ。
右側は人工大腰筋を装着しています。
ゲイトジャッジの各波形について簡単に説明しますと、この赤い波はゲイトソリューションにどのタイミングで油圧が発生しているかを示します。
青い波は股関節の屈曲・伸展角度を表しており、基線より上が屈曲を、基線より下が伸展を表します。
この動画からわかることは、
装着することで、
・歩行スピードが速くなり、
・ストライドが増大し、
・ローディングレスポンスにおけるゲイトソリューションの底屈トルクが増大する、ということです。
これはなかなかいいんじゃないだろうか、ということで。

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これに更なる改良を加えたのが、こちらの体幹ベルトタイプですね。
こちらは、我々は『T-support』と呼んでいます。
このT-support、のTには様々な意味が込められているのですが、主たる意味としては、体幹、TrunkのT、という意味合いが強いですね。
つまり従来の骨盤ベルトタイプに、体幹機能をサポートする目的を加えているんですね。

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こちらは、左側が長下肢装具、右側が装具に加えてT-supportを装着した動画です。
この動画からわかることは、
装着することで、骨盤ベルトタイプと同様、
・歩行スピードが速くなり、
・ストライドが増大し、
・ローディングレスポンスにおけるゲイトソリューションの底屈トルクが増大する、ということです。
複数の症例に装着し、人工大腰筋、T-supportの効果を比較してみたところ、面白いことがわかりました。

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この赤で囲った部分が、人工大腰筋・T-supportに共通する効果です。
既に述べたように、歩行スピードが向上し、ファーストピークが増大し、歩行時の代償動作が減少します。
一方で、歩行時の股関節伸展角度の変化については、両者で違いがあるんですね。

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これは、人工大腰筋装着によりターミナルスタンスでの股関節伸展角度がどう変化するかを調べたものです。
脳卒中片麻痺患者6症例で調べました。
股関節伸展角度が増大した症例が多いように感じられたのですが、統計学上の有意差は得られませんでした。
(6症例での歩行周期における股関節最大伸展角度は装着前が7.2°
装着後が6.9°と、わずかに屈曲方向へとシフトしています)

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こちらが、T-support装着によるターミナルスタンスでの股関節伸展角度の変化です。
脳卒中片麻痺患者10症例で調べました。
こちらでは有意に股関節伸展角度の増大が認められました。
私の尊敬している吉尾先生も繰り返し言っておられますが、脳卒中片麻痺患者の歩行において、スムーズなスイングを行うためには股関節を伸展させる、ということが非常に重要と言われており、これについて有意差があるとない、ということは非常に大きな意味があるのではないかと考えました。
ではなぜ人工大腰筋とT-supportで、股関節伸展角度に違いがみられるのでしょうか。
(10症例での歩行周期における股関節最大伸展角度は装着前が1.2°
装着後が4.9°と、伸展方向へとシフトしています)

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そのひとつの要因として、やはりT-supportによる体幹機能のサポートが影響しているのではないかと考えています。
この画像は、左が長下肢装具、右が長下肢装具にT-supportを装着した状態です。
これは今から歩き始めようとしている瞬間ですね。
静止立位なんですけれども。
この段階で、この青のグラフを見ていただきたいのですが、右のT-support装着時に、股関節伸展角度が10°以上増大しています。
ここが非常に重要なポイントではないかと考えています。

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T-supportでは、股関節前面だけではなく、大腿後面にもバンドがあり、体幹伸展方向へとテンションをかけるような構造になっています。
これによって、体幹機能をサポートした歩行トレーニングが可能となったのではないかと考えました。
以上のことから、長下肢装具の歩行トレーニング時に使用する補助バンドは、体幹伸展機能を補助する機能を付加することで、より力学的に有利なスイング動作を行うことを可能とするのではないかと考えています。
現在当院で使用しているのは、T-supportをさらに改良し、このような形のものを使用しています。
今後もあらゆる手を使って、長下肢装具の治療効果を高められるような工夫を考えていきたいと思っています。
以上で発表を終わります。
ありがとうございました。




…というわけで、この2012年度の2本の発表が、ボキたちが世間にゴムノミクスを提案した最初だったのだ。
この、初めてT-Supportと名付けられたモノで、2013年の第48回理学療法学術大会で発表したのです。
次はそれを見てもらいましょうか。

1-3.2013年、初めて全国学会で発表したT-Supportに関するデータ。

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本学会のテーマは『グローバルスタンダード』であります。
そして、我々理学療法士にとってスタンダードである、理学療法診療ガイドライン第1版では、脳卒中の装具療法について、肩から足部まで弾性ストラップでつないで制御する新しい装具の使用により、脳卒中片麻痺患者の歩行スピードの向上・エネルギーコストの改善が認められる、という文献が引用されています。
私はこの文言を初めて目にしたとき、非常に興奮しました。
なんて素晴らしい道具がこの世に存在したんだ、と。

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そして、その文献を読んでみると、その新しい装具はCvAidという、このような歩行補助具であることがわかりました。
このようなストラップを用いた片麻痺患者のトレーニングの有効性がガイドラインで紹介されていますが、実際に我々がこのような道具を使用した歩行トレーニングを行っているでしょうか。
いや、いない、と私は思います。
さて、これから私がお話するのは、このような弾性ストラップを併用した片麻痺患者の歩行トレーニングを行うことに多くのメリットがあるのではないか、という内容です。

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当院では脳卒中片麻痺患者さんの歩行練習において、長下肢装具を頻繁に用いております。
私はこれを上手く使いこなすということが難しい道具だな、と思います。
どういう点が難しいのか。
私がよく感じるのは、『長下肢装具を装着したら歩行スピードが上げにくい』という部分です。
どうしたらスピードが上がるのか。

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そこで我々が考案したのが、T-supportという歩行補助具です。
こちら、ぱっと見た感じは、冒頭に見ていただいたCVエイドに似ているように思われるかもしれませんが、ま、一部形状を参考にした部分はあるのですが、その弾性ストラップを長下肢装具に接続できるようになっている、というのが最大の特徴です。
ではこれを装着するとどのような効果があるのでしょうか。

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対象は当院で長下肢装具を作成し、歩行トレーニングを行っている脳卒中片麻痺患者10名としました。
測定方法は、T-supportを装着したときとしていないときで、10m歩行所要時間・ファーストピーク値・股関節伸展角度などがどう変化するかを比較しました。
測定には川村義肢社製ゲイトジャッジシステムを使用しました。

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結果に移ります。
10m歩行の所要時間は平均24.8秒から19.3秒へと有意に減少し、歩行スピードが向上することがわかりました。

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FP値は3.9 Nmから4.9 Nmへと有意に増大しました。

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またTStでの股関節伸展角度は-1.2°から-4.9°へと有意に増大しました。

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結果をまとめると、T-Supportの使用により歩行スピードを向上させ、ゲイトソリューションの底屈制動力をより強く発揮させ、ターミナルスタンスでの股関節伸展位での運動を促すことが可能になるということがわかりました。
これらは、脳卒中片麻痺患者の歩行練習において力学的に重要な事項であると思われ、このことから、T-Supportの使用により歩行トレーニングの効果が増大するということができると思われます。

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ではT-Supportを使用することで、なぜこのような効果が得られるのでしょうか。
私は、3つの要因があると考えています。
一つめは、T-supportによる体幹機能のサポートの影響です。
この画像は、上が長下肢装具、下が長下肢装具にT-supportを装着した状態です。
T-support装着により、股関節伸展角度が10°以上増大しています。
T-supportは、両肩で吊り下げた弾性バンドを長下肢装具の大腿カフ前面後面に巻きつけ、さらに下腹部をバンドで固定しています。
これにより使用者の骨盤をアップライトに保つ作用があり、その結果、体幹前面の筋が働きやすくなるのではないかと思われます。

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また、大腿前面の弾性バンドが股関節屈筋を補助することで、安定した股関節屈曲伸展運動をアシストし、より速いスイングを可能とします。

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最後に、大腿後面のバンドにより、イニシャルコンタクトからの荷重の受け継ぎ時に股関節伸展筋群を補助し、脳卒中片麻痺患者の特徴的な姿勢であるとされる過剰な体幹前傾を防ぐ機能があると思われます。
以上3点の効果により、より速いスイング、またアライメントの崩れを軽減させた歩行動作をアシストした結果、より効果的なトレーニングを可能としたのではないかと考えました。
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まとめます。
脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニングにおいて歩行スピードを向上させることの重要性が明らかになっています。
しかし従来のトレーニングにおいて我々は歩行スピードをどうやって向上させてきただろうか?
T-Supportは長下肢装具装着下での歩行スピードを向上させ、トレーニング効果を増大させる手段の一つであると考えています。



…これが初めて全国学会で発表したT-Supportの内容だったのでした。
そして同じ2013年、今度はサトウくんに、第25回兵庫県理学療法学術大会で継続的な利用について報告してもらったのだが…これが…

1-4.お前とお前、お前とお前、お前とお前…(ワカルヒトダケワカレバヨイ)

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それでは、脳卒中片麻痺患者の長下肢装具を用いた歩行トレーニングにおける股関節屈曲補助バンド(T-Support)が効力を発揮する期間の検討
について発表します、宝塚リハビリテーション病院の佐藤光です。よろしくお願いします。

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はじめに、理学療法診療ガイドラインにおいて、『回復期の姿勢・歩行練習』および『装具療法』は理学療法介入推奨グレードA、エビデンスレベル分類2と複数のランダム化比較研究により行うよう勧められる強い科学的根拠が示されています。
また、その中で「肩から足部まで弾性ストラップでつないで制御する新しい装具の使用により、装着直後にエネルギー消費が減少し、歩行速度と歩幅が向上し、3週間の装着後、さらにエネルギー消費に改善がみられた。」との研究報告が引用されています。
右の写真がその新しい装具の「CV Aid」です。

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当院では川村義肢株式会社と共同でT-Support(股関節屈曲補助バンド)を制作しました。
この写真がそのT-Supportです。当院ではよくGait Solution付き長下肢装具(GS-KAFO)にT-Supportを取り付けて歩行トレーニングを行います。
近年、歩行トレーニングにおいてはBruce Dobkinらにより歩行速度を高めることや、運動力学的に股関節機能の重要性が説かれています。
T-Supportは麻痺側下肢のスイングスピードを向上させ、歩行速度の向上に貢献できることが報告されていますが、
それらの多くは即時効果に関するものがほとんどであった為、今回、回復期の脳卒中患者においてT-Supportが効力を発揮する期間の検討をしました。

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対象は当院に入院していた左延髄梗塞の後遺症による右片麻痺の男性患者1名とし、GS-KAFOと、それに加えてT-Supportを用いた歩行の経時的変化を比較しました。
評価指標として10m歩行所要時間に加え、川村義肢株式会社製Gait Judge Systemを用い、足関節底屈トルク値であるFPとSP、およびTstにおける股関節伸展角度を計測しました。

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T-Supportを用いて歩行トレーニングを行い、5日経過したところでのGait Judge Systemによる比較動画です。
画面左側がKAFOのみの映像、右側がKAFOに加えT-Supportを用いた動画です。
上の赤い線のグラフが足関節の底屈トルク値を示しています。下の青い線が股関節の角度を示しており、上が屈曲方向、下が伸展方向になります。
5日経過時点で両者を比較すると、T-Supportを装着している方がFPのトルク値は小さいものの股関節伸展角度が大きく、10m歩行所要時間が短いことがわかります。

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25日経過した時点での比較映像です。
T-Supportを装着している方がSPのトルク値が高い数値を示しています。
しかし、10m歩行所要時間はGS-KAFOのみの方が速くなる結果に転じました。

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32日経過した時点の比較映像です。
GS-KAFOのみの歩行においてより10m歩行所要時間が短く、SPのトルク値も高い値を示し、股関節伸展角度も大きくなっています。

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結果、5日経過時点で、T-Supportを用いることで股関節伸展角度の増大と10m歩行所要時間の短縮を認めました。
しかし、25日経過時点で股関節伸展角度が減少し、 10m歩行所要時間が延長する結果に転じました。
そして、32日経過時点で全ての項目でT-Supportを用いない歩行において、より効果的な歩行トレーニングが可能となる歩行指標が計測されました。

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考察です。
5日経過時点ではTStにおける股関節伸展角度が増加していたことから、股関節の屈曲運動をT-Supportのバンドの張力に依存させることで、 運動力学的に効率的で、歩行速度を高めた歩行が可能となっていました。
25日経過時点では腸腰筋の筋張力の回復・改善や効率的な歩行の運動学習に伴い、バンドの張力に依存する必要性が低下したものと考えられます。
しかし、SPのトルク値がT-Supportを装着することで高値を示していたことから、フォアフットロッカーの機能を選択的に治療する場合は必要とも考えられます。
そして32日経過した時点では全ての評価指標が低値を示し、バンドの張力に依存する必要性が無くなったと考えます。

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まとめです。
T-Supportは歩行トレーニングの初期においては股関節の運動の難易度を調整することができる為、効率的な運動学習が可能となり、歩行速度を高めることも期待できます。
しかし、麻痺側下肢の機能回復に伴いT-Supportのバンドの張力に依存する必要が無くなることがわかりました。
T-Supportを用いる上では、バンドの張力が効果的に作用しているかを検証する作業が必要になるものと思われます。







…うん、いい内容だなぁ。
この検証で使ってるT-Supportのデザインは、現在商品化されているものとはじぇんじぇん違うデザインだけども、装着したときの患者さんの歩行因子の変化は、最近の検証作業の結果得られるデータとほぼ同じ傾向だと思うのです。

ここで声を大にして言っておこう。
『お前とお前の発表、良いよ!』
…と。
 

1-5.体幹の支持性を向上させるために、2度目の改良。軟性コルセットを使ってみることにしたのであった。

たすき掛けタイプではまだ弱いと思ったので、次に考えたのが、腰椎用のコルセットを使ったら、体幹をサポートできるんじゃないか 、ということだったのです。
これについては、2014年、第49回の日本理学療法学術大会で発表しました。。
49回はポスターで発表したから、ちょっと見てもらおうか。

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な。
見にくいやろ?
見にくいと思うわ。
だから一枚ごとのスライドで見せてあげる。
無論、原稿付きで。

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タイトルは歩行補助具T-support ver2使用による脳卒中片麻痺患者の長下肢装具を用いた歩行トレーニングへの影響、です。

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我々は長下肢装具を用いた歩行トレーニング時に使用することで歩行速度を向上させることが可能となる歩行補助具T-support(以下ver1)を作成し、第48回大会においてその即時効果について報告した。
今回、ver1の体幹伸展補助機能に改良を加えたT-support ver2(以下ver2)を作成しました。
本研究の目的は、ver2使用による長下肢装具装着下での歩行因子の変化を明らかにすることです。

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対象は当院で長下肢装具を作成し、歩行トレーニングを行っている7症例としました。
ver2装着による歩行因子の変化を明らかにするため、10mの歩行路をバンド装着時と非装着時の2度歩行しました。
評価指標として10m歩行所要時間およびステップ数、ファーストピーク、およびイニシャルコンタクトにおける股関節屈曲角度、ターミナルスタンスにおける股関節伸展角度を測定しました。
統計学的分析にはt検定を用い5%を有意水準としました。

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青のグラフが未装着、赤のグラフが装着下のデータです。
ver2装着により、10m歩行所要時間は全例で短縮し、平均値は30.9秒から20.6秒へと有意な変化を示しました。

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同様にステップ数は装着することで全例で減少し、32.7歩から26.4歩へと有意な変化を見せました。

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ファーストピーク値は全例で増大し、平均値は3.0 Nmから4.3Nmへと有意に増大しました。

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股関節伸展角度は6例で拡大し、平均値は3.1°から9.0°へと有意な変化を示しました。

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股関節屈曲角度は4例で増大、3例で減少し、平均値は24.3°から22.5°と有意な変化は見せませんでした。

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脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニングでは、歩行速度を向上させる事が重要とされます。
Dobkin らは脳卒中患者を強制的に早く歩かせた群とそうでない群の2群に分け歩行能力を比較した結果、早く歩かせた群において有意に歩行能力の改善が認められたと報告しています。
これは歩行速度向上に伴い歩行制御におけるCentral Pattern Generatorの役割が相対的に増し、歩行がより自動的な運動となるためであると考えられており、步行速度を向上させることは歩行制御の神経機構を変化させることにつながると思われます。

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このことから、我々は長下肢装具を用いた歩行トレーニングにおいてもスピードの向上が治療上より有効な手段となりうるのではないかと考え、歩行補助具を開発してきました。
ver1は装着することで歩行速度を向上させる効果が確認されたが、ゴムベルトをタスキ状に繋いだ構造のため重度の介助を必要とする症例で使用するには下部体幹の支持性の不足が問題でした。

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そこでver2では体幹支持部に腰椎コルセットを使用しました。
コルセットは介助歩行時にセラピストが把持するためのグリップを備えています。
今回の研究結果からは、ver1同様に、股関節伸展角度およびストライド長を増大させ、その結果步行速度が向上するという即時効果があることが明らかとなりました。
これは弾性バンドの張力に加え、コルセットにより体幹伸展が促され、股関節屈筋群を含めた体幹前面の筋が働きやすくなったことによる影響であると考えています。

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脳卒中片麻痺患者の長下肢装具を用いた歩行トレーニングにおいて、ver2を使用することで効率的なトレーニングが可能となることが明らかとなりました。
この新しい歩行補助具の効果を明らかにした本研究は、脳卒中片麻痺患者の理学療法を発展させる上で重要なものであると考えています。





…あ、ちなみにね、この軟性コルセットタイプ、現在の市販されてるT-Supportには装備されていない特殊機能があったのだ。
それが…黒帯くん。
この効果についてまとめた貴重な発表があるの。
2015年、神戸で開催されたリハビリテーション・ケア合同研究大会でキノシタさんが発表したんだ。

1-6.黒帯くん…っていうくらいだから、帯をギュッとね…


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…って言っても、若い子にはわからんかなぁ。
まぁとにかく、T-Supportに黒帯を装着して、セラピストの体幹にギュッと結び付けたら、良い感じで介助歩行できる、ってお話。
まぁ現在のT-Supportには無い機能だから、アレなんだけどね。
でも本当に良かったんだ。
だから載せておく。

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はじめに、当院では脳卒中片麻痺患者の歩行練習において、支持物を使用せずにフリーハンド後方介助にて歩行訓練を実施する機会が多いです。
後方介助での歩行トレーニングでは、前方へ崩れる患者のアライメントを保持しながらの動作となるため、セラピストが腰背部の筋疲労を感じることが多いかと思います。

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そこで今回、重度の運動麻痺を呈した症例に対して、フリーハンド後方介助歩行時に患者とセラピストを繋ぐことで腰部の負担軽減を目的とした歩行補助具T-Support KOKを開発したので、その効果をここに報告させて頂きます。

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症例は40歳代の男性で、小脳出血を呈しリハビリ目的で当院に入院された方です。下肢のBrunnstrom stageはX、理学療法は右下肢に長下肢装具を装着しフリーハンド後方介助での歩行トレーニングを中心に実施しました。しかし、体幹動揺が著しく、重心の前方への崩れが大きく、セラピストの腰背部の負担感は非常に強い状態であった。そこで、歩行トレーニング時にKOKを使用しました。

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まず、T-Supportついて簡単に説明します。
T-Supportは患者の体幹中間位保持と、長下肢装具を装着した下肢のスイングをより容易なものにすることを目的として開発された歩行補助具です。

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次に、KOKはその付属品であり、20p幅のベルトによりT-Supportを装着した患者とセラピストの連結性を増す効果があると考えます。
なぜ、KOKと言うかといいますと、その姿はあたかも柔道の黒帯を締めた姿をほうくつさせるため、KOK=黒帯くんと命名しています。

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こちらをご覧ください。

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結果、KOK装着時では下肢振り出し時の体幹中間位保持、立脚後期での股関節伸展が可能になったことがわかります。

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ボルグスケールでは未装着時で10であったものが、装着時は6となり疲労感の軽減が認められました。
また、個人の意見として、患者との連結性が向上することで
・体幹動揺を直接制御できる
・介助者の重心移動を容易に伝達することが出来る
・上肢での細かな操作(介助)が可能になる
・患者と体格差があっても正常歩行に近い歩容を確保できる
ことが、装着するメリットであると考えます。

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最後にまとめです。
今回の症例は歩行時に重度の介助が必要であることに加え、担当セラピストとの体格差が大きく、介助者の腰背部の負担が大きい状況でした。
患者とセラピストの連結性を増す効果があるKOKを使用することで、介助者と被介助者の身体重心の距離が離れずに歩行動作が可能となり、腰部の負担感の軽減につながったものと考えます。
以上で発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。




…というわけでね。
便利だったんだよ。
黒帯くん。
いつか何らかの形で、オプション商品として開発してみたいね。
 

1-7.プライムウォークでも使えることがあるんやで。

股継手のプライムウォーク、みなさん使ってます?
当院ではちょいちょい作成します。
主に脊損の患者さん。
長下肢装具2本作って、プライムウォークつけたら、後方介助でガンガン歩けるから。
そんなときに、T-Supportを使ったら更にええことがある、って発表。
これはなんでここに載せるかというと、軟性コルセット時代の発表だから。
基本的には現在販売してるタイプでも同じように使えるんだけどね。
まぁ見てちょ。

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みなさんは日々の理学療法場面において、重度の対麻痺、具体的に言うと自己にて座位が保持できない、あるいはぎりぎり何とか座れる、両下肢ともわずかに随意運動がある、といった状態の患者さんの訓練を行う際に、どのような方法を選択されていますか?

当院では従来、重度の対麻痺を呈した患者さんの抗重力位でのトレーニングを行う際に、ティルトテーブルをよく利用します。

それによりさまざまな治療的効果が得られますが、従来より私は、もっとダイナミックなトレーニングができないものか、と考えていました。

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そんな中で、2年前の第1回下肢装具カンファレンスにおける和歌山医大の先生方の発表に私はいろんな意味で衝撃を受けました。

そこで紹介されていたのが、2本の長下肢装具をつないで交互歩行を可能とする股継手、プライムウォークでした。

私が担当したならば、おそらくティルトテーブルを使用してスタティックな立位訓練にとどまっているだろうと思われる患者さんが、プライムウォークを利用して歩行練習を行っている様子を見て、私は強い衝撃を受けました。

それから当院でも、適応と思われるケースにおいて積極的にプライムウォークを使用した歩行訓練を実施してきました。

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その結果、これまでは歩行訓練が困難であると判断していた患者さんにおいても歩行訓練が可能となりました。

しかし一方で困った部分もあります。

それが何かわかりますか?ヒントはこの写真の中にあります。ちょっと考えてみてください。

それは、介助するのが難しい、ということです。

当院の理学療法場面においてプライムウォークを使用する患者さんの多くは体幹の支持性も乏しいことが多いため、歩行時にセラピストが体幹をしっかりとホールドする必要があります。

さらにプライムウォークはその構造上、左右への重心移動をしっかり行うことで重力を利用し、下肢の交互運動をサポートするので、こうヤジロベェのような重心移動が必要となり、代償動作が結構強いんですね。

我々は、より強い筋収縮を得るために、少しでも歩行速度を上げることを追求しているため、この条件で歩行速度を向上させることはセラピストにとって非常にきついのです。


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そこで考えました。

もっと簡単に介助できないか?

そしてもっと自然なフォームで歩行できないか?と。

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で、私は思いついたのです。

これまで当院では長下肢装具、短下肢装具を用いた歩行練習時に併用することで歩行スピードを向上させる、T-Supportシリーズという歩行補助具を開発しており、LLB用にタイプLSLB用にタイプS、と名付けています。

私は、このT-Supportをプライムウォークを使用した歩行訓練に導入することで、もっと効果的な訓練が可能となるのではないかと考えました。


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そこで、作ってみました。

LLB用がタイプLSLB用がタイプSですから、プライムウォーク用の名称は、タイプPということになります。

作成するにあたって様々な工夫をこらしましたが、私が一番気に入っている部分はここです。セラピストが把持するためのハンドルがついているんですね。

我々が患者さんの動作を誘導することをハンドリングなんて言ったりしますが、歩行介助のハンドリングをする際に実際にハンドルを握って操作する、というのは非常に画期的ではないかと自負しております。

実際にこのハンドルを握ると非常にハンドリングがしやすくなります。


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これが実際に装着したところです。

Tサポートは非常にシンプルな構造をしておりまして、コルセットから伸びたゴムバンドが、股関節屈曲動作を補助してスイングをサポートします。

タイプPでは、これが2本、そして前後についておりまして、装着することで交互に長下肢装具を引っ張り、より簡単で、より早い歩行動作が行えるようになります。

この装着効果を検証してみました。


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本日紹介する症例は、80歳代の女性です。

脊髄梗塞を発症し、対麻痺を呈していました。

プライムウォーク付きの長下肢装具、ちなみにこれは両側とも足継手にゲイトソリューションを使用しています、を作成しておりまして、この症例においてT-SupportタイプPを装着した場合としなかった場合の、10m歩行所要時間およびステップ数、ファーストピーク値、歩行周期中の股関節最大屈曲伸展角度の変化を比較しました。


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こちらの動画はタイプPを装着していない状態での歩行練習です。

先ほども述べましたが、プライムウォークを用いた歩行介助では身体重心の左右へのサインカーブを強く描くことで反対側下肢のスイングが行いやすくなります。

それが結果的に代償動作につながり、スムーズにスピードを上げるということがなかなか難しいんですね。

ちなみにこの動画はゲイトジャッジシステムで測定しておりまして、特にご覧いただきたいのがこの青いグラフですね。これは股関節の屈曲伸展角度を計測しておりまして、プラスが屈曲、マイナスが伸展です。

このターミナルスタンスでの股関節伸展角度が、タイプPを装着することで変わります。


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こちらがタイプPを装着した状態です。

未装着の状態にくらべると、スピードが上がります。

そして先ほど申しましたように、股関節の青いグラフを見ると、ターミナルスタンスでの股関節伸展角度が増大していることがわかります。


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比較してみます。

左が未装着、右が装着した状態です。

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結果をまとめます。

タイプPを装着することで、10m歩行所要時間が14秒短縮しました。

ステップ数が5歩減少しており、ストライド延長による歩行速度の向上が見られたと考えます。

また股関節の角度を比較すると、屈曲角度よりも伸展角度を増大させてストライドを延長させていることがわかります。


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考察です。

プライムウォークを使用した歩行トレーニングについては開発を行った藤田保健衛生大学の才藤先生を中心として多くの研究が行われています。

そこでは、股継手を用いた骨盤帯長下肢装具による対麻痺患者の歩行再建における問題点として、エネルギーコストの高さと歩行速度の低さを上げられています。

そこで才藤先生らはプライムウォークに力源を付与したWPALというロボットを開発しています。

力源を付与することの利点は、下肢のスイングのための代償的な支持下肢への重心移動が必要でなくなり、より楽に歩けるようになる点である、とされています。

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今回我々が開発したタイプPは、WPALのようなハイテクマシンではありませんが、代償的な重心移動を抑制してスピードを向上させるというコンセプトは共通していると考えています。
その歩行速度向上は主に股関節伸展角度う増大によるもので、これは片麻痺患者の長下肢装具歩行練習においてtype Lを用いた際の歩行因子の変化と同様でした。
Tサポートシリーズのコンセプトは、下肢に麻痺のある患者さんが、可能な限り代償的な動作を伴わずに、股関節前面筋を伸長させ、より自然なフォームによる歩行動作の獲得に繋がるトレーニングを可能とするものであり、タイプLもその特徴を有していると考えています。

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最後に、当院では川村義肢さんのご協力により、我々がより治療効果の高い歩行トレーニングを実現するために、『こんなものがあったらいいな』というアイデアをどんどん形にしていただいております。

この会場におられる、特に理学療法士のみなさんは、今あるものだけで満足せずに、もっと良いトレーニングをするためにどのようなものがあればいいか、それを形にすると、臨床がもっと面白いくなってくると思います。

以上で発表を終わります。御静聴ありがごうございました。






…うん、改めて見返してみても、なかなか面白い発表だな。
ちなみにこの軟性コルセットの後に、現在のT-Supportのデザインが登場することになるわけです。

そしてこれと同時にボキたちは、長下肢装具だけでなく、短下肢装具でも使えるT-Supportの開発にとりかかったんですね。
短下肢装具でも使えるように、膝関節をまたぐ構造となったことが、T-Supportという歩行補助具の革命性を生みだすことになるわけですが、それはまた別のお話。
まずは短下肢装具用のT-Supportに関する発表も何本か見てもらいましょうか。

1-8.そこから、短下肢用のT-Supportについても発表してるんだな。


最初に短下肢用のT-Supportの発表をしたのはうちのヨシフジくん。
2014年の3月、第3階脳血管障害への下肢装具カンファレンスでした。
このときヨシフジくんはまだ臨床1年目だったんだな。
がんばったねぇ。
まぁ見てみて。

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はじめに。
脳卒中片麻痺患者の歩行訓練を行う上で重視すべきことは数多くありますが、我々は中でも歩行速度を向上させることが、訓練効果を大きく左右するポイントであると考えています。
先行研究においても、脳卒中片麻痺患者の歩行速度を向上させることで歩行制御におけるCentral Pattern Generatorの役割が相対的に増し、歩行がより自動的な運動となる可能性が報告されています。

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 理学療法診療ガイドライン第1版においても、脳卒中の装具療法について、肩から足部まで弾性ストラップでつないで制御する新しい装具の使用により、脳卒中片麻痺患者の歩行スピードの向上・エネルギーコストの改善が認められる、という文献が引用されています。

 これがそのCVaidという装具です。

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そこで当院では川村義肢と協同で、長下肢装具歩行時に弾性バンドで下肢のスイングをサポートする歩行補助具、Tサポートというものを作成し、その効果検証を行ってきました。
我々のこれまでの検証において、長下肢装具歩行時に弾性バンドの張力を用いることで、歩行速度の向上を中心とした様々な効果があることを認めました。
そこで、次に我々は、短下肢装具歩行時にも弾性バンドを用いてスピードを向上させることが可能ではないかと考え、新たな歩行補助具を作成しました。

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そして作成したのがこちらのT-Support type Sです。

これは短下肢装具歩行時に弾性バンドの張力を用いて歩行スピードを向上させることを目的としています。

本研究の目的は、type Sを継続的に利用した症例の歩行因子の変化を通し、type Sを装着することの治療的意義を明らかにすることです。

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対象です。

症例は80歳代の男性で、左放線冠脳梗塞による右片麻痺を呈していました。
歩行動作は杖を使用し見守りにて可能でしたが、歩行速度の向上に難渋していました。
本症例において歩行速度の向上を目的として
type Sを使用した歩行練習の効果判定を実施しました。


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方法です。
本症例では、歩行トレーニング時にT-Support type Sを装着し歩行速度を向上させていました。
そこで、通常の歩行時と、type Sを用いた歩行時の諸因子を定期的に測定し、その変化を比較することとしました。
評価はtype S 使用開始時点と7日経過時点、20日経過時点に実施しました。
評価内容は、10m歩行時の所要時間およびステップ数、川村義肢株式会社製Gait Judge System(以下、GJ)を用い計測される足関節底屈トルク値の(First Peak値:FP値)としました。

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結果です。
使用開始時点の歩行を比較します。
左が未装着、右が装着時の様子です。
10m歩行所要時間、ステップ数、FPの平均値の結果は表をご参照ください。
10m歩行所要時間は3秒程度短縮しています。
type Sを使用することでストライド長の増大に伴う歩行速度の向上が認められました。
冒頭でもお話しましたが、我々は歩行スピードを向上させることが、より高い治療効果に繋がると考えており、本症例においてはtype Sを装着することが有効であると考え、装着下での歩行訓練を行うこととしました。

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次に、7日経過時点です。
評価結果については表をご参照ください。
10m歩行所要時間の差は使用開始時よりも縮まり、1秒差となりましたが、依然ストライドの延長やファーストピーク値の増大が認められるため、装着による利得が大きいと考え、継続して使用することとしました。

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20日経過時点です。
この段階で、ストライド長および歩行速度において未装着の状態でも装着時と同様の歩行能力を獲得したため、使用を終了しました。

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ここで、使用開始時点と20日経過時点の歩行能力を比較してみます。
これはどちらもtype Sを装着していない状態の歩行です。
20日間でストライド長の増大に伴う歩行速度の向上を達成したことがわかります。
なぜ弾性バンドを装着して歩行するだけでこのような効果が得られるのでしょうか?

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その理由を考える上で、まず我々が効果検証を行ってきたT-Support type Lの効果機序についてご説明します。
我々は長下肢装具を用いた脳卒中片麻痺患者の歩行速度を向上させることを目的として、ゴムバンドでスイングを補助する補助具(T-Support type L)を作成しました。
type Lは装着した下肢の股関節が伸展位をとった際にゴムバンドが張力を発揮する構造となっており、装着によりターミナルスタンスにおける股関節伸展角度増大、ストライドの増大、歩行速度の向上などの効果が認められました。
また一定期間の装着後には自己の股関節前面筋の伸長を用いた歩行フォームの獲得が可能となることが示唆されています。

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 今回、効果検証を行ったtype Stype Lと同様のコンセプトで短下肢装具を用いた歩行トレーニングの速度を向上させる
ものです。
type Sは体幹ベルトと下肢ベルトで構成されています。

  下肢ベルト上部のゴムベルトは装着下肢の股関節が伸展位をとった際に伸長される為、前型歩行を行った際に下肢のスイ
  ングを補助し、歩行スピードを向上させることが可能となるのではないかと考えていました。


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 今回、継続的に使用した症例は、歩行速度を向上させることに対して不安感の訴えがあり、前型歩行を指示するもののストライドを延長することが困難であり、自己の股関節前面筋を使用した歩行動作が行えていませんでした。

そこでtype Sを装着することで弾性バンドの張力によってなかば強制的に股関節伸展位からスピードを落とさずに麻痺側下肢をスイングする動作を繰り返し学習させました。

その結果、徐々にバンドに依存せず自身の股関節屈筋によるスイングを獲得し、最終的に20日経過時点で同等のスピードでの歩行が可能となったものと考えています。


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 当院では短下肢装具を用いて歩行している患者において、特に歩行速度向上の必要性がある場合にtype Sを多く用いますが、他の症例においても概ね2週間から3週間程度使用することで未装着時と装着時の歩行速度が同等になる場合が多く見られています。

 このことから、type Sを一定期間使用することは、患者自身の股関節前面筋群を使用した歩行動作を獲得させる効果がある
 と我々は考えています。


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まとめです。
T-Support type Sは単純に弾性バンドの張力を利用し歩行スピードを向上させるだけでなく、それを通してよりよい運動学習を可能とするものであると思われます。
今後は使用時の筋電図学的検討を行い、時間経過に伴う治療効果の変化についても検証する必要があると考えています。

これで発表を終わります。
ご清聴ありがとうございました。




…うん、なかなか良い感じです。
このまとめも良いよね。
今後は筋電図学的検討を行う、って宣言。
だいたい学会発表でのまとめスライドにおけるこの手の宣言って、実際にはせずに終わっちゃうことが多いんだけどね。
ちゃんとその後やってるよね。
その辺が宝塚リハビリテーション病院のエライところだね(自画自賛)。


ちなみにこの単下肢用の効果検証は、ヨシフジくんの発表から4か月後に、シズーカも発表しています。

1-9.短下肢用の効果検証2本目

2014年7月、第26回兵庫県理学療法学術大会。
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このときはね、兵庫県赤穂市ってとこで開催だったの。
関西の土地勘の無いひとはピンとこないでしょうけど、赤穂ってね、もうめっちゃんこ遠いの。
大変なんだから。

この写真、会場の赤穂市文化会館。
そして発表前の緊張している宝塚リハビリテーション病院の若人たち。
2列目左でうつむいてるのがシズーカ。
その他、ウエダ君にタナカ君、ヨシフジ君…ヨシオイドン…それから…ずーっと後ろに米粒みたいなサイズでヨウヘイ・ヤマモトとコマツさんが映り込んでいるような気がする。
まぁどうでもよい話ですが。

で、そのシズーカが発表したスライドがこちら。

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脳卒中片麻痺患者の歩行速度は、歩行トレーニングのアウトカムの中でも重要な因子であり、先行研究でも片麻痺患者の歩行速度低下は参加制約に直結することがわかっています。
しかし歩行速度を向上させることは、代償動作や筋緊張の亢進などを誘発する可能性もあるため、当院ではどのように歩行速度を向上させたトレーニングを行うか、について試行錯誤しています。
近年、当院では、短下肢装具を用いた歩行練習時に弾性バンドの張力を用いて麻痺側下肢のスイングスピードを向上させ、歩行速度の向上に繋がる股関節屈曲補助バンド、T-Supportシリーズを作成してきました。
T-Supportとはどのような歩行補助具で、そしてどのような効果があるのでしょうか。
本研究の目的は、短下肢装具用のT-Support typeSを継続的に利用した症例の変化を通して、その治療的意義を検討することです。

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まず【 T-Support typeSについて簡単に説明します。
typeSは弾性バンドを短下肢装具の下腿ベルトの前面に装着し、バンドの張力によりスイングスピードを向上させる歩行補助具です。
実際に装着している様子が右の写真です。
これまで当院では、足部のクリアランスなどが問題で歩行速度の向上に難渋する症例などで一定期間装着することで歩行能力を向上させる効果を確認しています。

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今回typeSを使用した症例は80歳代の男性で、左放線冠梗塞により右片麻痺を呈していました。
麻痺側下肢の随意性はBRSXであり、フリーハンド歩行は可能でしたが、麻痺側足尖の引っ掛かりが認められ軽介助が必要でした。
本症例では通常のフリーハンド歩行と、typeSを使用したフリーハンド歩行の諸因子を定期的に測定しました。
評価は、川村義肢社製Gait Judge Systemによる計測データを用いてtypeS使用開始時点と7日経過時点、14日経過時点に実施しました。

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使用開始時点のGJ評価結果です。
typeS装着時の10m歩行所要時間、ステップ数、FP値、SP値すべての歩行因子で装着による利得が大きいことがわかります。

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7日経過時点のGJ評価です。
使用開始当初に比べると装着による利得は減少してきましたが、足関節底屈トルクなどは装着時の方が良いデータであるため継続して使用しました。

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14日経過時点のGJ評価です。
装着時・未装着時を比較してほぼ同等の歩行能力となったためtypeSの使用を終了しました。

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症例はフリーハンド歩行は可能でしたが、距離延長に伴いクリアランスは低下し、麻痺側足尖の引っ掛かりが認められていました。
麻痺側下肢のスイングスピードの低下により、ストライド長は抑制され、歩行速度の低下に繋がっていると考えました。

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typeSを装着すると、股関節伸展位をとった際に前面のゴムバンドが伸長され、股関節屈曲動作を補助します。
本症例ではバンドの張力を用いてクリアランスの不安を減少させることで、ストライドを抑制する必要がなくさせることが運動学習上重要であると考えました。
最終的にtypeSの有無で歩行能力が同等になったのは、一定期間装着することで前型歩行を学習し、最終的にはバンドを使用せずとも自己の股関節前面筋群を使用したスイングが可能となった結果であると考えます。

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typeSを装着し歩行練習を行うことで、歩行速度やステップ数に向上が認められ、一定期間の使用後、前型歩行が定着し、未装着下でも同等の歩行能力を獲得しました。
typeSは患者自身で麻痺側下肢を振り出すことで運動学習を促す効果があると考えます。




…というわけで、短下肢装具使用時にもとっても面白い効果がある、ということがわかったわけです。
じゃぁもうちょっとデータを増やしてみようか、ということで、次の発表。

1-10.短下肢装具を用いた歩行動作時の歩行速度・ステップ数・ファーストピークの検証 

これは2015年の第50回日本理学療法学術大会で発表したんだ。
いやしかし、今思い返しても、この東京での全国学会は運営が最悪だったンゴねぇ。
会場の東京国際フォーラムって、見た目だけ立派で、カンファレンスの会場としては最高に使いづらいんだよね。

ボキが発表したせっしょんも、狭すぎて入場制限かかってたし。
もっともっとたくさんのヒトに聞いてもらいたかったのに。

…まぁ、ここでこうやってスライド載せちゃうわけだけれどもね。
HAHAHA.

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…これ、発表のときに使ったスライドなんだけどね。
ここで声を大にして言っておきますけど。
T-SupportのSは大文字やき!
…モリイちゃんに怒られるぢゃないか。。。
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発表を始めるにあたり、この会場におられる圧倒的多数の方々がT-Support、という言葉を初めて聞かれることと思いますので、その説明から始めたいと思います。

近年、脳卒中片麻痺患者の歩行練習において、長下肢装具を使用する機会が増えています。

T-Supportとは、その際に装着することで歩行時の過剰努力を軽減させ、歩行速度を向上させることを目的に開発された歩行補助具の名称です。

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開発を初めてすでに3年以上が経過しており、これまで様々な改良を重ね、その都度その効果を検証し、発表して参りました。

発想はいたってシンプルで、装具をつけた麻痺側下肢をゴムバンドで引っ張ったらいいことがあるんじゃないか、というものです。

本学会においても、第48回・49回でその効果について報告してまいりました。

我々はこれまで、T-Supportは長下肢装具を用いた歩行練習時に使用することを想定して開発してまいりました。

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ところがある日、私は気づいたのです。

長下肢装具をゴムバンドで引っ張るのであれば、短下肢装具だって引っ張る意味があるのではないか、と。

そもそも長下肢装具は構造的にセラピストが直接手で引っ張ることができますが、短下肢装具を装着した下肢って、我々の手では引っ張りにくいですよね。

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短下肢装具を用いた歩行でも、もう少し外力で運動をアシストをしたら、より良い運動ができるのではないか?

そしてそこに、T-Supportという道具が貢献できる余地があるのではないか。

そこで、我々はT-Supportを改良し、短下肢装具でも使用できる形状に変更しました。

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これが、今回その効果を検証したT-Support です。

長下肢用のものと区別するために、type Sというかりそめの名前をつけました。

先ほども申しましたように、構造は非常にシンプルで、弾性バンドを短下肢装具に巻きつけて引っ張るというものです。
 

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本研究の目的は、T-Support type Sを装着することで、回復期脳卒中片麻痺患者の歩行能力に即時的にどのような変化があるかを明らかにすることです。

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対象は短下肢装具を使用して自力歩行が可能な6症例でした。

下肢のステージは3が2名、4が4名で、金属支柱付装具が3名、ゲイトソリューションデザイン使用者が3名でした。

検証方法は、10mの歩行路をタイプS装着時と非装着時の2度歩行し、その歩行因子の違いを検討しています。

評価指標は、10m歩行所要時間、ステップ数、麻痺側下肢の荷重応答期に装具に発生する底屈トルク値でした。

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結果です。

グラフは、青が未装着時、赤が装着時の比較です。

10m歩行所要時間は装着により、全症例で短縮しました。

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次に10m歩行時のステップ数です。

こちらも全症例においてステップ数の減少が認められました。

このことから、歩行速度の向上はストライドの延長によりもたらされたものであることがわかります。
 

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麻痺側下肢荷重応答期に下肢装具に発生する底屈トルク値です。

装着により、全症例において底屈トルク値の増大が見られました。

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結果をまとめます。

グラフは6症例の平均値を表しています。

10歩行所要時間は29.9秒が26秒に、ステップ数は34.5歩が31歩に、底屈トルク値は4.5Nm5.6Nmと、すべて有意な変化を示しました。

このことから、T-Support type Sは装着することでストライドの延長に伴う歩行速度向上の効果があり、麻痺側下肢のより強い踵接地を促しているということが推察されました。

なぜこのような効果があるのでしょうか?
 

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T-Supportは、装着肢の股関節が伸展位となった際にゴムバンドが伸張され、スイングを補助する構造となっています。

私の個人的な印象ですが、多くの片麻痺患者は麻痺側下肢のスイングに不安を抱いており、自然と前型歩行よりも揃え型に近い歩容を好む傾向があるように思います。

ゴムバンドを麻痺側股関節前面に装着することで、スイングが補助され、多くの患者さんが避けたがる前型歩行の姿勢からの麻痺側下肢のスイングの難易度を調整することが可能となります。

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理学療法診療ガイドラインでも紹介されていますので、ご存じの方も多いかと思いますが、オランダにはこのT-Supportとよく似た構造の歩行補助具が存在します。

このCVAidという歩行補助具は麻痺側下肢にゴムバンドを巻きつけ、脳卒中片麻痺患者の歩行能力を高める効果があるとされており、先行研究では慢性期脳卒中片麻痺患者において一定期間使用することで歩行速度やエネルギーコストを改善させる効果が確認されており、さらに外した後にもその効果が持続する、とされています。

ちなみにこの写真は1年前、オランダにCVAidを見に行ったときのものです。

慢性期の症例において持続的な効果が認められることから、ゴムバンドの張力を用いて歩行能力を向上させるという治療方法は、より効率的な歩行動作を学習させる効果が期待できるものと思われます。

今回の検証はT-Supportの即時的な効果を検証しましたが、当院で継続的に利用した症例においても、このCVAidに似た効果が確認されており、麻痺側下肢を弾性バンドで牽引するというアプローチは脳卒中片麻痺患者の歩行能力を向上させるうえで大きな可能性を有するものであると私は考えています。

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最後にまとめと今後の展望です。

短下肢装具を用いた片麻痺患者においてT-supportの使用が歩行速度の向上などの即時効果があることが明らかとなりました。

今後は適切な伸張力の設定方法、使用時の筋収縮の変化、回復期以外の時期での効果検証などを行いたいと考えています。
 

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ニックネーム
中谷知生
所在地
兵庫県宝塚市にある、宝塚リハビリテーション病院に勤めています。
職業
理学療法士です。

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