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卒中八策 その四 立脚初期に必ず踵接地をつくろう

なぜ立脚初期に踵接地をつくった方がいいのか

理由1:踵接地をつくることでヒールロッカーが機能し、身体重心を上昇させることで効率的な歩行動作が可能となるから

ソース:大畑光司

理由2:踵接地をつくることで、歩行スピードが向上するから

ソース:Archives of physical medicine and rehabilitation, 2012 

理由3:踵接地をつくることで、大殿筋の筋活動が得られやすくなるから

ソース:ステップ動作における踵接地の有無が支持側大殿筋の筋活動に及ぼす影響,門田淳志ほか,第50回近畿理学療法学術大会

理由1についての解説

・健常歩行の重心の上下動

img_20120812-060504.png

これは川村義肢さんの資料です。

水色の部分が両脚支持期で、白い部分が単脚支持期です。

歩行中の重心移動は単脚支持期で最も高く、両脚支持期で最も低くなる、サインカー

ブを描きます。

この動きにより、重力を利用した効率的な歩行が可能となっています。


・片麻痺患者の重心上下動

img_20120822-062703.png
これは片麻痺患者の装具なし歩行での重心の上下移動です。
麻痺側接地の両脚支持期の時間が長く、重心が上昇しないことがわかります。
また特に麻痺側立脚期における重心の軌跡の振幅の不規則さが目立ちます。
これが片麻痺患者の歩行の最大の特徴であり、麻痺側下肢で位置エネルギーを増加させることが難しく,運動エネルギーはこの時期に大きく失われることになります。
この最大の原因は、踵接地が無く、ペリーの提唱するいわゆるロッカーファンクションが上手く行えていないことによるものです。

・ロッカーファンクションとは
ここでロッカーファンクションについて少しおさらいしておきます。

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健常歩行の立脚期に、身体は接地している足部を中心に、前方に回転していきます。

このとき回転の中心は立脚初期の踵、中期の足関節、後期の前足部と順に移動して

ゆくと言われています。

この回転は、ロッキングチェアの動きに似ていることからロッカーファンクションと

呼ばれています。

このロッカーファンクションにより、歩行中の重心移動がスムーズに行われています。

先程の片麻痺患者の重心移動のサインカーブが乱れていた最大の要因は、

このロッカーファンクションの機能不全にあります。

したがって、ロッカーファンクションをしっかりと機能させられるような身体の動き、

筋収縮を獲得させて、麻痺側下肢が形成する倒立振子を機能させるということが、

歩行機能の改善、具体的に言うと歩行速度,歩行効率の改善につながると思われ

ます。


・ここまでをまとめると…

立脚期の間に運動エネルギーから位置エネルギー、位置エネルギーから運動エネル

ギーとエネルギーを変換することで効率的な歩行が可能となります。

片麻痺患者の歩行の特徴は、麻痺側下肢で位置エネルギーを増加させることが難し

く、この時に運動エネルギーが失われることによるものです。

その原因は、ロッカーファンクションの機能不全によるものであり、ロッカーファンク

ションをしっかりと機能させられるような筋収縮を獲得させることが、歩行機能向上の

ために重要である、ということです。


・じゃぁヒールロッカーを働かせるには具体的にどうすればいいのか


そのために重要なのが、立脚初期の踵接地なんですね。

ロッカーファンクションは立脚期の歩行相を 3 つの相に分けてその役割を説明してい

ますが、その中でヒールロッカーは,踵を支点にして転がる時期です。

この時期に前脛骨筋が背屈を維持するように働くことで,下腿は前方への推進力を得

ることになります。

この時期に最も重要な筋が前脛骨筋です

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これは大畑先生がPTジャーナルにのっけてた図です。

ヒールロッカーの機能するイニシャルコンタクトでは、前脛骨筋の収縮と底屈運動が起

こります。

この時期のヒールロッカーの機能とは、衝撃吸収機能に加え、歩行にとって決定的に

重要な役割を担う、倒立振子の推進力となる初速の形成という役割があります。

倒立振子の初速を得るには,遊脚期の運動エネルギーを効率よく次の立脚期の倒立

振子に維持して伝える必要があります。

初期接地時に床反力ベクトルは後方に傾くため,減速されることになります。

この減速が大きすぎると、次の倒立振子を振るための運動エネルギーが得られませ

ん。

前脛骨筋は,踵の接地前には足関節背屈させてクリアランスを維持するために働く

が,踵の接地後には,下腿を前方に引っ張る力に変換されます。

つまり,この時期に前脛骨筋が背屈を維持するように働くことで,下腿は前方への推

進力を得ることになります。

この力が,大腿,骨盤へと伝達され,結果的に身体重心を前方へ転がすための,つ

まり倒立振子を振るための推進力を形成することになります。

単脚支持期はheel rocker の時期に生み出された推進力の慣性だけで進んでいると

いわれており、この瞬間が動的な場面のなかのにおいて最も重要と言ってよいとおも

います。

片麻痺患者では運動エネルギーと位置エネルギーの変換がほとんどなされず、特

に,麻痺側下肢では位置エネルギーを増加させることが難しいと言われています。

したがって,麻痺側下肢が形成する倒立振子を機能させることが,歩行速度,歩行効

率の改善に重要であると考えられます。

そして繰り返しになりますが、そのためには立脚初期に踵接地をつくることが重要だと

思われるのです。



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この図は通常歩行と反張膝を呈した片麻痺歩行の前脛骨筋と関節角度の違いを示し

ています。

通常歩行では初期接地の瞬間に前脛骨筋の筋活動のピークが生じており,足関節

は底屈方向の運動から速やかに背屈運動に変換されています。

しかし,反張膝歩行を呈する片麻痺歩行ではこの時期の前脛骨筋の活動が見られ

ず,関節角度が背屈方向へ動き出すのがかなり遅れていることがわかります。

つまり,ヒールロッカー の時期に前脛骨筋が適切に働かないことで倒立振子を振れず,結果として反張膝などの歩容異常を生じさせることになると考えられます。

 

 

・まとめておこうか

立脚初期の踵接地は歩行にとって決定的に重要な役割を担います。

それは倒立振子の推進力となる初速の形成という役割を担うためなんです。

よって、イニシャルコンタクトで足関節背屈位のアライメントを保持し、踵接地を行うこと

は効率的な歩行能力を獲得する上で非常に重要なんですね。


理由2についての解説

ここでひとつ、文献を紹介してみましょう。
『歩行スピードを高めたいなら足関節背屈筋力を高めよう』という内容です。

片麻痺患者における前脛骨筋の重要性に関するデータですね。


The Strength of the Ankle Dorsiflexors Has a Significant Contribution to Walking Speed in People Who Can Walk Independently After Stroke: An Observational Study.

               Archives of physical medicine and rehabilitation, 2012


脳卒中後の歩行スピードに麻痺側下肢のどの筋肉が関係してるかを調査してます。

歩行が自立している慢性脳卒中患者60名を対象に、麻痺側下肢筋の筋力(12群に

分類)と個々の快適歩行速度を測定した。

筋肉の分類

・股関節 伸展筋、屈曲筋、外転筋、内転筋、外旋筋、内旋筋

・膝関節 伸展筋、屈曲筋

・足関節 背屈筋、底屈筋、内反筋、外反筋

その結果、歩行速度に関与する筋力は、股関節伸展筋・屈曲筋・内旋筋・内転筋、膝

関節伸展筋・屈曲筋、足関節背屈筋・底屈筋・外反筋であった。さらに、その中でも最

も寄与率が高かったのは、「足関節の背屈筋力」であり、背屈筋力は、歩行速度を高

める重要な役割を有していることが示唆された。


この文献が示していることは、背屈筋力の獲得が、rocker functionの最初の段階であるheel rockerを作り出すことで、運動エネルギーを効率的に位置エネルギーに変換させることが可能となる。その結果、その後の蹴り出しによる推進力が生み出され、歩行スピードの増加に寄与する、ということのようです。

こうした文献からも、やはり立脚初期の踵接地の重要性が見えてくると思います。

じゃぁここでひとつ、症例紹介してみましょう

2010年に担当させていただいた患者さんです。

この方の劇的な変化を通して、私の中で歩行トレーニングのあり方が根本的に変化しました。

入院からほぼ5か月間、短下肢装具と四脚杖での歩行トレーニングを実施していまし

たが、トレーニング内容を変化させた数日間で歩行能力が劇的に変化した方です。

2011年、兵庫県理学療法学会にて発表したスライドです。

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目的です。

脳卒中片麻痺患者の歩行練習を進める際、平行棒や杖など支持物を使用することが

多いように思われます。

しかし、吉尾らは後方介助でのフリーハンド歩行練習が、片麻痺患者の歩行能力をよ

り向上させるとしています。

当院入院中の片麻痺患者で、四脚杖歩行練習を行ってきた症例において、フリーハ

ンド歩行練習を行った結果、短期間で歩行能力が大きな改善を見せたので報告しま

す。

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症例は60代男性で、疾患名は脳梗塞、障害名は左片麻痺・左半側空間無視・汎性

注意障害がありました。BRS下肢3、歩行は当院に転院し5か月経過時点で四脚杖と

短下肢装具を使用し近位監視で行っていました。左ターミナルスタンスからイニシャル

スイングにかけてトウクリアランス低下のため前方へとバランスを崩していました。 

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方法です。

短下肢装具に加え膝関節伸展位での固定用ニーブレースを装着し、フリーハンド歩行

練習を5日間行いました。

効果判定として、川村義肢社製ゲイトジャッジシステムを使用し、ファーストピークの値

などを基に歩行状態を評価しました。

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ゲイトジャッジシステムについて説明します。

歩行中のトルクや関節角度の計測には、通常大規模な機器が必要ですが、ゲイト

ジャッジシステムでは、短下肢装具ゲイトソリューションの油圧ユニットに生じる力を計

することで、運動力学的情報を簡便に得ることができます。

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これは、当院のセラピストで計測した様子です。健常者の歩行では、1歩行周期に

2度の底屈トルクが発生します。これはファーストピーク、セカンドピークと呼ばれてお

り、これが確認されることは、正しいヒールロッカーとフォアフットロッカーが行われてい

ることを示しています。

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本症例の介入前のイニシャルコンタクト〜ローディングレスポンスの様子です。

ファーストピークは平均1.83Nmと麻痺側下肢への積極的な荷重が行えておらず、そ

のため下腿のスムーズな前傾が起こらずエクステンションスラストパターンを呈してい

ました。ファーストピークの波形も二峰性となっています。

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介入前のターミナルスタンス〜イニシャルスイングです。ローディングレスポンス以降、

重心の前方への移動は困難であり、体幹前傾位のアライメントのままとなっていま

す。この後、麻痺側下肢の振り出しにおいて麻痺側足尖がひっかかり、前方にバラン

スを崩していました。

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ここで治療戦略を変更しました。最大の問題点は、トウクリアランスの低下による遊脚

期の不安定さでした。原因は、ターミナルスタンスで体幹屈曲位となることで、スムー

ズなイニシャルスイングが行えていないことでした。これを修正するには、イニシャルコ

ンタクトから強い踵接地を促し、重心の前方移動を行う必要性がありました。

杖を使用した歩行練習では、その修正に難渋しており、フリーハンドでの歩行練習を

行うこととしました。

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フリーハンド歩行1日目の様子です。ニーブレースを装着し、後方介助で強い踵接地を

促しました。しかし麻痺側下肢への荷重に対する不安感は強く、セラピストにもたれか

かるような姿勢で、重度介助を必要としました。波形を見ると、ファーストピークは二峰

性を示していました。

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5日目です。麻痺側下肢への荷重に対する不安感が軽減し、重心の前方移動が可能

となり、後方にもたれる姿勢は見られなくなりました。軽介助での歩行が可能となって

おり、波形を見るとファーストピークが単峰性に変化しています。

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介入後の短下肢装具での歩行、イニシャルコンタクト〜ローディングレスポンスの様子

です。ファーストピークの値は平均2.44Nmと増大しました。荷重時の膝関節の急激な

伸展は見られなくなり、ファーストピークは単峰性となっています。

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介入後のターミナルスタンス〜イニシャルスイングです。股関節伸展位での保持が可

能となっており、スムーズなスイングが可能となったため遊脚期の足尖の引っ掛かり

は大幅に減少しました。

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歩行の主な変化をまとめます。まず、逸脱運動の減少があげられます。

杖の過剰支持が減少し、ミッドスタンスにおける急激な膝関節伸展現象が消失し、

ターミナルスタンスにおける股関節伸展位保持が可能となりました。

それに伴い、トウクリアランスが向上し、前方へバランスを崩す頻度が低下しました。

また歩行スピードが向上し、1歩行周期の所要時間が20%程度短縮しました。

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考察です。片麻痺患者の歩行練習を進める際に、まずICからの適切な踵接地が最重

要と言われています。それは、前脛骨筋が促通され、下腿が前傾し、安定した立脚

期を作ることが可能となるからです。それにより、ターミナルスタンスでの股関節伸展

運動が可能となり、大腰筋の伸張によるスムーズな遊脚期が可能となるとされてい

ます。

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本症例の歩行動作は杖の過剰支持により、強い踵接地が阻害されていました。

フリーハンド歩行を行ったことでそれが可能となり、膝関節の急激な伸展運動が抑制

され、立脚期が安定しました。その結果、ターミナルスタンスにおける股関節伸展位

での保持が可能となり、トウクリアランスが向上したものと考えます。

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まとめです。発症から6か月を経過した症例において、フリーハンド歩行練習を行った

結果、歩容の急激な改善を認めました。片麻痺患者の歩行練習を行う上で、杖など

の支持物への過剰な支持を抑制し、踵接地を促すことが、歩行能力を向上させるうえ

で有効な方法であることが示唆されました。




…長い。

長いけど、この症例報告、私はとっても大切にしているんです。

動画でお見せできないのが残念ですが、動画で見ていただくともっと解っていただけ

ると思います。

兎に角5日間、踵接地からのしっかりとした荷重を促すことで、歩容が激変したんです

ね。

それくらい、踵接地をつくることは大事なんですよ。

そして多くの脳卒中片麻痺患者さんでは、それができていないんじゃないでしょうか。


理由3についての解説

先日資料を整理してたら出てきたんです。
第50回近畿学会で摂津ひかり病院と関西医療大学の先生が研究しておられます。『ステップ動作における踵接地の有無が支持側大殿筋の筋活動に及ぼす影響』
という発表でした。

以下にその要約を。

【はじめに】
・大殿筋は
上部線維と下部線維に分けられ、歩行においては立脚初期での下部線維の筋活動がによる股関節伸展作用が重要。
・ステップ方法の違いにより大殿筋下部線維の筋活動が変化することを経験する。具体的には、踵接地を伴うことで大殿筋の筋活動が得られやすいと思われる。
・ステップ動作における踵接地の有無が、支持側大殿筋の筋活動に及ぼす影響を筋電図学的に検討した。
【方法】
・対象は健常男性10名。
・課題は2種類で、ステップ動作において、支持側下肢の踵接地を行った際と、足底接地を行った際の支持側大殿筋上部線維・大殿筋下部線維・中殿筋・大腿直筋の筋電図波形を測定した。
【結果】
踵接地課題において、大殿筋上部線維、下部線維ともに踵接地時に筋活動が認められた。中殿筋は踵接地直前から踵接地後にかけて筋活動が認められた。大腿直筋は踵接地前から踵接地後にかけて筋活動が認められた(図1)。
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・一方、足底接地課題において大殿筋上部線維、大腿直筋、中殿筋は踵接地課題と同様の筋活動パターンを呈した。大殿筋下部線維は、運動課題中の筋活動が認められなかった(図2)。
img_20130217-063705.jpg
【考察】
・歩行の踵接地時、床反力ベクトルは股関節前方を通過するため、股関節には屈曲モーメントが生じる。このことから大殿筋上部・下部線維は踵接地時に生じる股関節屈曲を制動する目的で、股関節伸展作用にて活動するものと思われる。
・しかし足底接地課題では、大殿筋下部線維が活動しなかった。
・藤本らは支持側股関節屈曲モーメントの減少に伴い、支持側大殿筋下部線維は股関節伸展作用としてあまり関与しなかったと報告している。
・本課題においても、踵接地期が無いことで大殿筋下部線維が股関節伸展作用を発揮する必要性が減少したため、筋活動を認めなかったと考えられる。

【理学療法学研究としての意義】
・本研究結果から、立脚初期での大殿筋下部線維の筋活動による股関節伸展作用を促す目的でステップ練習を実施する際には、踵接地課題が有用であると考えられる。


…とのことでした。
この研究はステップ動作での結果ですが、当然歩行においても踵接地を促すことが大殿筋の筋活動を考えた上で重要であると思われます。





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ニックネーム
中谷知生
所在地
兵庫県宝塚市にある、宝塚リハビリテーション病院に勤めています。
職業
理学療法士です。

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