芸能人ダイエット方法

卒中八策 その六 立脚後期に股関節を伸展させよう

なぜ立脚後期の股関節を伸展させた方がよいか?

理由1:歩行時、股関節を屈曲させる主動作筋である大腰筋は、股関節伸展位で最も効率的に働くことができるから。

ソース:吉尾雅春

理由2:ターミナルスタンスにおいて股関節伸展位をとることで、よりリラックスした歩行動作が可能になるから。

ソース:管理人

理由3:ターミナルスタンスにおいて股関節伸展位を取ることで、同時に足関節が背屈位となり、ストレッチショートニングサイクルにより麻痺側下肢の振り出しスピードの向上が図れるから。

ソース:大畑光司ほか

理由4:股関節の伸展制限により、立脚後期の腓腹筋の筋活動量は有意に低下し、蹴り出しに影響を及ぼす。

ソース:西川徹ほか

股関節伸展制限が歩行ウ中の下腿筋の筋活動に及ぼす影響

臨床バイオメカニクス vol33.2012

理由1についての解説

この卒中八策 その六については、その三でも少し触れました。

随意性の低下した片麻痺患者さんでは、やはりいかに股関節を伸展して、楽にスイン

グしてもらうか。

これが非常に重要です。

これはもう吉尾先生が言ってるから…というレベルの話ではないですね。

けどやっぱり股関節伸展すべし、この鉄則を世にひろめたのは吉尾雅春である、と言い切りたい。

ということで、まずは吉尾先生の講義の資料をご覧ください。

img_20120718-055631.jpg

左が股関節屈曲位、右が股関節伸展位での大腰筋の状態です。

股関節屈曲位では、大腰筋は大腿骨への接触がほとんど見られない状態です。

それに対し、股関節伸展位では大腿骨頭直上部で骨の隆起に接し、いわゆる大腰

筋滑車という角度変化を起こしていることがわかります。

これが大腰筋の非常に重要な解剖学的特徴です。

img_20120718-055652.jpg

立位で大腿骨に荷重されると、骨が下から突き上げられて、その結果大腿骨董が

前方へと押し出されます。

この前方への崩れで、大腰筋がストレッチされることになります。

つまり股関節中間位もしくは伸展位で立位をとると、大腿骨頭が大腰筋を押し込

み、自動的に支持できるような機構となっています。

それに対し座位ではそのような機構が働きません。



img_20120718-055705.jpg

押し出されてきた骨頭を大腰筋の靭帯部分が後方へと押し返します。

これにより、大腿骨は股関節屈曲方向へと動きます。

このわずかな力で股関節が動く。

つまり股関節屈曲運動は大腰筋が収縮して、小転子を前方に引き出されて起こるのではないんです。

だから、大腰筋が最も働きやすい姿勢・アライメントを考慮した歩行練習を行う必要があります。


・股関節屈筋の発揮トルクについてのデータ

img_20120803-012612.jpg

これは京大の市橋先生が発表した 数学的モデルにおける股関節屈筋の発揮トルク

算出 関節肢位による違い、という文献からひっぱてきた表です。

筋力というのは骨のアライメントによって発揮トルクが変化するので、関節角度によっ

て主動作筋が変わる可能性があります。

じゃぁ股関節はどうか、ということを調べているんですが、結果から、股関節伸展位・

屈曲位すべてのレンジにおいて最大トルクを発揮するのは腸腰筋である、ということで

した。

ここからも、やはり股関節の前方への推進運動におけるキーマッスルは腸腰筋、大腰

筋であることがわかります。


まとめると、

大腰筋は骨盤の直立位保持・股関節屈曲運動の役割を担い、その機能は骨盤直立

位の姿勢で最も機能的である。

特に骨盤の直立位保持・股関節屈曲運動が困難となりやすい脳卒中片麻痺患者の

トレーニングにおいては大腰筋の作用をいかに保障するかを考えることが重要であ

る、ということです。


理由2についての解説

ここでは理由2、ターミナルスタンスにおいて股関節伸展を保障することでリラックスし

たスイングが可能になる、というお話をしてみたいと思います。

理由その1は吉尾先生であり、根拠もしっかりしていますが、この理由2はいかんせ

んソースが私自身であるという部分が非常にまぁその心苦しいところですが、ちょっと

聞いてください。

img_20120723-052920.jpg

この患者さんは麻痺側下肢後面の筋緊張がものすごく高いです。

使用してる装具は、長下肢装具で足継手はダブルクレンザックとゲイトソリューションです。

上の画像は杖歩行の様子です。

膝関節はロックしていません。

足関節はダブルクレンザックによる固定は行わず、ゲイトソリューションの油圧3で底屈制動・背屈フリーです。

画像がちょっと見にくいかもしれませんが、明らかに足尖からの接地になっています。


ちょっと話が変わりますが、『ゲイトソリューションって下肢の筋緊張の高い症例には適応しないよね』って言うセラピストがいますが、私はそうは思いません。

その理由を以下に示しつつ、歩行練習において股関節を伸展させることの重要性を説明してみたいと思うのです。


で、上の画像からもわかるように、ハムストリングスや下腿三頭筋の筋緊張が高いと、ゲイトソリューションの油圧だけではどうしても足尖からの接地になりやすい。

これだけ見ると、確かにゲイトソリューションは筋緊張の亢進した症例には不向きのように思われるかもしれません。

私自身も、この患者さんが普段、トレーニングでない状況で歩行される時にはダブルクレンザックにより足関節をしっかり固定して、足関節・膝関節が安定するように調整しています。

ただし、理学療法場面においては状況が違うと思います。

下の画像はダブルクレンザックにより足関節を固定した状態での介助歩行の画像です。

img_20120723-054213.jpg

画面中央の青いグラフに注目してください。

このグラフは歩行中の股関節屈曲伸展の角度を表示しています。

上方向が股関節屈曲、下方向が股関節伸展です。

黒い基線が屈曲伸展中間位です。

この画像からは、ターミナルスタンスにおいて股関節がわずかに伸展していることがわかります。

ではこの患者さんで足関節をダブルクレンザックではなく、ゲイトソリューションによる底屈制動・背屈フリーにすると股関節の動きがどう変わるか。

img_20120723-053844.jpg

青いグラフが下方向に延びてきたことがわかります。

つまりターミナルスタンスで股関節の伸展角度が増大したということです。


…まぁ当然と言えば当然なんですが、下肢の緊張が高いことを理由に足関節を固定

することは、普段の生活場面における装具の設定としては必要な判断です。

しかし我々理学療法士がトレーニングするときにはそれは必ずしも妥当な選択では無

いかもしれません。

なぜなら足関節を固定することで、ターミナルスタンスにおける股関節伸展角度は確

実に制限を受けるからです。

繰り返しますが、随意性に問題のある片麻痺の患者さんでは、しっかりと股関節を伸

展させることで大腰筋が伸張され、スムーズに麻痺側下肢をスイングすることが可能

となります。

スムーズにスイングすることで、歩行時に患者さんが『頑張ってしまう』感じを少しでも

減らすことは非常に重要です。

特に筋緊張の亢進している症例においてはとにかくリラックスしてスイングしてもらうこ

とが重要です。

そのために、やはりトレーニング場面では足関節を固定するのではなく、動きやすい

状態にして、セラピストが適切な介助を加えることで、患者さんに理想的な運動をして

もらう。

これが歩行介助による最大の治療効果を生むと思います。

ではその治療効果とは何なのか?


同じ患者さんで、長下肢装具・膝関節ロック・足関節は底屈制動・背屈フリーの状態

で、トレーニング開始当初の画像です。

img_20120718-060651.jpg

着目していただきたいのは、画面一番上の赤いグラフです。
これは歩行中にゲイトソリューションに生じる底屈トルクを表しています。
下腿三頭筋の緊張が高いため、遊脚期にも足関節が底屈位となってしまい、何だかグ
シャッとしたグラフです。

また緑のラインは足関節の底背屈の動きを表しますが、ほとんど動いてないことがわ

かります。

で、この状態でセラピストが後方から介助して、股関節をしっかり伸展させることを意

識した歩行練習を行いました。

ポイントはひたすらターミナルスタンスでの股関節伸展を促すこと。

伸展位から力を入れずにだらっとスイングできることを覚えてもらうことです。

40分間歩行練習を実施した後、ゲイトジャッジの画像がどう変化するか。


img_20120718-060642.jpg

一番上の赤いグラフ、遊脚中の底屈トルクが減少して、ファーストピークがきれいに立ち
上がってきたことがわかります。
また緑のラインで上向きの山ができて、ターミナルスタンスにおける足関節背屈が出現
したことがわかります。

この画像から推測できることは、股関節伸展位からリラックスして麻痺側下肢を振り出
す動作を繰り返すことで、下肢の筋緊張更新を抑制することが可能である、ということで
す。
そしてそのためには、足関節を固定することはあまり得策ではないと思われます。

私自身の印象としては、片麻痺の患者さん、特に麻痺側下肢のスイングに問題があ

る場合、またそのために筋緊張が亢進してしまうような場合では、麻痺側下肢の股関

節伸展運動を意識したトレーニングがより重要となってくるものと思われます。


理由3についての解説

さて、歩行時の股関節伸展と大腰筋の話をする上で大切なことをもう少し。

ここからは股関節伸展によるストレッチショートニングサイクルへの影響、というものを

考えてみようと思うわけです。

山本澄子先生や大畑先生の講義を聴いていると、必ずと言って出てくるのが、
ストレッチショートニングサイクルというキーワードです。

これ、私の中では何となくわかったような、わからんような、中途半端な状態だったん

ですが、調べなおしてみると、別にそんなに難しい話ではないんですね。
以下に、歩行動作におけるストレッチショートニングサイクルの役割を説明します。

まず、ストレッチショートニングサイクル、というキーワードで検索すると、体力科学関

係のホームページやブログがずらずらと出てきます。
そこで語られていることは概ね以下のニュアンスでしょうか。

・筋肉にはもともと、『縮む』か『緩む』能力しかなく、『自ら伸びる能力』はない。
・しかし、『外部からの力で伸ばされる』能力があり、これが非常に重要な能力である。
・なぜ伸ばされる能力が重要かというと、筋を伸ばされることで反射運動を引き出すこと
が可能だからである。
・筋肉には筋紡錘とよばれるセンサーがあり、外部からの力によって筋が伸張されたと
き、これ以上筋を伸ばされると筋が断裂してしまうとセンサーが察知すると、それを防ぐために脳から『急激に縮め』という命令が下される。その命令を受けた筋は、外部からの力に負けないように、通常よりも大きなパワーを発揮し、強く縮む。
・この一連の流れをストレッチショートニングサイクル(SSC)と呼ぶ。
・つまりSSCとは、外部から力を受けた際に危険を回避するために通常より大きな力を発揮することである。
・例えば大きくジャンプしようとした際に、一度かがむのも、筋肉をストレッチさせてSSCの反射を利用しているためである。
・SSCを利用した場合、大きなエネルギーを稼ぐことが可能でありながら、使用しない場合よりもエネルギー消費量は少ないため、効率的な筋運動が可能となる。


…と。
で、多くのホームページではこの解説の後に、『野球のピッチングフォームにおけるストレッチショートニングサイクルの考え方』の話になります。
ではこのストレッチショートニングサイクルが、歩行動作においてどう絡んでくるのか。

・立脚後期におけるストレッチショートニングサイクルの役割

img_20120809-055437.jpg

これは大畑先生が繰り返し繰り返し講義で用いてる、福永らの2001年の文献。

歩行時の筋腱複合体が点線、筋束が太線、腱が細線の長さの変化を表している。

歩行動作における足関節の腓腹筋の筋束を観察すると、単脚支持期(single support)の最後に筋腱複合体は伸張されるが、筋束は大きく変化していない。

この時期、底屈筋の筋活動は見られていない。

当然、この時期に足関節の底屈方向へのパワーは発揮されている。

しかし底屈筋の筋活動は生じていない。

じゃぁ誰が底屈運動をさせているのか?

注目すべきは腱が伸張されているということ。

腱にはバネのような作用がある。

つまり歩行における背屈局面においては腱が伸張される際に蓄積された弾性エネルギーが底屈局面で解放され、この反動動作により高いパワーを発揮することになる。


この力は、遊脚振り子を生む力源となっているため、歩行スピードの決定因子として重要な役割を果たしている、ということ。


これ、理屈としてはまぁわからんでもないんですが、どうも私の中では腑に落ちないというか。

ほんまかいな?

という感じだったんですが。

ところがね、ゲイトジャッジで計測してると、このストレッチショートニングサイクルによる足関節の底屈っぽい現象って、ある。

あるんですよ。

じゃぁその画像をお見せしましょう。

img_20120813-062848.png

これね、実はT-supportの紹介のページでも掲載したゲイトジャッジの画面なんですが。

これ、股関節伸展を出さずに歩行した時のものです。

img_20120813-062952.png

股関節伸展をしっかり介助すると、こうなります。

ほら、セカンドピークが出現したでしょ?

長下肢装具装着下での歩行においても、足部にゲイトソリューションを導入して、足関

節背屈フリーの状態で動作することで、ストレッチショートニングサイクルの利用を可能

とし、より力学的に有利な歩行を可能とする、ということが良くお分かりいただけると思

います。

ちなみにこの原理原則は、当然片麻痺患者さんだけのものではありません。

大腿骨骨折の患者さんにおいても同様の事が言えます。

ただし、整形外科疾患の患者さんは多くの場合、随意性は大きく低下していませんの

で、少し捉え方に注意が必要となってくるものと思われます。

以下のスライドは、2012年のPT全国学会において私が発表したスライドと読み原稿です。

img_20120809-061157.jpg

このスライドを見ると、伝説となりつつある、演題番号227番すっ飛ばし事件、を思い出さざるを得ませんが…

まぁ気にせずに行きましょう。

img_20120809-061347.jpg

今回、大腿骨骨折術後患者のセカンドピーク値と歩行速度の関係を調査した結果、

セカンドピークは歩行速度に影響することがわかりました。

そこから、セカンドピークの重要性が見えてきましたので発表します。


img_20120809-061359.jpg

測定には、川村義肢社のゲイトジャッジシステムを使用しました。

これはゲイトソリューションの油圧ユニットに生じる底屈制動力を計測することにより、運動力学的情報を得ることができる装置です。


img_20120809-061410.jpg

これがゲイトジャッジの画面です。健常歩行では、1歩行周期に2度の底屈トルクが発

生し、ファーストピーク、セカンドピークと呼ばれており、正しいヒールロッカーとフォア

フットロッカーが保障されていることを示します。

img_20120809-061420.jpg

セカンドピークは下肢の振り出しの速度を向上させるため、片麻痺患者では、セカンド

ピークが歩行速度を向上させることが明らかになっています。

一方で、大腿骨骨折術後患者におけるセカンドピークの報告はありません。 セカンド

ピークが歩行速度にどのような影響を与えているのでしょうか?

img_20120809-061438.jpg


調査対象者は12名で、内訳はこのようになっています。評価は術側下肢にゲイトソ

リューションを装着し、10m歩行およびセカンドピーク値を測定しました。

img_20120809-061449.jpg


結果です。

セカンドピークを発揮したのは快適速度歩行で1名、最大速度で5名となっており、出

現頻度の低さと速度依存性がわかります。次に、セカンドピークを発揮した5名と発揮

しなかった7名の2群でデータを比較しました。

img_20120809-061504.jpg

快適速度と最大速度での10M所要時間を比較すると、両群ともに有意に所要時間が

短縮しています。このことから、セカンドピークの有無に関わらず、歩行速度を向上さ

せることは可能であるということがわかりました。

img_20120809-061514.jpg

次にセカンドピークの有る群と無い群の間で歩行速度を比較すると、最大速度におい

て有意差が認められました。このことから、セカンドピークは最大速度を向上させると

考えられます。であれば、セカンドピークの値が高ければ高いほど、速く歩けるので

しょうか?

img_20120809-061527.jpg

セカンドピークのトルク値と最大歩行速度の順位相関係数は‐0.6と、負の相関関係

が認められました。 ここが本研究結果の面白いところで、セカンドピークは有る方が

早く歩けるんですが、セカンドピークを発揮した5名の中では、トルク値が高いほど歩

行速度が低下する可能性があります。

img_20120809-061536.jpg

今回の調査より、大腿骨骨折術後患者におけるセカンドピークの特徴が見えてきました。

一つ目は、整形外科疾患において、セカンドピークの出現頻度が低いということ

二つ目は、高すぎるセカンドピークには弊害があると考えられるということです。

img_20120809-061547.jpg

なぜ出現頻度が低いのか。

セカンドピークの発生には、ストレッチショートニングサイクルが関与しており、ターミナ

ルスタンスで股関節が伸展位で保持されることで下腿三頭筋腱が伸張され、そのエ

ネルギーにより発生します。よって、出現頻度の低さは、股関節の可動域障害によ

り、このアライメントを保持できなかったためと考えました。ではセカンドピークが出現し

た症例がすべて良いアライメントを保持できてたのかというと、おそらくそうではありま

せん。


img_20120809-061556.jpg


京都大学の建内らの研究では、股関節術後患者は股関節の機能低下を補うため代

償的に強いプッシュオフを用いると報告しています。 今回セカンドピークを発揮した5

名の中でも、この代償的なプッシュオフが発生していた可能性があります。

img_20120809-061607.jpg

つまり股関節の伸展位保持が可能な場合は正常動作の結果としてセカンドピークが

発生しますが、不可能な場合には、代償動作としてプッシュオフが出現したものと考

えます。

よって、トルク値と歩行速度と負の相関は、股関節の機能低下が原因と思われまし

た。

img_20120809-061619.jpg

本研究を通して、大腿骨骨折術後患者の足関節運動の評価の重要性が明らかにな

りました。

今後は股関節の伸展角度や筋力など、セカンドピーク発生時の股関節の多角的な評

価が必要と考えます。




…というわけで股関節屈曲筋と足関節底屈筋の働きはトレードオフの関係にある。

整形外科疾患の症例においては、この部分の区別が重要になってくると思われます。


理由4についての解説

これは20112年の臨床バイオメカニクスに掲載された、京大医学部の西川氏の論文です。

内容は以下の通り。




・一般に、股関節の伸展可動域が制限されると歩行速度や重複歩距離の減少を招き、これらを部分的に補うために骨盤の前・後傾の代償運動が生じることが報告されている。また、股関節伸展制限により歩行中の大腿四頭筋の筋活動パターンや膝関節運動が変化することも報告されている。

・このように股関節伸展制限は、歩行中の近接する部位や関節運動に影響を及ぼすことが明らかにされている。しかし、股関節伸展制限が歩行中の足関節運動や下腿筋の筋活動にどのような影響を与えるかを検討した報告は見当たらず、不明な点が多い。

・整形外科的および神経学的疾患を有しない健常成人9人を対象とし、トレッドミルを用い、通常歩行ならびに対象者の右側下肢にダイヤル式股関節伸展装具を着用し、股関節を0°、30°に伸展制限させた3条件とし、前脛骨筋、内側腓腹筋、ヒラメ筋の3筋の表面筋電図を測定した。

・結果、前脛骨筋の%RMSは有意差を認めず。

・内側腓腹筋とヒラメ筋の%RMSでは、立脚後期に有意差を認めた。内側腓腹筋の%RMSは、股関節30°伸展制限では通常歩行と股関節0°伸展制限と比較して立脚後期において有意に低い値を示した。

・また、ヒラメ筋の%RMSに関しては、多重比較法では各条件間で有意差を認めなかった。

・Sutherlandは、歩行中の立脚期での腓腹筋の筋収縮のタイミングは、ヒラメ筋と比較してわずかに遅延していると報告している。

またPerryは、ヒラメ筋は立脚中期から後期にかけて遠心性収縮を行うことで足関節を制御するとともに下肢全体の安定性を得る機能を果たし、腓腹筋の主な機能は立脚後期での蹴り出しによって身体を前進させることであると述べている。

・腓腹筋とヒラメ筋にはこうした機能的な相違があるとともに歩行周期での筋活動のピークも異なることから、立脚後期におけるヒラメ筋の筋活動量は股関節伸展制限を受けなかったが、内側腓腹筋の筋活動量は股関節30°伸展制限で最も低い値を示したと考えられた。

・本研究の結果から、30°の股関節伸展制限により身体の前進や下肢の振り出しのために必要な立脚後期の効率的な腓腹筋収縮が阻害されることが明らかとなった。我々の先行研究において、股関節伸展制限のある歩行では、立脚後期から遊脚期にかけて大腿四頭筋の過剰な筋活動を認めたことを報告した。

また、脳損傷片麻痺患者の麻痺側の立脚後期に足関節周囲筋の筋活動が減少している症例では、同時期の非麻痺側の筋活動を増加させて姿勢保持を行っていることが報告されている。

・以上の事から、股関節伸展制限下での歩行では、同側の下肢の振り出しや反対側下肢の代償動作によって前方への推進力を得ていると推察される。



以上です。

ま、いずれにせよ、やっぱりしっかりと股関節伸展を保持するということがいかに重

であるか、ということなんですね。



プロフィール画像
ニックネーム
中谷知生
所在地
兵庫県宝塚市にある、宝塚リハビリテーション病院に勤めています。
職業
理学療法士です。

ブログ

1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031
QRコード
携帯用QRコード
アクセス数
ページビュー数