芸能人ダイエット方法

バイオメカニクスについてまとめてみた

バイオメカニクス、これでわからなきゃあきらめろ!

さて、新しいページを追加してみましたよ。
バイオメカニクスですよ。
バイオメカニクス。

学生時代の私を知っている人間がこのページを読んでたら、びっくりするでしょうよ。
この私がバイオメカニクスについて語る。
うん、無理がある。
物理とか、力学なんて大っ嫌い…な私でございます。
だから無理がある。
無理があるんだけど、やっぱり歩行について考えようとすればするほど、バイオメカニクスの知識はとっても重要だと、10年PTやって痛感する日々なわけでございます。

だから、いまさらながら、力学の基礎から学び直そうとしてるんですが。
わからんことだらけ。
基礎学力が低すぎる。
でもそんな私だからこそ、同じように力学が大っ嫌いなあなたのために解説できることがあるはずだ。

というわけで、ここでは力学の基礎から初めまして、最終的に歩行のバイオメカニクスについて、日本一分かりやすい解説にチャレンジするという試みの一部始終をご覧いただくというわけなんですね。
じゃぁ早速始めます。

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今年の夏は、私にとってはバイメカな夏だったわけなんです。
臨床歩行分析研究会と新潟医療福祉大学が共催した、基礎バイオメカニクスセミナーの初級と中級に参加してきたんですね。

良かったですよ。
何が良かったかって、講師の先生方が非常に良かった。
江原義弘先生、山本澄子先生、勝平純司先生。
3人の解説がとってもわかりやすかった。

このページを読んでいる、バイメカを基礎から学び直そうというそこのあなた。
本当に勉強するつもりがあるならまた来年、このセミナーを受講することを強くお勧めします。
ただし、5万5千円が必要です。
まぁ個人的には妥当な値段かと感じましたが。

というわけで、ここではその6日間の講義内容をベースとして、その中から純粋に歩行に関する運動の力学を理解するために必要なエッセンスを抜き出して、解りやすく解説しようとしているわけです。
しかも無料で。

まず初めに…バイオメカニクスって何だ?


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じゃぁ早速始めるわけですけれども。
まずバイオメカニクスとは何ぞや?
それを学ぶことにどんな意味があるのか?
というところから始めたいんですけれどもね。
上のスライドにもあるように、
バイオメカニクスとは、バイオ(生体)と、メカニクス(力学)がくっついてる言葉なわけですね。
だから日本語で言うと、生体力学なわけです。

…これで、『うん、なるほどな』と思えるあなたは賢い。
私なんかはもっとアフォなんで、『力学』という言葉の意味が良くわからない。
一体『力学』って何なんだ?
と思うわけです。
で、調べてみると。
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力学とは、物体の運動に関する学問、なんですね。

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『力学』という言葉は、いろんな分類の方法があるわけですけれども、まぁ我々は歩行の力学がわかればいいんですから、ここであんまり細かい部分を調べたおしてもメリットは無いと思われるのでざっといきましょう。

で、とうやら『力学』には
剛体力学・変形体力学・流体力学の3つにジャンル分けされるらしい、と。

これから解説するバイオメカニクスは、『剛体力学』の知識を使うことが多いみたいなんですね。
剛体力学と言いますのは、外部からの力に対して変形しない物体のことです。
そんなものがあるのか?というとそんなものはないんですね。
これはあくまで理想的、仮想的なものであって、 実在する物体には完全な意味での剛体は存在しません。
どんな物体でも力を加えられれば少なからず変形します。

そこで、変形体力学では,物体のゆがみ,すなわちそれ自身の変形をも扱うそうです。
さらに、空気とか水とか、そんな感じのものの動きに関する学問に特化したのが流体力学なんですね。

ちょっとどうでもいい話が長くなりましたが、つまり我々がこれから、人間の歩行動作を力学的に考える上で、一つのお約束があるわけです。
それは、人間の身体を一つの剛体として考えていますよ、ということですね。
本当はそんなことないわけです。
骨や靭帯に力を受けるとわずかな変形が生じるはずですが、そんなことを言ってたらものすごくややこしくなる。
だからここはひとつ、人間の体を、かっちかちの物体が関節でつながっている、と仮定して考えて行こうじゃないか、ということです。
上のスライドの右側の絵のように。

で、その剛体力学がまた2つにジャンルが分けられましてね。
物体が平衡状態である『静力学』と、非平衡状態を扱う『動力学』に分けられるわけです。
その『動力学』は、またしても『運動学』と『運動力学』に分けられるんですが…
もうここまでやると、わけがわからなくなってきますね。
でももうちょっとだけ解説します。

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このスライドの中身もちょっとわかりにくいかなと思いますが、剛体の運動を解析するときに、運動学的視点と運動力学的視点に分けられるわけです。
キネマティクス的なパラメータとは、身体運動そのものを定量的に表現できるパラメータです。
だから、重心位置がどうか、速度、関節角度、その他歩行動作であればピッチやストライドがどうであるとか、そういうのが運動学的な捉え方であると。

一方、キネティクス的パラメータとは、床反力、関節トルク、関節モーメントなど、力学的エネルギーをパラメータとして扱うわけですね。


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これなんかイメージしやすい絵だと思うんですが。
壁を押しています。
同じに見えますが、左はあまり力を入れずに、壁にもたれているだけ。
一方右は壁を強く押している状態。
ぱっと見た感じ、同じ姿勢に見えても、運動力学的な視点からは、剛体にどのような力がかかっているかを分析することで、その違いが明らかになってくるわけです。


だから、我々が目の前の患者さんの運動をバイオメカニクス的観点から考えて、
「なぜこのような動きになるのか」
「どんな動きがよいのか」
「どうしたらもっとよくなるか」
「こんな動きはできないか」
そんなことを考えるときには、われわれの身体がどのような力学的特性をもつのかを知らなければならないわけです。
だから、物体が動くことについて理解する必要があるわけなんですね。
そのためには力学の基本的な知識が必要となってくるんですよ。

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何となく、バイオメカニクスというものがなんであるか、というイメージがわいてきたかなと思います。
ここで改めてバイオメカニクスとは何ぞや、ということについてまとめておきます。
上のスライドのように、バイオメカニクスとは、生物学的構造に対して力が加えられたときに、どんな効果が表れるのか、を取り扱う学問なんですね。

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その中でも、これから勉強する事は、ヒトの身体のバイオメカニクス。
その身体運動。
さらに言うと、運動の中でも、歩行に関することを勉強してみましょう、というわけです。

前振りが長くなりましたが、歩行について考える上で力学的な知識が大切であるということがお分かりいただけたかと思います。
そこで、ここから簡単な力学のおさらいをしてみましょう。

第1講−1 力とは

まずは力の合成と分解の話から始めましょう。

最初に気になるのは、

力とは何か?

ってことですね。


ウィキペディアで調べてみると、力とは、自由物体の動きを変化させたり、あるいは固定物体に応力を起こす、外部から影響をもたらすもの、と解説されています。

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ヒトが歩行するときにも、例えばこの図のように、床からの力が各関節に影響を及ぼすわけです。

ですから、歩行の力学を勉強する上ではやはりこの力の性質を熟知する必要があります。


この『力』ですけれども、一つの大きな特徴があるわけです。

それは、『合成と分解ができる』ってことなんですね。

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例えばこの絵。

またずーっと後の方で出てくる絵なんですが、ちょっとフライング気味に紹介してみます。

足が床に接触すると、接触した部分には必ず反力が生じます。

図はこの状態を漫画で示したもので、各部分の反力の大きさはまちまちです。

方向もまちまちです。 

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ここに出てくる小難しい言葉は今はわからなくても問題ありません。

なんせ、このリーゼントの人物の、左足の部分に発生している力の矢印だけに注目してください。

各部分の反力は互いに平行になっている場合もありますし、別の方向になっている場合もあります。

これらたくさんの力を、まとめて一本に合体させて考えると、ヒトの動きを考えるときにとっても便利なんですね。

そして、力というものはそうやって合体させても構わないわけです。

その方法を学びましょう。

第1講−2 力の合成

一つの物体にいくつかの力が加わるとき、力全体でその物体にどのような影響を与えているのか。

それを知るには、それらの力を合成すれば良いのです。

複数の力を一つにすることを力の合成といい、合成された力を合力といいます。

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この絵では、2人の駅員さんが車いすを持ち上げようとしています。

左の駅員さんの力と、右の駅員さんの力を合成した力Fが、車いすを上に引っ張り上げる力です。

この絵をイメージしながら、力の合成の方法を解説します。

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車いすの絵のまま考えるとややこしくなるので、ちょっとシンプルな絵で考えます。

青い物体を引っ張り上げる2つの力があります。

この向きが違う力を合成します。

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まず力の作用船を延長します。

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2つの作用線の交わった点を原点として、2つの力を原点まで作用線に沿って移動します。 

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2つの矢印の先端を頂点として図のように平行四辺形を作図します。

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原点から対角線を引くと、それが合成力を表します。

これが向きの違う2つの力を合成する方法です。

重要なポイントは、2つの力を平行四辺形の2辺とした場合の対角線が合成力になる

ということです。

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たとえばこの黒帯の選手。

右手と左手で相手を引っ張ってます。

その引っ張る力の合成力は、右図のように平行四辺形を造ることで求められるわけですね。

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歩行分析なんかの文献や書籍で、よくこのような矢印が出てきますが、これも同じように、床から下肢にかかってくる力を合成した結果得られた概念なんですね。


このイメージはとっても大切です。

例えばヒトの重心位置。

立位ではおへその近くにありますが。

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これも先ほどと同じやりかたで求めた結果なんですね。


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こうやって身体を7つの部分に分けてみまして。

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それぞれのパーツにかかる重力を合成してくわけです。

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そうすると、7つの力が1つに合成されて、それが身体全体の重心にかかっている力を表しているということになるんですね。

このように、身体にかかる力がどの方向で、どんな場所に、どの大きさでかかってくるのかをイメージするために、力の合成を理解することはとっても大切なんですね。


第1講−3 力の分解

力の分解は、基本的には合成の時と同じように平行四辺形を使って行います。

ただし、ここで留意しなければならないのは、2つの力を合成したときの合力は1つに決まるんですが、逆に一つの力を2つに分解する方法は、無数にある、ということです。

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この3つの図をみてください。

同じ力F3ですが、それをどういう角度の平行四辺形で分解するかによって、その分力は違ってしまうわけです。

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そこで、特にバイオメカニクスにおいて力の分解を考えるときには、長方形を使用するということがお約束になります。

繰り返しになりますが、力学的に『平行四辺形で分解する』という作業は決して間違いではないのです。

間違いではないのですが、平行四辺形で分解してしまうと、ちょっと面倒なことになるので、長方形で分解するのがお約束なのです。

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なんで直角で考えたほうがいいのか。

例えばこの脊柱で考えてみます。

オレンジの矢印の始点部分の脊柱には、それより上の部分の重量がかかってきます。

その合力がいま、オレンジの矢印で表されているわけです。

この力を、脊柱に沿ってかかる力と、そうでない力に分解してみます。

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オレンジの矢印が対角線になるような長方形をつくるわけですから、こうなります。

重力を表していたオレンジの矢印が、脊柱に沿ってかかる力と、脊柱を後方に倒す向きの力に分解できることがわかります。

脊柱にかかる力はもとのオレンジの力よりも小さくなります。

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これを、平行四辺形を使って分解してしまうと、ややこしいことになっちゃうわけです。

例えばここで、まぁどんな角度でもいいんですが、上の図のように水平のラインを引いて平行四辺形を作ってみます。

そうすると、こんな平行四辺形ができるわけです。

これでは脊柱に沿ってかかる力を純粋に表現できていません。


繰り返しになりますが、力の分解のやり方としては間違ってないんです。

間違ってないんですが、脊柱にかかっている力を純粋には表現できてないんですね。


この分解では、先ほどのスライドと違う点があります。

それは、脊柱に沿ってかかる力が、元のオレンジの力よりも大きくなってしまっている

ということです。

ではもし脊柱がもっと後傾したらどうでしょうか。

この図から容易に推測できるように、脊柱に沿った力は図よりももっと大きなものになります。

後傾すればするほど、脊柱にかかる力は大きくなっちゃうわけですね。

それじゃぁベッドに寝てるおじいちゃんの脊柱起立筋群がムキムキになっちゃうじゃないか、というわけですよ。

それはおかしい。

なんでこんなことになるのか。

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それは、赤の矢印で示した、水平に引いた平行四辺形の一辺の力は、もう一度脊柱に沿った上向きの力へと分解することが可能だからです。

なぜ平行四辺形で分解した場合に、オレンジの線よりも脊柱にかかっている力の方が大きいのか。

それは、赤のラインで示した平行棒の一辺に、脊柱に沿って発生する上向きの力を含んでいたから、なんですね。

これではバイメカ的に正解ではないわけです。
バイオメカニクスにおいては、分解して得られた2つの力は、すでにお互いが緩衝しあわない力になっていないと困るわけです。

なぜなら特定の関節や骨に純粋にかかっている力を推察したいから。


だから、力を分解する際にはどんな平行四辺形でも良いというわけではないんですね。

必ず直角に交わらせて、分解した結果得られた2つの力がもう干渉しあうことのないようにせねばならないんですね。

おわかりいただけましたでしょうか?


さて、ここまで読んでいただくと、力の合成と分解が、歩行における動作分析においていかに重要なものであるか、が何となくイメージできてくるのではないでしょうか?

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さっきも出てきたこの図。

イニシャルコンタクトで、床反力が図のように身体にかかったとして。

これが矢状面上で、上方向(Z軸方向)と横方向(Y軸方向)にそれぞれどのような影響を与えているのかを考えてみると、以下のようにイメージできるわけです。

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あ、ここでは考えをシンプルにするように、上方向と横方向だけで考えましたが、実際には前額面方向(X軸)の力も関与してくるわけですが…

この辺は今はいいでしょう。

お好きな方はウィキペディアなんかで『直行座標系』なんかを調べてもらえればよいかと思われます。


…ということで、歩行を分析する際に、力を合成したり、分解したりすることを理解していることの意義というのはこのあたりにある、ちゅうわけですな。

以上。

じゃぁ次はテコの話をしましょうか。


第2講−1 テコの復習

さて、ここからはテコの話をしましょう。

テコは大事です。

ボキにとって、テコといえば吉尾雅春ですね。

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↑これ、吉尾先生の講習会の資料です。

急性期からの下肢装具使用、早期歩行訓練の重要性を訴える吉尾先生。

でもなかなかPTが動かない。

で、吉尾先生の表現として、

『てこでも動かぬ理学療法士をどう動かすか』

なんて言っておられます。


でね、まぁ吉尾先生がおっしゃるまでもなく、テコって大事なんですって。

それは、テコの考えを生体に応用することで、動作を分析するきっかけになるからなんです。

それではまず、テコとは何か、という話から始めます。

その後に、テコを生体で応用するためのポイントをお伝えします。

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では、念のために小学校5年生のテコの復習から始めましょう。

図のテコがつり合っているとき、必要な力は何でしょうか?

暗算でやるには、長さの比が4:1なので重さの比は1:4になるので、力は10となります。

しかし絶対にこのような暗算をしないでください。


と、『基礎バイオメカニクス』には記載されています。

そうではなくて、

Fkg×4m=40kg×1m

という式を書いてから解くことが大事なんですね。

そしてこのとき、式にとmという単位を必ずつけることが大事だそうです。


なぜか。

理科は算数とは違います。

算数では数字のみを取り扱いますが、理科で取り扱うのは数字ではなく物理量です。

重さは40ではなくて40kgで、長さは1ではなくて1m、なんですね。

このように式が完成したら、Fを計算します。

このとき、Fにかかっている4mを右辺の分母にまわします。

この際、忘れずにmもつけてください。

そうすると、分子にmがあって、分母にもmがあるので、これらの単位が約分できます。

kgは約分ができないのでそのまま残ります。

答えは10ではなく10kgとなります。


この、数値には必ず単位をつけるという習慣は意外と大切なんですね。

なぜかというと、バイオメカニクスにおいて、どんな運動をしたときに、関節にかかる

力がどうなってるんだろう、なんてことを考える上では、『モーメント』という概念の理解が重要だからです。

そして、その『モーメント』を考える上では、必ず式をたてるというイメージが大切になってくるからなんですね。

ではここでモーメントについて考えてみましょう。


第2講−2 テコと関節モーメント

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今、上の図のようなテコがあります。

この状態で、テコの両端A・Bに力F1・F2が加わっている場合、2つの力がつりあっている条件は、

F1(kg)×r1(m)=F2(kg) ×r2(m)

となります。

この式の両辺は、三角錐の頂点を回転の中心として、テコである棒を回転させようとしています。

この、物体を回転させようとする能力を、『力のモーメント』と言います。

つまり、

力のモーメント=力の大きさ×回転軸から力の作用線に引いた垂線の長さ

ということです。

人体の関節の殆どは、ある軸を中心とする回転運動によって運動が形成されています。

したがって、『力のモーメント』の概念を動作分析に応用することが可能となるわけで

す。

ここ、重要なとこです。


私なりの暴論を述べてみますと、歩行動作を考えるために、テコの原理を理解する

必要は高い。

なんせ吉尾先生もそう言っているんだからそうに違いない。

必要性は高いんですが、でもそれは別に学生時代のように、テコの計算式を立て

て、この時ここにはどんな負荷がかかっているか、そんなことを推測するためじゃぁ

ないんです。

多分。

それよりもっと大事なことは、テコを通してモーメントの概念を理解しておくことが大

事なんです。


さて、話を戻しましょう。


人体の関節は殆どが、回転運動を行います。

この関節を、関節の軸を中心として回転させようとする力、それを関節モーメントと呼びます。

これは筋の張力により関節を回転させようとする力のことです。

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具体的に、ヒトの肘関節で考えてみましょうか。

いま、上の図のような状態で関節が動いていないとします。

このとき、上腕二頭筋による張力F2に、関節の回転中心から引いた垂線の長さr2

を掛けた、F2×r2が、筋による関節モーメントということになります。

そして、F2およびr2を直接的に推定することが困難なため、重錘F1×r1に着目し、

関節モーメントを間接的に推定することが可能なのです。

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じゃぁ今度は下肢で考えてみましょうか。

上の図で、各関節に作用する力は、主に床反力と筋の張力です。

よって、外力として身体に作用する床反力のベクトルと関節の中心との位置関係をみ

ることで、関節モーメントを近似的に推定することが可能となります。

足関節では、床反力ベクトルは関節中心の前方をとおっているため、床反力自体は

足関節を背屈させる方向に働きます。

この状態で足関節が背屈してしまわないで姿勢を保持できているということは、何ら

かの足関節を底屈方向に働かせるモーメント(足関節底屈モーメントと言います)が作

用していると推察することが可能です。

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こういうことですね。

もう少し模式図てきな表現になると、

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こういうことです。

赤の矢印が床反力だとすると、床反力は足関節を背屈させようとして、

その結果、足関節底屈筋が働くということです。

このつり合いは、右図のようにテコで表すことが可能なんですね。


ですから、繰り返しになりますけれども、臨床において、特に歩行分析をバイメカ的な視点から考えようとしたときには、別にまぁテコを用いたややこしい計算とか、第1のテコの特徴は、第2のテコの特徴は…なんてことはとりあえずすっとばしちゃっても構わないんじゃないか、ということです。

そうじゃなくて、生体においてテコを応用するためには、

関節が回転運動をするとき、回転の中心となる関節部分がテコの支点となる

その関節を回転させるような力を矢印でイメージできる

関節の回転中心から、矢印までの垂線(これをモーメントアームと呼ぶ)をイメージして、何ならテコの絵なんかを書けちゃう

…こういう作業ができるようになれば、臨床における動作分析において姿勢や動作方法の違いにより、どのように関節モーメントが変化して、筋活動が変化するかを考えることができるようになるんですね。


ここまで理解できれば、例えば歩行時になぜ前脛骨筋が働くのか。

前脛骨筋を収縮させるためになぜ踵接地を作ることが重要なのか(卒中八策 その

四)ですわなぁ)が自ずと理解できてきますよね。

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↑ほら。


第2講−3 モーメントアームについて

さぁ、テコと関節モーメントについて理解できたところで、第2講の仕上げにモーメントアームと筋張力の関係について勉強しておきます。

ここでもう一度、テコの図を見てみます。

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今、このようにテコが釣り合っている状態から、右の重りを遠くのほうへと移動させます。

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このように回転の中心から離れると、当然力のモーメントは大きくなります。

その理由は、回転の中心から、力の作用線までの垂線の距離が長くなるからです。

作用線が回転の中心から離れれば離れるほど、力のモーメントが大きくなります。

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そこで、テコがつり合いを保つためには左側の重りをでかくする必要があるわけです。

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関節モーメントでも同じことがいえます。

足部の中央付近に床反力が作用している状態から、前方へと重心を移動させてみると、筋活動がどう変化するでしょうか。

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重心が前方に移動すると、足関節底屈筋の大きな筋活動が必要になることがわかります。

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ここまでくれば、片麻痺患者さん特有の、常に重心が前方にある姿勢が、筋のアンバランスを以下に助長するものであるかがよくわかりますよね。


だから、テコを理解しておくことはとっても大切なんですよ。

というお話でした。


第3講‐1 床反力って何だ?

さて、このあたりからいよいよもうちょっと臨床に沿った話が増えてくるわけです。

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答えは↓ですね。

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青が重力。

赤が床反力です。

真ん中の図のように、左右の足に床反力が分かれててもかまいません。

ただしその場合は、左右を合体させた力の長さが、重力と同じ長さになっている必要

があります。


重力とは、物を持った時に感じているいわゆる「重さ」を作り出す原因であり、まぁざっ

と表現すると、地球がいろんなものを引っ張っている力、というイメージで殆ど間違い

無いわけです。

床反力とは、まぁこの絵の通りで、重力の分の重みで、この絵で言うと足部が床を押してるわけです。

それに対して床が足部を押し返す力のことですね。


この重力と床反力。

この2つがとっても大切なんです。

なぜ人間は歩くことができるのか?

人間は何の力で歩いているのか?

という事を考えたとき、

『筋肉の力で歩いている』

というのは決して十分な答えではないのですね。


ここでニュートンの運動の法則を思い出してみましょう。

思い出せない人はこの場で覚えてしましましょう。

運動の第1法則・慣性の法則です。

すべての物体は、外部から力を加えられない限り、静止している物体は静止状態を続け、運動している物体は等速直線運動を続ける。


そう、すべての物体は、外部からの力が無ければ、動けないんです。

筋力は、身体内部の力ですね。

だから、ヒトは筋力だけでは動けないということです。

身体の外からの力が無いと動けません。

そして、地球上で物体にかかる外部からの力は2つなんですね。

それが、重力と、床反力なんです。

この2つの力が、上の図のように大きさが同じで、向きが正反対で、同じ直線状にあるとき、重力と床反力は互いに打ち消し合って、静止状態が保たれます。


ここで、重力と床反力には大きな違いがあります。

重力は不変であるのに対し、床反力は変化します。

そこが大きな違いなんです。

なぜ床反力は変化するかというと、床反力は身体が床を押した力に対する反力です。

ということは、身体が床を押す力が変化すると、それに伴って変化するわけです。

身体が床を押す力とは、ヒトの筋活動などによって生み出されています。

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この図のように、床反力が下肢各関節に回転させる力を及ぼすわけで。

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それに対して、この図でいうと殿筋や膝伸筋、足関節の底屈筋が働いて、姿勢を保持するわけですよね。

言い換えると、この床反力をうみだしているのは、身体各部の筋活動によって生まれる力なわけです。


逆に言うと、この図の状態で今、静止している状態から、身体を動かすには、筋力を変化させて、その結果床反力が変化して、

『重力と床反力が拮抗している状態』を崩してやればいいわけです。

よって、ヒトが身体を運動させるときに筋肉を動かすのは、床反力をコントロールして、その結果として関節を動かす、という行為ととらえられるわけですね。


下は『基礎バイオメカニクス』の付録のCD-Rに収録されている動画のキャプチャです。


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これが静止立位ですね。

白い線が合成した床反力です。

img_20121001-234732.jpgdえ

しゃがむ動作では、一旦筋肉を緩めて、床反力を小さくします。

そうすることで、重力の方が大きくなるために、重心が下降するんですね。

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膝を曲げたまま静止すると、その状態で再び床反力が元の状態に戻ります。

こうして、ヒトは筋力によって床反力をコントロールして、その結果として身体を動かすことができるんだ、ということをしっかりイメージしてください。



第3講-2 床反力作用点について

さて、床反力についてイメージができるようになったところで、歩行分析などでよく目にするコトバとして

『床反力作用点』

があります。

これを理解しておくことも後々とっても大切です。

床反力作用点。

英語でいうとcenter of pressure、略してCOPですね。

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このリーゼントのお兄さん、再び登場です。

足が床に接触すると、接触した部分には必ず反力が生じます。 

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赤で描いた力が床反力です。

この際、床反力をどこに表示すべきかは、反力の分布の状態によって決まってきます。

反力を合成するのですから、合成された力の位置は決まってくるわけです。

この場合の「位置」とは「作用線の位置」です。

合成された力の作用線の位置は決まるのですが、この作用線の上の位置のどこに表示すべきかは重要な問題ではありません。

実は作用線上のどこに表示しても良いのです。

そこで通常は便宜上、床反力の根本が床の表面にくるように表示します。

このとき、床反力の根本の場所を床反力作用点すなわちCOPと呼んでいます。

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ここで力の合成の復習です。

ピンクの2つの力を合成してみます。

ピンクの力を作用線に沿って交点まで移動し、平行四辺形を作れば、その対角線が合成力になります。

その合成力を対角線に沿って移動して、床面から物体のところに作用するように描けば図のようになります。

このとき赤の矢印の根本の位置がCOPです。

このように考えると、COPには、もともとのピンクの力は作用していません。

力が作用していない場所がCOPになる場合があります。

COPは「合成力」という仮想的な力が作用する場所なのです。

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今まで説明したように、床反力は足裏に分布している反力を全部寄せ集めたもので、

反力の上下成分を全部合計したものが床反力の上下方向成分になり、反力の前後・

左右方向成分をそれぞれ合計したものが床反力の前後・左右方向成分になります。

COPは分布している反力の平均的な位置になります。 

したがって、ほとんどの反力が爪先に分布していればCOPは爪先に位置しますし、

ほとんどの反力が踵に分布すれば、COPは踵に位置します。

前足部と踵部に半々に反力が分布すればCOPは土踏まずに位置します。


この、COPが反力の分布によって移動する、という考えがのちのち大切になってきます。

そこで、立ち上がり動作の一部分を取り出して、床反力作用点の移動が身体の動きといかに密接なかかわりがあるかを紹介してみましょう。

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これはリラックスして座ってる状態の床反力です。

殿部と足部の床反力を黄色、これらを合成した床反力を白で示しています。

身体は殿部と足部で床反力をうけていますが、おそらく圧倒的に殿部でうけている

ので、この図では臀部の真下から床反力が伸びてきています。

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立ち上がり動作が始まって、体幹が前傾し始めると、殿部の床反力の床反力作用点

(COP)が少し後退して、同時に床反力が前に傾くことがわかります。

この力は重心を前に押し出すような動きをします。

COPを後方に移動し、床反力ベクトルが重心の後方にまわり込み、力を前に傾けて、重心を後方から前に押し出しているように見えます。 

このとき、COPがなぜ後退するのでしょう。

体幹を前傾する際に股関節の屈筋がわずかに働くんですね。

そうすると体幹が前傾します。

最初に屈筋を働かせたとき、同時に大腿部には上に持ち上がる力が生じます。

実際には持ち上がるほどではないのですが、このときの股関節屈筋の作用で、大

腿部を上に上げる方向にモーメントが作用して足にかかる荷重が減少します。

そうするとその分、座面にかかる荷重が増加し、足と座面の力の分布で座面がより

優位になり、COPが座面よりに移動することになります。

これがCOPが後方移動する要因です。

COPが後方に移動して、床反力が前傾するということは、

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この図のように、その斜めの床反力を分解すると、前方への推進力となっていることが良くわかるとおもいます。

img_20121002-005213.jpg

その後は、床反力は後方に傾き、重心の移動にブレーキをかけ、重心の移動方向を上方へと向かわせます。 

この場合、床反力が後方へと倒れるおことで、重心の移動にブレーキをかけているのです。


ここまで見てきたように、ヒトは筋力のみで動くんではないんですね。

それを原動力として、床反力を巧みに操作することで、身体の重心位置をコントロー

ルしているわけなんです。



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ニックネーム
中谷知生
所在地
兵庫県宝塚市にある、宝塚リハビリテーション病院に勤めています。
職業
理学療法士です。

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